建設DX 段取り八分、仕事二分
【第2回】DXが進まない理由と
その改善策を提案する
DXが進まない理由は3つ
前回のコラムで、IPA(情報処理推進機構)のDX動向2024のデータを使ってDXの推進状況は捗々しくないことを書いた。企業規模が小さいほど進捗が良くないことは統計的にも示されていて、中小企業ではまだ未着手のところも多いと思われる。DXが進まない理由についてもデータがある。DXに取り組んでいない企業に対する取り組まない理由は以下のようになっている。
このデータから取り組まない要素が3つあることがわかる。1つは資金の問題である。DXを進めるためには相応の投資が必要である。中小企業といえども投資意欲がないわけではない。DXのメリットが見えない中で予算化が難しいようだ。2つ目は知識やスキルの問題であるが、これも人材に付随していることなので3つ目の人材不足の問題と同根かもしれない。資金、スキル、人材の3つが不足しているのは中小企業にとって共通の課題ではないかと思われる。これらを少しでも克服しないかぎり、DXには取り組めないし進められない。
資金難、スキル難、人材難に挑む
3つの課題に取り組むためには、経営トップの決心が必要である。前回のコラムで提案したようにDXというものを正しく理解し、手順を踏みながら進めていくことを経営トップが決心してコミットメント(公約・明言)することである。
経営視点で言えば、DXは企業価値向上のための投資である。企業価値は経済価値であり、効率的な事業プロセスのもとで利益向上のビジネスモデルを作り、企業文化を改革していくことである。投資だからこそ、経営トップの思いと決意が必要なのである。
スキル難、人材難は短時日では解決できない。外部からDX人材を調達できれば推進を早めることができるが、中小企業では資金力からみて難しい。やれることは社内でのDX人材育成だろう。DX人材については前回にも書いたが、デジタルに長けた人材ではない。デジタルを理解し、事業や経営へのインパクトを考えられる人材でなければならない。
人材育成に必要なのは「体験」である。ポテンシャルのある人材が様々な体験を積むことによって成長を促すことが出来る。デジタル体験も必要であるが、現場体験が事業や経営の理解の役に立つ。能力より少し高めのポジションで体験を積んでもらうと、効率的に能力開発をすることが出来る。
人材育成は長期的な視野のもと、今から始めなければならない。
資金を掛けずに業務のDXを進める方法
人材の育成を進めながら、業務のDXを進めることが出来る。アナログの環境からデジタイゼーション、デジタライゼーションという、経営のDXのための前段の環境を整えていくことである。
各社のデジタル化のレベルにもよるが、例えばアナログベースの電話やFAXからメールやチャットで伝達やコミュニケーションが出来るようにしなければならない。最近聞いたことで驚いたことがある。名の知れた大手地方銀行で、支店勤務の行員にはメールアドレスが与えられていないという事実である。中小企業の多くでも社員のメールアドレスは設定されて使われていると思われるが、一方で驚くような実態があるのが日本のデジタル化の現実なのであろう。
とりあえず費用を掛けずにデジタイゼーション、デジタライゼーションを進める方法をお知らせしたい。それは無料版のサービスを活用することである。
無料版のサービスはいろいろあるが、先ずはGoogleのサービスをお勧めしたい。無料で使えるアプリケーションが12もある。
これだけあれば、デジタイゼーション、デジタライゼーションを進めることが出来る。会社内での情報共有やコミュニケーションをデジタル化することが出来る。リモート会議もZoomもWebexもTeamsも利用時間や利用人数の制限はあるものの無料版が提供されているので、取引先とのリモート会議や社内のリモートワークにも活用できる。
2000年の頃はこのような無料サービスは無かったので、大手企業が挙って億円単位の投資をして開発したり、外注したりしていた。今はそれが無料で使えるのだ。取り組まなければ損というものだろう。
使い方はどう覚えればいいか?会社内に活用チームを作って試行錯誤していれば使えるようになる。使い方を紹介しているYouTubeもたくさんある。もっと効率を上げたいなら廉価で講習会を開催してくれる会社もある。経済産業省は中小企業のDXを後押ししている。伴走者と呼ばれる地域の金融機関やIT会社や商工会などに支援してもらうことも出来る。これらのツールを使い始めると、デジタルの理解がすぐに深まる。そしてその可能性に気づくのだ。デジタイゼーション、デジタライゼーションの理解が深まってきたら、有償版の導入を検討するのも良い。さらに進化することは間違いない。
ここまで環境が整っているのに、始めないのは怠慢と言ってもいいだろう。さあ、今日からでも始めようではないか!