建設DX 段取り八分、仕事二分
【第1回】DXを正しく理解して、
手順を踏んで取り組もう
DXの始まりと今
日本でのDXの始まりは2018年9月に経済産業省から公表された「DXレポート」に始まったと言っていい。世界的な潮流もあって、その後DXブームと言われるような大きな動きになった。日々忙しい経営者には、その原点になった「DXレポート」のサマリーだけでも読んでもらいたい。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
「DXレポート」では社内の既存システムがプラックボックスになっている状態が多く、これではデータを経営的に活用することができないので、システムを刷新して解消するように促している。放置すれば2025年には大きな損失を生む「2025年の崖」がやってくる、とセンセーショナルなキーワードでリスクを警告した。システム刷新を強く打ち出したために、DXの本質から外れたDX=システム刷新のような誤解を生んだ恐れがあった。
2年が経過した2020年の実態調査でもDXが進んでいないことを踏まえて、12月に「DXレポート2」が公表された。このレポートで「単にレガシーなシステムを刷新する、高度化するといったことにとどまるのではなく、事業環境の変化へ迅速に適応する能力を身につけると同時に、その中で企業文化を変革する(=レガシー企業文化から脱却する)こと」とDXの本質である経営変革へと軌道修正がされたのである。追加レポートからまもなく4年が経過するが、DXの進捗は良いとは言えない。DXを進めて成果を出したのは限られた大手企業だけだ。中小企業はまだ取り組めていないところも多い。これが現段階での実態である。
日本にある2つのDXの捉え方、
そのメリットは?
DXはデジタルを活用して経営変革を求めるものであるから、容易には成就しない。時間がかかることは覚悟しなければならない。
ところが日本のDXにはどうやら2つのDXに対する理解があるようだ。一つは「業務のDX」、もう一つは本筋の「経営のDX」である。経済産業省も段階的な取り組みを推奨していて、DXレポート2ではこれらをDXの範疇に捉えている。
デジタイゼーションとはいわゆる電子化で、アナログからデジタルに変えていくDXの入り口である。紙ベースのFAXから脱却したり、電話連絡をリモート会議に変えたり、デジタルデータで管理できるようにする段階である。
デジタライゼーションは単なる電子化から仕事の流れをデジタル化していく段階である。何らかのシステム導入が必要になるが、業務が見えるようになり効率も生産性も上がることが期待できる。この段階までを「業務のDX」として取り組んでいる会社もあり、経営のDXの前段階として必須であることを認識しなければならない。業務のDXを進めていくと気づくことがある。それは組織のコミュニケーションと情報共有が圧倒的に進むことである。業務が見えれば、改善点にも気づきやすい。改善を繰り返せば業務効率が上がることは間違いない。ここで経営者自らがデジタルの力とメリットを感じ取れたらしめたものだ。
手順を踏まなければ、経営DXは難しい
DXにはD:デジタルとX:トランスフォーメーション(変革)の2つの要素がある。デジタルを理解し十分活用できる土壌と基盤がないと、その先の経営のDXを実行することは難しい。デジタルを活用して、仕事の流れ(=業務プロセス)の変革ができるようになれば、いよいよ経営の変革に取り組むことができるようになる。
そのプロセスで重要なことは、デジタル人材、DX人材と呼ばれる人材を育成していくことであろう。人材育成を伴うDXという活動は時間が必要であり、性急に進めても成果は得られない。しっかり推進プランを立てて、デジタイゼーション、デジタライゼーションの段階を踏めば、自社の経営をどう変えるべきかが見えてくるはずだ。DX人材はまずDXの理解が正しく出来る人材である。デジタルに長けていてもDX人材とは言えない。デジタルの理解は必須であるが、デジタルを活用して自社をどう変革するかを考えられる人材でなければならない。中小企業の場合は経営者の後継者となりうる人材と考えても良いかもしれない。