【第4回】残業を減らす、働き方を変える

建設現場に求められる労働環境の改善

2024年4月から「時間外労働の上限規制」が適用されたのはご存知の通り。これは働き方改革関連法案によるものだが、5年間の猶予期間を与えられていた建設業も本格的に取り組まねばならなくなった。この2024年問題は、建設業ばかりでなく物流・運輸業界・医療業界にも大きな影響を与えている。いずれも長時間労働が当たり前となっていた業界であって、建設業界はさらに従業員の高齢化や人手不足が畳み掛ける。

時間外労働の上限規制のグラフ
日建連のサイトより
日建連のサイトより引用してきた建設業の画像

このような環境を続けていたら、若い働き手が建設業にやって来なくなる。建設業はやりがいもあり、達成感もある素晴らしい職種なのに、労働環境が良くないだけで組織高齢化が進んでしまう。建築や土木を学ぶ女性も少なくないが、労働環境の悪さに尻込みされても困るし、育休制度にも対応しなければならない。建設現場の労働環境改善は必須であり、法規制のもとで取り組み出している会社は6割を超えると言われている。正念場はこれからだ。

残業って何をやっているのか?

そもそも建設現場の仕事や残業で何をやっているかを振り返ってみる必要がある。特に残業が多いと言われる元請会社の現場の1日を例にとると、概ね次のような内容になる。

元請会社の現場の1日を例にしたグラフ
建設業の仕事風景の画像

ざっと見ても、内勤や打ち合わせ、ミーティングの時間が多い。退社時間も遅い。すでに残業前提の日常のように見える。
現場の巡視・巡回は施工品質の管理や写真による記録、出来高の確認、安全の確認など欠かせないメインの仕事だ。
打ち合わせやミーティングも下請け会社とチームで活動する建設現場では欠かせない。作業工程の確認や安全衛生上のコミュニケーションも重要である。災害防止協議会も開催して災害防止に努めなければならない。作業所に戻れば、検査記録の整理や写真管理もしなければならない。会議の議事録もまとめておかなければならない。作業現場の仕事は実に多様多彩だ。
組織内のそれぞれの社員がどんな仕事をどのくらいの時間で行なっているかは1ヶ月くらい調査して可視化するのが理想的な方法だが、可視化のための作業が負荷になるために多忙の日常では容易に取り組めない。
1日の仕事の中には必ず、ムリ、ムダ、ムラがあることは各人が気付いている。それを排除できれば労働時間の短縮が計れる。組織的に排除するためには、プロセスを可視化してムリ、ムダ、ムラのない標準化プロセスにすることが望ましいが、これもトップダウンの大きな改革が必要なので容易ではない。
日々追われるように仕事をしているなかで、残業を減らすにはどうすればよいだろう?

デジタルで働き方を変えよう

建設現場は間接管理業務がとても多い。まず、この作業の効率を図ることを考えたい。作業所内には工事着工会議から工事反省会に至るまで様々なイベントがある。工事基本計画検討会、図面検討会、施工計画検討会、内部監査、品質パトロール、安全パトロール、中間検査、完成検査などである。これらのイベントには書類作成が伴う。
書類作成は施工図や工程表はもとより、様々な届け出書類や労務管理書類、安全管理書類、施工管理書類など膨大と言ってもいい。現場巡回から戻った社員は、これらの書類作成に追われて残業をせざるを得ないのが実情だろう。
間接管理業務の効率化にはデジタルが効く。ルーチンワークには標準化が効く。現場で使えるタブレット端末やスマホをフル活用して、現場巡回中に書類作成を済ませたり、検査記録の写真管理を済ませたり、翌日の作業手配を済ませたりすれば、作業所に戻ってからの内勤作業を減らすことができる。巡回中にスマホのチャットでコニュニケーションを取れば、打合せ時間も省くことができる。最近はタイムパフォーマンス(タイパとも呼ばれる)が注目され、いかに時間を有効に使って密度の濃い仕事をするかが問われ出している。
仕事のムリ、ムダ、ムラは各人が良く認識しているわけだから、デジタル環境を整えて働き方を変える工夫が必要だ。人員は増やせないが、デジタル機器を増やすことはトップの決断で容易にできる。
標準化されたルーチンワークは付加価値が高くない仕事が多い。付加価値の高くない仕事はアウトソーシングした方が効率的で経済的だ。最近は現場の管理業務を請け負う建設業向けのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も増えている。デジタル環境とBPOで残業を減らし、働き方を価値あるものに変えることができる。

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