【第3回】データを理解するとシステムがわかる
まず始めて欲しいデジタル化、紙からデジタルデータへ
データ、データとよく言われるが、データとは何だろう?デジタル化の取り組みの初めは、データに対する理解が必要である。
データとは事実や事象を表す文字や数値などであり、気象データ、個人データ、金融データ、商品データ、交通データなど様々なものがある。会社であれば、社員データ、人事データ、取引データ、生産データなど限りなくある。しかし、データ自体は意味を持っていない。
情報は意味を持っているが、データを分析したり解釈したりすることによって情報という価値が生まれる。従って情報を活用して判断したり、意思決定したりするためにデータが重要であると言われるのは、根源にデータがあるからである。
システムでよく出てくるデータベースの理解も必要である。データベースはデータの集まりであるが、コンピュータで利用しやすいように規格に従って整理されている。データベースがあることによって、効率よくデータを引き出すことができ、情報に加工することが容易になる。
一方、紙にもデータはある。紙にも事実を文字や数値で表すことはできる。しかし、紙から情報を引き出すことは出来ても効率的ではない。紙に記載されたデータを人が読み取り、人が解釈を加えて情報にする。大量のデータから情報にするのは容易ではない。だからデータをデジタル化してデータベースに収納し、コンピュータで自由自在に情報にするように作られたものが情報システムと呼ばれるものである。
仕事の流れをシステム化する
紙をデジタルデータ化する段階は「デジタイゼーション」と呼ばれる段階になる。データのデジタル化を進める。それらを行うにはツールが必要になる。初めは無料のツールでいい。検索に使っているGoogleが様々なツールを提供している。無料で利用するためには登録が必要である。その権利登録は「アカウント」と呼ばれる。登録にはID(identificationの略で識別のための固有のもの。マイナンバーカードのナンバーのようなものである)とパスワードが必要で、これらによってアカウントは管理されている。Googleのツールを利用するためには、IDとしてメールアドレス、パスワードは任意の文字や数字や記号で組合わせて作成して登録すればいい。それだけでコラムのシリーズ①で紹介した以下のようなツールが使える。

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Gmail:メールでアカウントにも使えるメールアドレスが設定できる
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Meet:インターネット上でビデオ会議ができる
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Chat:LINEのように1:1でもグループでも相互連絡ができる
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Calendar:予定表が作れて共有もできる
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Drive:デジタル化したものを整理して保管し、共有して利用もできる
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Docs:ワープロソフトでMicrosoftのワードと同じ機能
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Sheets:表計算ソフトでMicrosoftのエクセルと同じ機能
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Slides:プレゼンソフトでMicrosoftのパワーポイントと同じ機能
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Forms:アンケートや問合せフォームや申込フォームなどが作れる
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Sites:簡単にホームページが作れる
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Keep:メモアプリで文字や画像や音声などを記録したり、共有したりできる
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Apps Script:開発ツールで、他のツールを自動化したり連携したりできる
1.から11.までのツールを組織全員が使えるようになれば、デジタライゼーションの段階に入れる。DocksやSheetsやSlidesで作られたものはDriveで共有され、GmailやChatやMeetでデジタルコミュニケーションが進んでいく。この段階になれば、デジタルでできることの理解が進み、仕事の流れを考えるようになるはずだ。
仕事の流れはシステム化でできるようになる。そのためのツールがApps
Scriptである。ローコードツールで自動化などにチャレンジできるのだ。こんな環境がトライアル段階から無料で使えるのだから、活用しない手はない。
システム化で大切なのは、可視化と標準化だ
システム化に際して、2つに大切なことがある。1つは可視化だ。共有とコミュニケーションが進めば、可視化も進んでいく。仕事の流れ、つまりプロセスが可視化されてくると、課題が見つかりやすくなる。可視化で抽出された課題は解決もしやすい。それを繰り返すことで望ましいプロセスが出来上がる。
もう一つは標準化である。標準化しないと、一つの目的に至るまでのやり方が複数できてします。標準化すれば、誰でもわかりやすい一つの流れで仕事が進む。例えば、社内の出張申請書のフォームがいくつも存在したら煩雑になるだけだ。標準化で一つにすれば迷うことはない。社内には標準化した方がよいものがたくさんある。
データも標準化が必要だ。人事データ、取引先データ、商品データ、販売データなどデータの種類ごとにどういう属性情報で構成されるかを標準化しておけば、データの利活用が容易になる。
可視化と標準化によって仕事の流れがシンプルになれば、システムもシンプルになる。システムはシンプルなほど良いことは言うまでもない。
情報システムはデータのやり取り
人事システムでも、精算システムでも、取引のシステムでも、情報システムは処理の流れに沿ってデータをやり取りしている。その過程で計算をすることもあるし、表示して出力することもある。大切なことはデータベースでデータがきちんと管理されていることだ。自分たちがやりたいことの流れに沿って、データを呼び出したり修正して収納したりする。データが標準化されてデータベースに整理されている環境があれば、システム構築は難しいものではない。
ところで、情報システムは作らなくても良い。システムとしてクラウドでサービスされているものを利用するのでも良い。SaaS(Software as a
Service)として様々な業務系のシステムが提供されている。多くはサブスクリプションモデルと言われる月額料金を払えばいいので、初期投資の負担も少ない。会計システムも、経費精算システムも、受発注システムもクラウドサービスで賄える。特に中小企業にとっては、クラウドサービスは身の丈に合わせて利用することができるので、大いに活用すべきである。
経営者や社員たちがデジタルに目覚めたら、内製でシステムを作るのもいい。プログラミングが必要ないノーコードのクラウドサービスを利用すればいい。情報システムを作ったり利活用したりするのに、敷居はとても低い時代になっている。
いずれを選択しても、データベースは作らなければならない。データやデータベースがわかれば、情報システムの理解も容易になる。

