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KY活動のマンネリ化を防ぐ|
AIによる過去の事故事例の自動提示で質を向上

KY(危険予知)活動が「毎朝の儀式」になっていませんか。同じテーマが繰り返され、参加者の反応も鈍くなってしまう。この状態は安全管理の現場でしばしば話題になりますが、原因をたどると単なる「飽き」ではなく、年代構造や情報検索の仕組みに根ざした構造的な課題が見えてきます。

本記事では、建設業のKY活動がマンネリ化する根本原因を整理した上で、AIによる過去の事故事例の自動提示がなぜ「質の向上」につながるのかを、実際の現場運用とあわせて解説します。

AIによる過去の事故事例の自動提示

KY活動がマンネリ化する3つの構造的な原因

KY活動のマンネリ化は、現場の意識の問題として語られがちですが、実態は次の3つが絡み合っています。

  • 1. 現場の年代構造による経験継承の難しさ

    現在の建設現場の多くは、20代の若手と50〜60代のベテランが中心で、30〜40代の中堅層が薄いという年代構造を抱えています。20代は経験が浅いためにリスクに気づきにくく、ベテランは長年の経験値に頼るあまり基本動作の確認が省かれがちです(※本稿のための独自取材による)。この二極化が、KY活動を「ベテランが話し、若手が黙って聞く一方通行」にしてしまい、議論の活性化を妨げています。

  • 2. 「事故事例検索」が調べる人の語彙力に依存

    KY活動の質を支えるのは「過去の事故事例」です。しかし従来のキーワード検索方式では、調べる人がどんな語彙でクエリを組み立てるかによって、ヒットする事例が大きく変わります。経験の浅い担当者は適切な検索語を選びきれず、本来参照すべき類似事例を見逃すケースが少なくありません(※本稿のための独自取材による)。結果として、毎回似た事例が引用され、それがマンネリ化の一因になります。

  • 3. 「実施自体が目的化」してしまう形骸化

    KY活動は本来、リスクを見える化して対策を講じるためのプロセスですが、実施することが目的になり、シートを埋める作業に置き換わってしまうケースが現場で繰り返し報告されています(※本稿のための独自取材による)。これは個人の努力で解消しにくく、組織として情報の鮮度と関連性を担保する仕組みが必要になります。

マンネリ化が招くリスク:国の方針と建設業の災害状況

国が定める第14次労働災害防止計画(2023年4月〜2028年3月)は、建設業の死亡者数を2022年比で15%以上減少させることを目標に掲げています(※1)。背景には、2021年の労働災害による死亡者数867人のうち、建設業が288人と最多であり、特に高所からの墜落・転落が110人を占めるという深刻な状況があります(※1)。

同計画では、墜落・転落災害の防止に関するリスクアセスメントに取り組む建設業の事業場の割合を85%以上に引き上げる目標も示されています(※1)。リスクアセスメントとKY活動は車の両輪であり、後者の質が下がれば前者の精度も下がります。マンネリ化したKY活動を放置することは、組織として国の方針に逆行することにもなります。

また同計画では、安全衛生対策におけるDX(デジタル技術の活用)の推進が、重点的な取組事項として位置付けられています(※1)。「人の経験と勘」だけに頼る安全管理から、データに基づく仕組みへの移行が求められているのです。

KY活動の標準手法と、その「弱点」を補うAIの役割

KY活動の進め方として広く採用されているのが、中央労働災害防止協会が体系化した「KYT4ラウンド法」です。具体的には、第1R(現状把握:どんな危険がひそんでいるか)、第2R(本質追究:危険のポイント)、第3R(対策樹立:どうするか)、第4R(目標設定:何を実行するか)の4段階で議論を進める手法です(※2)。

この手法自体は完成度が高い一方で、議論のインプットとなる「過去の事故事例」をどう集めるかは、各現場の担当者に委ねられているのが実態です。ここに、AIが補完できる余地が生まれます。

AIが「過去の事故事例」を自動提示する仕組み

MetaMoJiが大林組と共同開発し、独立行政法人 労働安全衛生総合研究所との共同研究で得た知見を反映した安全AIソリューションは、21種類の安全関連法令と、31種類の通達・ガイドラインをもとに、現場の状況に応じて関連度の高い事故事例とリスクを動的に抽出します(※同社サービス紹介ページより)。

具体的には、職種・使用機械・予測される災害類型などの入力から、AIが過去の災害事例・マニュアル・関連法令を組み合わせてリスクと対策を生成する仕組みです。担当者の検索語選びに左右されないため、「語彙力依存」というKY活動の構造的弱点を補完できます(※同社サービス紹介ページより)。

利用シーンに応じて、ユーザー自身が参考情報を選択する「インタラクティブモード」と、AIが自動で事故事例・マニュアル・法令を選択する「自動モード」が用意されています。状況に応じて柔軟に使い分けられる設計が特徴です。安全AIの詳しい仕組みは安全AIソリューションの解説ページ でも確認できます。

現場での実運用:毎朝のKY活動に「事故事例」を組み込む

仕組みの説明だけでは、運用イメージが湧きにくいかもしれません。実際に安全AIをKY活動に組み込んでいる現場の事例を紹介します。

  • 事例1:毎日の事故事例共有で「事故ゼロ」を継続

    東京都墨田区に本社を置く株式会社湧田鉄筋は、大林組JV(共同企業体)の現場で、安全AIソリューションを導入しました。導入前は月1回の安全教育を実施していたものの、現場に出ると内容を忘れがちで、安全管理への理解を深めにくいという課題があったといいます(※同社プレスリリースより)。

    導入後は、毎朝のKY活動の後に、当日の作業内容にマッチする災害事例をAIで選定し、現場監督が重要点を説明する運用に切り替えました。さらに「自分ならどうするか」を問いかけるルーティーン化を行い、回答を導き出すトレーニングを毎日繰り返しています。結果として、安全意識の向上と業務効率化の両立に成功し、安全AIの利用開始以降は事故ゼロを継続しているとのことです(※同社プレスリリースより)。

    また、写真や図解付きの災害事例を活用することで、外国人スタッフへの説明もスムーズになり、言語の壁を越えて理解度が向上したという副次効果も報告されています(※同社プレスリリースより)。運用の詳細は 湧田鉄筋の導入事例 にまとめられています。

  • 事例2:若手とベテランの両方に効く「事例提示型KY」

    大林組の早明浦ダム再生JV工事事務所では、朝礼におけるKY活動の場面でAIが提示する事故事例をタブレットの画面で作業員に示しながら議論を進める運用を行っています。入社5年目の若手職員は、自身に経験がないリスクについても、具体的な事故事例を示すことで作業員への説明に説得力が増したと話しています(※本稿のための独自取材による)。

    同事務所の所長は、20代の経験不足と50〜60代の経験頼みの両方に、事故事例の提示がアプローチできる点を期待していると述べています。実際、入社7年目の職員は、AIが提示した事故事例を見て作業手順を修正した経験を語っており、ベテランの職長であっても新たな気づきを得る場面が生まれているといいます(※本稿のための独自取材による)。

    導入前は、自社の安全本部Webサイトで事故事例を検索していたものの、検索語の選び方によって結果が変動するという課題がありました。AIによる自動抽出に切り替えたことで、リスクを定量的に判断したうえで関連事例を漏れなく参照できる体制が整ったとされています(※本稿のための独自取材による)。詳細は 大林組の安全AI活用事例 をご覧ください。

AIは「判断」を代替しない:事故事例を起点に考えさせる運用

AIによる事故事例の自動提示は便利な一方で、提示された事例をそのまま読み上げるだけでは、結局は新しいマンネリを生みかねません。重要なのは、AIが出した事例を「考えるきっかけ」として使うことです。

湧田鉄筋の現場では、AIが選んだ災害事例について「自分ならどうするか」をスタッフに問いかけ、回答を引き出すトレーニングを日々の運用に組み込んでいます(※同社プレスリリースより)。AIが事例を提示し、人がその事例を自分の作業に当てはめて考える。この役割分担が、当事者意識を引き出す鍵になります。

大林組の現場でも、AIはあくまでリスクの見える化と事例抽出を担い、最終的な作業手順の判断は職員と協力会社の職長が行っています(※本稿のための独自取材による)。AIは経験の差を埋める補助線であり、人の判断を置き換えるものではありません。事故事例を起点に「自分の現場ではどうか」を考えさせる設計こそが、マンネリ化を根本から防ぎます。

KY活動の質を高めるAI導入で押さえるべき3つの視点

ここまでの整理を踏まえ、KY活動にAIを組み込む際に押さえておきたい視点を3点にまとめます。

  • 1. 既存の朝礼・KY活動フローを変えずに統合できるか:現場の運用ルーティーンを大きく変えると定着しません。毎朝のKY活動の「直後」に事故事例共有を挟む形であれば、業務フローを大きく変えずに導入できます。タブレットやスマートフォンで完結できる点も、PC作業が難しい現場では重要です。
  • 2. 若手とベテラン、どちらの層にも価値があるか:若手にとっては経験を補う学習機会となり、ベテランにとっては当然視していた基本動作を再確認する機会となります。AIが提示する事例はどちらの層にも示唆を与え、議論の活性化につながります。
  • 3. 検索ではなく「自動提示」になっているか:キーワード検索のままでは、語彙力に依存する構造的な弱点が残ります。作業内容や使用機械から関連度の高い事例を自動で抽出する仕組みであることが、マンネリ化を防ぐ本質的な要件です。

まとめ:KY活動のマンネリ化は「仕組み」で防ぐ

KY活動のマンネリ化は、参加者の意識だけの問題ではなく、年代構造・情報検索の語彙力依存・形骸化リスクといった構造的な要因が背景にあります。第14次労働災害防止計画が示すように、国も建設業の労働災害削減に向けて、安全衛生対策におけるDXの推進に舵を切っています(※1)。

AIによる過去の事故事例の自動提示は、語彙力に依存しない情報抽出と、毎日の運用への組み込みを通じて、KY活動の質を継続的に高めるアプローチです。マンネリ化を「現場の頑張り」ではなく「仕組み」で防ぐ発想に切り替えることが、これからの安全管理に求められています。

KY活動のマンネリ化や、AIを活用した安全管理の高度化に課題を感じている方は、eYACHO「安全AIソリューション」の詳細をご確認のうえ、お気軽にお問い合わせください。建設現場での運用実績に基づいた具体的な導入相談が可能です。

出典一覧

※1 厚生労働省「第14次労働災害防止計画(令和5年3月)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001116307.pdf
※2 中央労働災害防止協会「危険予知訓練(KYT)の進め方」 https://www.jisha.or.jp/info/field/zerosai/kyt/file04.html
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【監修】eYACHO編集部

施工管理アプリ「eYACHO」は、タブレット1つで現場の記録・共有・管理を可能にし、施工管理から安全管理まで幅広い業務をサポートします。
本コラムでは、建設業界の課題解決やDX推進に役立つ情報や最新動向をお伝えします。

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