体系的なOJTを、現場で実際にどう機能させるか。ここからは、施工管理支援アプリ「eYACHO」を活用した建設現場の取り組みから、独自の視点を紹介します。eYACHOは大林組と共同開発され2015年に提供を開始したデジタル野帳で、MM総研の2025年12月調査ではゼネコンでの利用シェアNo.1となっています(※4)。
最も示唆に富むのが、
阪神高速道路の維持管理を担う企業での実践です。同社では、従来「現場同行」が中心だったOJTを、ビデオ通話機能を活用して「つながりながら任せる」育成へと進化させました。若手が自ら判断・行動する機会が増え、ベテランは事務所から複数の現場の若手を効率的に支援できるようになったといいます(※同社プレスリリースより)。「見て覚えろ」の対極にある、若手の主体性を引き出すこの発想こそ、これからのOJTの方向性を示しています。
この「つながって任せる」育成を、現場では具体的に次のように支えています。
一つめは、
リアルタイムの遠隔支援です。若手が現場の状況をタブレットで映しながら、事務所の上司に相談できます。同じ図面や帳票を画面で共有しながら指示を受けられるため、上司がその場にいなくても、隣にいるかのように判断を仰げます。指導者がつきっきりにならずに済むため、限られた時間でも複数の若手を見られるのです。実際に、高速道路に関わる別の現場では、遠隔での立会を取り入れることで、移動を含む業務時間を年間500時間から240時間へと半減させた事例も報告されています(※同社導入事例より)。移動に費やしていた時間を、現場での指導や対話に振り向けられるようになります。
二つめは、ベテランの暗黙知の「見える化」です。900社以上の導入で蓄積された帳票テンプレートや、会社が長年使ってきた標準帳票をそのまま電子化して使えるため、「ベテランが頭の中だけで持っていた段取り」を様式に落とし込めます。誰が教えても同じ手順が伝わるようになり、OJTの属人化を抑えられます(※同社導入事例より)。
三つめは、AIによる安全教育の補完です。
安全AIソリューションは、作業内容を入力すると、過去の建設業の労災事例や法令を踏まえて潜在リスクと対策を提示します。19種類の安全関連法令に基づいてAIがリスクを予測するため、経験の浅い若手でも、ベテランの危険感受性に近い水準でKY(危険予知)活動を行えるようになります(※同社プレスリリースより)。世代間で生まれがちな「危険を察知する感覚」の差を、技術で埋める取り組みです。
そして見落とせないのが、育成が「記録に残る資産」になる点です。リアルタイム共有機能(Share)では、上司と若手が同じ帳票に同時に書き込めます。誰がいつ何を書いたかが履歴として自動で残り、後から全文検索もできます。口頭で消えていた指導の積み重ねが、組織のナレッジとして蓄積されていくのです(※同社サービスページより)。