導入事例

全員がeYACHOを使う効果
遠隔工務センターとの分業で現場に集中

前田建設工業株式会社-九州支店 様

前田建設・九州支店 前田建設・九州支店 前田建設・九州支店

前田建設では、iPadとeYACHOの全社導入から10年が経過した。中でも福岡市天神地区の大規模都市開発プロジェクト「天神ビッグバン」の第一号案件である「(仮称)天神ビジネスセンター新築工事」ではeYACHOを活用し現場の働き方を大きく変えている。2019年に着工した1期計画からeYACHOの運用に携わり、2期計画の竣工を目前に控える、現場監督の主藤由美氏(品質担当)、山口真由氏(建築担当)、そして支店内勤として工務全体を支える水野秀崇氏に、具体的な運用方法や定着のプロセス、その効果について話を伺った。

建築部 建築工務グループ 工務チーム長 水野 秀崇氏

「九州支店では支店長から職長まで、全員がeYACHOを使って効率よく仕事を進めています。全社的に見ても、社内でeYACHOを最初に ”使いこなす” ようになったのは九州支店(天神)でしょう。”まずはやってみよう” というチャレンジ精神が九州支店の現場には根付いているのかもしれません」

「『電子化できるものはどんどんやっていこうじゃないか』という統括作業所長(現:九州支店長)の旗振りの下、現場の若手がそれを実現しようと動いたのが、1期計画の頃でした。そこから試行錯誤を重ね、eYACHOが着実に定着していきました。天神の取り組みが、現在では九州支店の建築の全現場に広がっています」

(建築部 建築工務グループ 工務チーム長 水野 秀崇氏)

目次

現場の日常業務をeYACHOで

<デイリーの巡視メモ>

「現場で気になったことを気軽に撮って、毎日のメモとして写真を活用しています。写真は情報量が多く、言葉よりも伝わりやすく便利です」

「従来は写真を撮っても、席に戻ってから整理しようとしても、時間が経つと「これどこだっけ?」ということになりがちでした。その点、eYACHOは、図面、写真、メモを自由に組み合わせて記録できます。事務所に戻らなくても、図面上で位置を示しながら写真を使った現場メモが作成でき、相手にもわかりやすく伝えられるようになりました。書いたり消したりが簡単ですし、消してしまったものを元に戻せるなど、デジタルならではの操作性もメリットです」(主藤氏)

主藤氏の日々のメモ。図面、写真、手書きが混在できるのが便利だ。現場での写真とメモを関連付ける作業を後回しにせず、その場で瞬時に整理できる。

(写真)主藤氏の日々のメモ。図面、写真、手書きが混在できるのが便利だ。
現場での写真とメモを関連付ける作業を後回しにせず、その場で瞬時に整理できる。

<朝礼>

「eYACHOの配置図を大型モニターで映すようになりました。以前は広い現場だと後ろの方からは見えにくくなっていましたが、拡大もできるし、指し棒よりレーザーポインターの方が情報の伝わり方が確実になったように思います」(水野氏)

「多くの協力会社が携わるため、朝礼には職長さんだけが参加し、その後、各社でKY活動を実施、職長さんから作業員さんへ注意事項・立ち入り禁止場所などを説明してもらいます。職長はiPad(eYACHO)を持っているので、現場にモニターを持ってきて同じものを映したり、手元のeYACHOを一緒に見ながらKYを行ってもらっています」(山口氏)

<進捗チェック>

「現場に必要な書式はひな形が用意されていますが、独自に自分で作るものもあります。例えば、バルコニーの足場解体までの進捗を管理する表を作りました。設定した解体日を元に、パネルやシール塗装など、解体までに完了させるべき工程を整理し、進捗を共有・記録するものです。仮設足場の担当は、この管理表を確認することで『ここは終わってるので解体できる』と判断でき、スムーズに作業に取り掛かれます」

「各自が作った書式は、eYACHOのコマンドの使い方が異なるため、操作性に差が生まれることがあります。例えば日付欄が手書きだったり、カレンダー機能で自動入力できるようにしていたり。他の人が作った書式に便利な工夫があると、『これどうやって作ったの?』と質問が生まれ、改善につながります。誰もが「より便利に、より楽に」という思いで工夫を重ねているのだと感じます」(山口氏)

進捗チェック

<安全教育>

「安全教育も現場監督の重要な業務です。この現場では、月次安全教育動画の視聴を協力会社にお願いしています。eYACHOで動画視聴の案内から進捗チェックまでを一枚にまとめることで、問い合わせが減り、進捗管理も一目瞭然です」(山口氏)

協力会社同士で進捗状況が可視化されることで、”他社はすでに視聴を終えている、自社も急がなければ” といった意識が生まれることも期待できそうだ。

安全教育

これらは一例だが、各自がeYACHOを使って作業を効率化し、現場全体の効率化につなげている。

職長がeYACHOを使うことで効果は最大に

建築担当の山口氏は、現場監督として工程・品質・安全管理等を担当している。

「現場では、毎日昼、職長・職員で作業計画図を使用して翌日の作業調整を行います。搬入出や、クレーン、エレベーターなど、多くの重機材が出入りするので、時間が被らないよう調整しますが、情報は日々変わるため、最新の情報を共有することが非常に重要です。さらに、地下から18階まである大規模な建物なので協力会社も多く、各作業における膨大な計画書をメールで受け取り、自ら整理する作業には多くの時間と労力がかかっていました。多くの職員や協力会社の技術者に情報を共有することも課題でした。そこで、最新の情報をリアルタイムに共有するため、eYACHOの活用を進めました。協力会社の職長にもアカウントを付与し、その場で直接入力してもらう運用に切り替えたことで、入力した内容は即座に反映され、共有に要する手間と時間を大幅に削減できました」

「作業計画書も、協力会社自身に計画書を作って提出(eYACHOのフォルダに入れるだけ)してもらう仕組みに変更しました。メールのやり取りや紙の回覧が不要になり、業務がスムーズになりました。フォルダ内ですぐに見分けがつくよう、会社名やフロア(場所)が一目でわかるようファイル名のルールを設定し、フォルダ内を見るだけで、提出状況を把握できます。提出された計画書は、作業所長や担当監督が確認して追記や訂正を行い、そのまますぐに活用できます」

作業計画書
現場配置図

各社職長に権限を発行することで、直接eYACHOフォルダにファイルを提出したり、ノートに直接書き込んでもらうことができるようになった。

天神プロジェクトⅡ作業所 建築担当 山口真由氏

協力会社の職長がeYACHOを使いこなせるようにするために、どのようなサポートが行われているのだろう。

「お互いの負担を減らせる、という確信があるので、1日でも早く使えるように、できるだけその場でフォローします。後でとか、後日、とか、定期的に勉強するための時間を別途構えるより、その場で解決する方が理解も早いし、効果的です。以前の現場で「この手順で使える」というマニュアルを作ったので、今もそれを使っています。一度作ったものが無駄にならず、今も使えます。作る時は大変でしたが、作って良かったと思うし、最初自分自身があまり得意ではなく、困りながらまとめたものなので、かえってわかりやすいのかも知れません。今では職長同士で教え合う姿も見られます」

(天神プロジェクトⅡ作業所 建築担当 山口真由氏)

「使えるようになるまでは、教える側もだが、教えてもらう側も必死。しかしこれは ”お互いが必ず楽になる” と実感しているからこそ、誰も諦めないのだと思います」(水野氏)

写真台帳の作成業務を、関西工務センターが遠隔分業支援

工事の写真台帳の作成は、現場管理に欠かせない業務だ。しかし、時間のかかる作業でもあり、現場業務が終わってからまとめて取り組むことが多い。一方で、九州支店の写真整理業務は一般的なそれと全く異なる。「撮った写真は、関西工務センターが写真帳にまとめてくれるため、出来上がったものを確認し、必要に応じて帳票化を依頼するだけで済みます」(主藤氏)。

主藤氏は、施工状況の確認、資料採取の写真撮影等を担当している。

具体的な手順はこうだ。「私たちは現場で工事写真アプリを使って写真を撮影します。撮影した写真は毎日整理され、翌日には帳票として確認できる状態になります。eYACHOに上がってきた写真台帳を日毎に確認し、例えば『角度を変えただけで重複しているのでこの写真は不要です』と削除を指示したり、『黒板の誤記入や追記』の訂正を指示したりします。最終チェックを行う際には、修正が必要か否かを正確に共有するため、eYACHOの承認機能を使うことで修正の指示や完了の連絡がスムーズに行えました。『差し戻し』は修正あり、『承認』は修正なし=完了です」

日毎に確認を行うことで、一連の工事が終わる頃には工種ごとの写真台帳が完成しており、以前のように工事完了後に大量の写真整理を抱え込むこともなくなる、というわけだ。

図面上には、撮影が必要な箇所に、工事写真アプリと連動した番号を記載しておき、必要なタイミングで各 工種の写真を確実に撮影できるよう、確認しながら撮影 修正指示・完了連絡が確実に伝わるよう、eYACHOの承認機能 を使用 写真整理が日々進むので、写真台帳作成が工事完了時に集中することがなくなる

(左)図面上には、撮影が必要な箇所に、工事写真アプリと連動した番号を記載しておき、必要なタイミングで各 工種の写真を確実に撮影できるよう、確認しながら撮影します(中)修正指示・完了連絡が確実に伝わるよう、eYACHOの承認機能 を使用(右)写真整理が日々進むので、写真台帳作成が工事完了時に集中することがなくなる

天神プロジェクトⅡ作業所 品質担当 主藤由美氏

「私は、eYACHOが導入され運用環境が整った時期に入社しましたが、昔は紙で写真を整理していた時代も経験しています。当時は、撮影した写真を現像し、プリントしてアルバムに綴じるという作業を当然のこととして行っていました。今振り返ると手間も時間もかかる方法でしたが、現在は写真整理のあり方が大きく変わったことを実感しています」

(天神プロジェクトⅡ作業所 品質担当 主藤由美氏)

支店内勤として工務全体を支える水野氏は言う。「配筋の品質確認の重要性が高まり、写真管理の厳格化が進み、写真帳票作成の負担は年々増加しています。その一方で、建設業における残業削減は喫緊の問題であり、業務はそのままで個々の効率を上げるだけでは品質の維持にも限界があります。こうした背景の中、『工務センター』が設立されました。九州支店は、関西支店が統括する関西工務センターのサポートを受けながら、この分業体制を取り入れています」

また、この体制の中で、九州支店では、工務センターがeYACHOにアップした鉄筋工事の写真台帳を、支店建築部内勤の建築知識が豊富で作業所長経験もあるシニア技術スタッフが確認し、不具合内容に応じたフォローも行なっていると言う。現場と工務センター、支店の技術職員が連携することで、遠隔であっても確実な品質確認と現場負担の軽減を両立できる体制が整っている。

「この仕組みを可能にしたのは、離れていても連携しやすいeYACHOがあったからです。離れていても同じ画面を共有しているため『ここ』が確実に伝わり、無駄な時間がなく次に進めるのはeYACHOの大きな強みです。単純に『便利』というフェーズを超え、現場監督が現場での時間を確保できる仕組みになりました。最近ではグループ会社の前田ベトナムとの連携も始まり、さらに進化しています」(水野氏)

eYACHO、使わないとソン、使うとトク

eYACHOの利用については、各現場に任せる、という方針の企業もあるようだが、と問いかけてみると、3人の「使わないとソン!」という声が重なった。

「情報をeYACHOに集約してリアルタイムにチェックできる便利さを実感しています。もし使っていない人がいるなら、絶対使った方がいい。こっちでやった方が断然速い!」(山口氏)

「まずはメモから使うと、自分の現場でこうしたらいいな、ああしたらいいな、と興味が湧いてきます。1から全部使いこなそうと思うと大変ですが、”これが終わったところチェックする” で○×をつけるだけでも便利です。まずは「触れない」抵抗感をなくすことが大事ですね」(主藤氏)

「九州支店では、支店長から職長まで、全員がeYACHOを使っています。『使わない』という選択がないので、紙が介在するボトルネックがなく、効率がぐんと上がります。使わないとソンですし、使うとトクをするということになります」(水野氏)

今後の活用について尋ねたところ「外部の設計管理者とのやり取りをeYACHOに切り替え、質疑も含めた記録を残せるようにしたい」と主藤氏。これを受けて「監理者用のチームを作って、フォルダ単位で権限を設定すれば、監理者を含めた運用もできるかもしれない。工務センターに相談してみよう」と水野氏。

九州支店では「とにかくやってみる」気質が根付いており、現場で「こうしたい」と思いついたことがあれば、すぐに工務センターに相談し、実行に移すという連携がしっかり定着しているようだ。この「まず動く」姿勢が、新しい活用の扉を開いていくのだろう。

(2025年12月取材)

前田建設工業株式会社-九州支店

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