記録運用のデジタル化を支える具体的なツールの一つが、施工管理アプリ「eYACHO」です。
eYACHOは、株式会社MetaMoJiが大林組と共同開発し、2015年から提供している施工管理アプリです。紙の野帳と同じ手書き感覚で記録できることが特徴で、MM総研「建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)」では、ゼネコンでの利用シェアNo.1(19%)、スマートデバイスでの利用シェアNo.1(21%)を獲得しています(※5)(※6)。
現場ではパソコンを使いにくい場面が多く、紙に記入した内容を事務所でパソコンに入力し直す運用も少なくありません。eYACHOでは、スマートフォンやタブレットで手書きのまま記録を作成し、その場で電子データとして扱えるため、事務所での再入力を抑えられます。印刷済みの帳票やExcelの帳票を取り込んでテンプレート化し、写真貼り付け枠や入力欄を設定して、検査帳票を現場で作成することができます。作成した記録は、複数ページをまとめてPDFに出力することができ、元請や発注者への提出にも利用できます。通信が不安定な場所でも入力を行い、電波が届く場所で同期する使い方にも対応しています。なお、ノートは自動で同期されますが、Shareノートとしての書き込みは、手動で「シェアレイヤーに移す」ことで同期されます。
同じ項目を繰り返し入力する手間を抑える仕組みとして、スマートテンプレートがあります。一度入力した工事名や日付などの共通項目を、関連する帳票に転記することができます。建設用語の入力には、建設mazec(手書き入力システム)を利用できます。
計測作業の記録では、eYACHOのスタンダード版以上・iOS版で利用できるBLuE連携により、対応する計測機器の測定値をBluetooth経由で帳票に取り込むことができます。値を読み取って書き写す作業が不要になり、転記に伴うミスの低減につながります。測定と記録を一人で進めやすくなる点も、記録作業の効率化につながります。
複数人での記録運用には、Share機能が有効です。同じノートや帳票、図面に複数の担当者が同時に書き込め、現場と事務所が同じ紙面を見ながら作業を進められます。書き込みは、誰が何を書いたかをリアルタイムに反映します。大林組(建築)の現場では、Share機能の活用による複数人での帳票入力によって、以前は1〜2時間かかっていた朝礼準備が10〜20分に短縮した事例が紹介されています(※7)。同じ現場では、安全パトロールの際に、キープランを見ながら指摘箇所に写真を貼り付け、是正の内容を現場でそのまま記録する運用も行われています(※7)。
立会・検査の効率化では、eYACHOを遠隔臨場に活用できます。東日本高速道路株式会社では、ウェアラブルカメラとeYACHO(Share機能)を用いた遠隔臨場により、立会前後の待機や移動を含めてトータルで500時間以上かかっていた移動時間を240時間に削減した事例があります(立会150〜160回の約半分を遠隔化)(※8)。この事例では、検測結果の記入から双方での確認、その場での承認までをeYACHO上で扱っています(※8)。eYACHOでは、承認の申請・確認を行うことができ、記録を残したまま一連のやり取りを進められます。
安全管理の面では、安全AIソリューションを利用できます。これは、MetaMoJiが2019年から独立行政法人
労働安全衛生総合研究所および株式会社大林組と共同で研究を進め、研究から得られた労働災害対策の知識を「リスク予測知識データベース」として体系化したものです(※9)。21種類の安全関連法令と31種類の通達・ガイドラインをもとに、過去の災害事例・マニュアル・法令などを参照し、作業内容や現場の状況に応じたリスクと対策をAIが提案します(※9)。AIが参照情報を自動で選択する自動モードと、作業員自身が災害事例・マニュアル・法令を選択して生成するインタラクティブモードの2つのモードがあります(※9)。安全AIソリューションはスタンダード版以上が対象で、無料トライアルでは利用できません。
記録をクラウドで扱ううえでは、情報セキュリティも品質管理体制の一部といえます。MetaMoJiは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格ISO/IEC
27001(ISMS)の認証を、クラウドサービス運用業務を対象範囲として取得しており(※10)、プライバシーマークも取得しています(※11)。なお、これらは情報セキュリティ・個人情報保護に関する認証であり、品質マネジメントの規格であるISO9001とは目的が異なります。
導入にあたっては、eYACHOは30日間の無料トライアルを提供しています(ベーシック版相当の機能が対象です)。BLuE連携や安全AIソリューションはトライアルの対象外です。用途に応じたプランが用意され、協力会社向けの限定ユーザー版もあります。限定ユーザー版は単独では購入できず、ベーシック版・スタンダード版・プレミアム版のいずれかを導入している企業が購入できます。