「危険予知活動はやっているが、いつの間にか形だけになっている」。そんな悩みを持つ現場は少なくありません。KYK(危険予知活動)は、作業に潜む危険を全員で先取りし、労働災害を未然に防ぐための基本的な安全活動です。
この記事では、KYKと4ラウンド法の正しいやり方を、中央労働災害防止協会の手順に沿って解説します。あわせて、現場で活動を形骸化させないコツや、安全AI・デジタル帳票を使って安全意識を高める実践例も紹介します。安全管理の基礎から、これからの現場運営のヒントまで一気に確認できる内容です。
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「危険予知活動はやっているが、いつの間にか形だけになっている」。そんな悩みを持つ現場は少なくありません。KYK(危険予知活動)は、作業に潜む危険を全員で先取りし、労働災害を未然に防ぐための基本的な安全活動です。
この記事では、KYKと4ラウンド法の正しいやり方を、中央労働災害防止協会の手順に沿って解説します。あわせて、現場で活動を形骸化させないコツや、安全AI・デジタル帳票を使って安全意識を高める実践例も紹介します。安全管理の基礎から、これからの現場運営のヒントまで一気に確認できる内容です。
KYK(危険予知活動)とは、危険予知(Kiken Yochi)の頭文字に活動(Katsudou)を組み合わせた略称で、一般には「KY活動」とも呼ばれます。作業の前に職場や作業に潜む危険要因を話し合い、危険のポイントと行動目標を決めて、安全を先取りする取り組みです。製造業・建設業を中心に、幅広い職場で実践されています。
よく似た言葉に「KYT(危険予知訓練)」があります。両者の違いはシンプルです。KYTはイラストシートなどを使って危険予知の力を鍛える「訓練」であり、KYKはその力を実際の業務のなかで発揮する「活動」を指します(※1)。訓練で身につけた感受性を、毎日の現場で活かすのがKY活動だと考えると分かりやすいでしょう。
KY活動は、中央労働災害防止協会が推進する「ゼロ災運動(ゼロ災害全員参加運動)」の中核に位置づけられています。旧国鉄で実践されていた「指差呼称」と危険予知を組み合わせた「KYT4ラウンド法」が、その標準的な進め方として広く普及してきました(※1)。 KY活動の目的は、大きく次の3つに整理できます。
なお、リスクアセスメントが「危険性・有害性を見積もり、低減措置を計画的に検討する管理手法」であるのに対し、KY活動は「その日の作業の直前に、現場の全員でリスクを口に出して確認する実践活動」という位置づけです。両者は対立するものではなく、組み合わせて運用することで効果が高まります。
KY活動の重要性は、建設現場をめぐる労働災害の現状が物語っています。厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況(確定値)」によると、2024年の労働災害による死亡者数は746人で、そのうち建設業が232人と全体の約3割を占め、業種別で最多でした(※2)。休業4日以上の死傷者数も4年連続で増加しており、現場の安全管理は依然として大きな課題です。
死亡災害の型で多いのは「墜落・転落」です。これらの多くは、作業前にひと言の危険予知があれば防げた可能性のある事故です。だからこそ、作業の直前に全員で危険を洗い出すKY活動が、安全の最後の砦として重視されています。
加えて、2024年4月に建設業へも適用された働き方改革関連法(いわゆる2024年問題)や、ベテランの退職による技術伝承の難しさも背景にあります。経験の浅い作業者が増えるほど、属人的な「勘」だけに頼った安全管理は限界を迎えます。誰が担当しても一定水準のKY活動を行える仕組みづくりが、今まさに求められているのです。
こうした事情は建設業に限りません。製造業でも、機械への「はさまれ・巻き込まれ」や転倒など、ヒューマンエラーに起因する労働災害が後を絶ちません。作業のなかに潜む危険を、作業者自身が事前に気づいて言葉にする。この当たり前のようでいて難しい行動を、組織として習慣化する手段がKY活動です。安全は設備や規則だけでは守りきれず、最後は現場の一人ひとりの気づきが支えています。
ここからは、KY活動の標準的な進め方であるKYT4ラウンド法のやり方を、ラウンドごとに解説します。中央労働災害防止協会は、KYT4ラウンド法を「ホンネの話し合い」で進める手法として紹介しています(※1)。
準備:メンバーと役割を決める
まず、3〜5人程度の職場小集団でチームをつくります。一人ひとりが意見を出しやすい人数が基本です。司会進行役のリーダーと、意見を書き留める書記をそれぞれ1人決めておきます。所要時間は1つのテーマにつき10〜30分程度が目安です。イラストシートや、実際の現場・作業写真をもとに話し合いを進めます。
第1ラウンド:現状把握「どんな危険がひそんでいるか」
第1ラウンドは、事実をつかむ現状把握の段階です。テーマとなる作業のなかに、どんな危険がひそんでいるかを全員で挙げていきます(※1)。「〜なので、〜になる」というように、危険要因とそれが引き起こす現象(事故の型)をセットで具体的に出すのがポイントです。
このラウンドでは、出た意見を批判せず、すべて挙げてもらうことが大切です。実際に事故が起きるかどうかではなく、「危険だと思うこと」を数多く出すことに集中します。発言の量が、後のラウンドの質を左右します。
第2ラウンド:本質追究「これが危険のポイントだ」
第2ラウンドは、本質追究の段階です。第1ラウンドで出た危険のなかから、特に重要だと考えられるものを全員で絞り込みます(※1)。「なぜ危険なのか」「どのように事故につながるのか」を掘り下げ、最も注意すべき危険のポイントを合意で決定します。
ここで合意したポイントには、メンバー全員で印を付けるなどして共有します。優先順位をはっきりさせることで、限られた時間のなかでも対策が的を射たものになります。
第3ラウンド:対策樹立「あなたならどうする」
第3ラウンドは、対策樹立の段階です。絞り込んだ危険のポイントに対して、「あなたならどうするか」を一人ひとりが具体的に出し合います(※1)。抽象的な精神論ではなく、その場で実行できる具体的な行動として対策を考えることが重要です。
たとえば「足元に注意する」ではなく、「通路の資材を撤去してから運搬する」というように、誰が見ても行動に移せるレベルまで具体化します。複数の対策案を出し、実行できるものを選んでいきます。
第4ラウンド:目標設定「私たちはこうする」
第4ラウンドは、目標設定の段階です。第3ラウンドで出た対策のなかから、その日に必ず実行する重点実施事項を「私たちはこうする」という行動目標としてまとめます(※1)。チームの合意として一つに絞り込み、全員で共有します。
最後に、決めた行動目標を指差呼称で確認・唱和し、作業に入ります。この「指差し唱和」までを行うことで、危険予知が頭のなかの理解で終わらず、行動として定着します。
締めの指差呼称が効果を底上げする
4ラウンド法の効果を高めるのが、最後の指差呼称です。指差呼称は、対象を指でさし、その名称と状態を声に出して確認する動作で、目・手・口・耳を同時に使ってミスを防ぐ手法です。
その効果は実験でも示されています。鉄道総合技術研究所が実施した実験では、何もしない場合の誤操作率2.38%に対し、指差呼称を行うと0.38%まで低下し、ヒューマンエラーがおよそ6分の1に減ったと報告されています(※3)。4ラウンド法で決めた行動目標を指差呼称で締めくくることは、安全意識を行動に変える確実な一手といえます。
高所作業を例にした4ラウンド法の進め方
イメージをつかみやすいよう、建設現場の足場上での高所作業を題材に、4ラウンド法の流れを具体的に見てみましょう。
第1ラウンドでは、「足場の開口部から墜落するおそれがある」「資材が散乱していてつまずき、転倒するおそれがある」「強風であおられ、バランスを崩すおそれがある」といった危険を、現状把握として全員で挙げます。第2ラウンドでは、このなかから「開口部からの墜落」を最も重大な危険のポイントとして絞り込みます。
第3ラウンドでは、「作業前に開口部へ手すりと幅木を設置する」「フルハーネス型の墜落制止用器具を確実に使用する」といった具体的な対策を出し合います。そして第4ラウンドで、その日の行動目標を「開口部養生とフルハーネス装着をヨシ!で確認してから作業する」とまとめ、指差呼称で唱和してから作業に入ります。このように、4ラウンド法は抽象的な注意喚起ではなく、その日の作業に直結した安全行動を生み出す枠組みなのです。
正しいやり方を理解していても、KY活動は続けるうちに形だけになりがちです。現場でよく見られる失敗には、次のようなものがあります。
これらを防ぐコツは、「具体性」と「全員参加」と「記録の活用」です。テーマはその日の実作業に即した現実的なものを選び、抽象的な題材は避けます。リーダーは若手にも必ず発言を促し、出た意見を否定しないことで、ホンネの話し合いを引き出します。
そして見落とされがちなのが、記録の活用です。せっかく抽出したリスクや行動目標も、紙のまま現場に置かれるだけでは次に活かせません。過去のKYシートやヒヤリハット情報を蓄積し、似た作業のときに振り返れるようにすることで、活動の質は着実に上がっていきます。この「記録を資産に変える」発想こそ、形骸化を防ぐ最大のポイントです。
KY活動とあわせて取り組みたいのが、ヒヤリハット活動です。ヒヤリハットは「ヒヤリとした・ハッとした」事例を集めて共有する取り組みで、まだ事故に至っていない危険の芽を見つけ出します。集まったヒヤリハット事例をKY活動のテーマに使えば、ネタ切れを防ぎつつ、現場のリアルな危険にもとづいた実践的な話し合いができます。両者を連動させることで、安全管理の精度はさらに高まります。
紙のKYシートが抱える「共有しにくい」「蓄積・活用しにくい」という課題は、現場のデジタル化によって解消できます。ここでは、施工管理アプリ「eYACHO」を例に、KY活動を効率化・定着させる実践例を紹介します。eYACHOは、紙の野帳をそのままデジタル化する発想で大林組と共同開発されたアプリで、ゼネコンでの利用シェアはNo.1(19%)、スマートデバイスでの利用シェアもNo.1(21%)となっています(※4)。
eYACHOのShare(シェア)機能を使うと、同じKYシートや帳票に複数人が同時に書き込め、現場と事務所がリアルタイムで内容を共有できます。離れた場所にいても同じ紙面を見ながら意思疎通できるため、「現場でしか分からない危険」を全員の共有事項に変えられます。
朝礼での共有にも効果的です。eYACHOのデジタルサイネージ連携を使えば、KY活動の内容や作業配当を大画面に映し、紙の印刷なしで多人数に一斉共有できます。実際に、大林組の現場ではShare機能の活用によって、朝礼の準備が約2時間から10〜20分まで短縮されたという報告があります。準備の手間が減ったぶん、現場の調整や危険予知そのものに時間を使えるようになります。
eYACHOは、KY活動と連動する安全パトロールにも応用できます。現場で気づいた不安全箇所を写真に撮り、その写真に直接手書きで丸囲みやコメントを書き込めば、そのまま是正指示として共有できます。承認の申請・確認まで現場で行えるため、「紙に書いて、事務所で清書して、協力会社へ送る」という従来の流れを大きく短縮できます。抽象的な指示による認識のずれも防げます。
KY活動の質は、担当者の経験や知識に左右されがちです。法令改正も頻繁で、最新の知見を踏まえてリスクを洗い出す負担は小さくありません。この属人化の課題に応えるのが、eYACHOの安全AIソリューション(KY活動支援AI)です。
安全AIソリューションは、MetaMoJiが大林組と共同開発し、独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所との共同研究で得た知見を反映したものです。21種類の安全関連法令と31種類の通達・ガイドラインをもとに、現場の状況に応じて関連度の高い事故事例・リスク・対策を動的に抽出します。個人の経験や勘に頼らず、リスクを見える化できる点が特長です。
利用方法は、作業内容を自由に入力するとAIが自動でリスクと対策を提示する自動モードと、ユーザー自身が災害事例・法令などを選びながら検討するインタラクティブモードの2つから選べます。従来の公開データと自社の労災データを統合して利用できるため、自社の現場特性に合った検討が可能です。
導入の効果も現れています。大林組がJVで施工する早明浦(さめうら)ダム再生事業の現場では、安全AIの活用により過去の事故事例を必要に応じて活用しやすくなり、作業手順書の改善やKY活動の質の向上に役立てられています。鉄筋工事を手がける湧田鉄筋でも安全AIを活用した安全管理の効率化が進められ、中日本ハイウェイ・メンテナンス中央ではRKY活動(リスク予知活動)のデジタル化が進められています。
人手不足が深刻ななか、経験の浅い若手をどう支えるかは多くの現場の課題です。eYACHOの安全AIは、作業内容を入力すると過去の労災事例や法令を踏まえた潜在リスクを提示するため、知見の少ない若手の見落としを補えます。さらにShare機能で上司・ベテランと同じ帳票を共有すれば、遠隔でのOJTにも活用できます。
こうしたデジタルの仕組みは、ベテランのノウハウを帳票テンプレートとして標準化し、誰が担当しても一定水準のKY活動を行える状態をつくります。属人的な安全管理から、組織として安全意識を底上げする運営へ。これが、KY活動をデジタルで定着させる本質的な価値です。
なお、安全AIソリューションはeYACHOのスタンダード版以上で利用できます。対応OSはiOS・iPadOS・Windows・Androidで、現場で使うスマートフォン・タブレットにも対応しています。
KYK(危険予知活動)は、作業に潜む危険を全員で先取りし、労働災害を防ぐための基本的な安全活動です。その標準的なやり方であるKYT4ラウンド法は、第1ラウンド(現状把握)、第2ラウンド(本質追究)、第3ラウンド(対策樹立)、第4ラウンド(目標設定)の順に進め、最後を指差呼称で締めくくります。
一方で、KY活動は形骸化しやすいのも事実です。具体的なテーマ設定、全員参加、そして記録の活用が、活動を続けるためのコツになります。なかでも記録の共有・蓄積は、eYACHOのShare機能や安全AIといったデジタルの仕組みを取り入れることで大きく前進します。eYACHOの安全AIによるリスクの見える化は、属人的になりがちなKY活動を底上げし、経験差のある現場でも一定の安全水準を保つ助けになります。
正しい4ラウンド法を土台に、デジタルの力を組み合わせる。これが、これからの現場で安全意識を高めていく現実的な進め方です。
紙のKYシートからの脱却や、安全AIを活用したKY活動の効率化にご関心がある方へ。施工管理アプリ「eYACHO」は、30日間の無料トライアルでお試しいただけます(無料トライアルはベーシック版相当のため、安全AIソリューションは対象外です)。製品資料のダウンロードや導入のご相談も受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。