【第3回】DXの始まりと「中小企業DX推進コンソーシアム」の設立

2018 年DXレポートから始まった日本のDX

一度立ち止まって、DXの始まりを振り返ってみよう。物事に行き詰まったり、迷ったりしたら原点に戻るのが鉄則である。原点から見えてくるものは必ずある。
DXの始まりといえば経済産業省が2018年9月に公開した「DXレポート」である。サマリーだけでも読んでもらいたい。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/DX_report_summary.pdf

DXレポートの要旨は、既存のシステムがサイロ化していたり、ブラックボックス化していたりして DX を実践するためのデータ活用が出来ない状態にあり、これを放置していると2025 年以降に毎年 12 兆円の経済損失を招くという危機感を滲ませたものだった。それを「2025 年の崖」と例えて、取り組みを促したのである。
視点がレガシーシステムの刷新に置かれていて、デジタル技術を活用して企業価値の向上を目指すという本来のDXの姿が希薄だったことは否めない。
その後経済産業省での認識も深まり、DXレポート2、2.1、2.2と改定を重ねて本来のDXの姿を具体的に提示できるようになった。

DXレポート2.2の背景と概要

今年は崖の年である2025年である。果たして崖はあったのか?崖から落ちた会社はどのくらい存在したのか?2025 年以降の経済損失はどのくらい見込まれるのか?DX 取り組み活動を扇動した責任として検証も望まれるところである。2026年には総括がされるかもしれない。

中小企業デジタル化応援隊事業と不正をする業者の実態

中小企業デジタル化応援隊事業とは、デジタル化や DXにノウハウが不足している中小企業の経営課題解決を支援する目的で用意され、中小企業がデジタル化を進める際に、IT 専門家からコンサルティング等の支援を低価格で受けられるように、国が費用の一部を補助する事業である。
ところが、不正をする業者が後をたたず、2022年2月で終了してしまい後継事業はまだ発表されていない。
提供されていない事業を紹介してもお役には立たないのだが、こうした中小企業の支援事業で暗躍する業者が多いことを知ってもらいたい。経済産業省の事務局のサイトには「デジタル化応援隊事業の事務局において、不正受給の有無、被害件数、被害額等について、過去に遡った徹底的な調査を実施しました。その結果、これまでに、支援を行っていないにも関わらず支援を行ったと報告した架空請求案件、及び支援を行ったが支援時間を水増しして請求した案件が、455件(1億円相当)確認されました。」と記載されている。せっかく2020年9月から2022年1月まで実施し、17,245件を補助した事業なのに終了を余儀なくされたのは残念である。
中小企業は様々な支援事業を受ける機会があるが、支援に関与する業者はよく見極める必要がある。うまい話には落とし穴も付きものである。コラム②で紹介した様々な補助金や助成金を活用してもらいたい。

エリアにあるDX推進コンソーシアム(官産学連携)の活用

DX 推進コンソーシアムとは、官産学が連携してDXを推進するための共同事業体である。個社で DX を推進するのが難しい時、コンソーシアムの支援を受けるのも一つの方法である。様々な情報を取得したり、ネットワークを広げたり、人材育成に活用したりすることができる。金融やヘルスケアなど業種に特化したコンソーシアムや地域に特化したコンソーシアムなどがあるが、中小の建設業には、地域に特化したDX推進コンソーシアムをお勧めしたい。例えば、以下のようなものがある。

地域DX推進ラボの活用

地域特化型には経済産業省及び独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が制度化して進めている地域DX推進ラボがある。地域の特徴ある多様な機関(地域の公的機関、大学・各種学校、研究機関、企業・事業者、事業者団体、投資家、ベンチャーファンド、金融機関、市民団体等)が連携または参加して地域の経済発展とウェルビーイングの向上を目指す取組みを「ラボ」として選定するもので、現在43のラボが選定されている。

地域DX推進ラボポータルサイト

  地域DX推進ラボポータルサイト: https://local-iot-lab.ipa.go.jp/

中小企業向けに、様々な支援策が行われているので、どこから取り組んだら良いか、どんな順序で進めたら良いか、費用の調達は?人材の育成は?など地域特化型の DX 推進コンソーシアムや地域DX推進ラボに相談してみると良い。

DXセレクションの応募受付が始まった!

DX セレクションについては、このコラムシリーズの最後で詳しく解説する予定であるが、11 月4日に経済産業省から2026年度のDXセレクション応募様式が公開されたのでお知らせしたい。
DXセレクションとは、デジタルガバナンス・コードに沿った取組みを通じてDXで成果を残している、中堅・中小企業等のモデルケースとなるような優良事例を選定するもので、優良事例の選定・公表を通じて、地域内や業種内での横展開を図り、中堅・中小企業等におけるDX推進及び各地域での取組みの活性化につなげていくことを目的として2022年より開始したものであり、これまで延べ83の会社が選定されている。
募集期間が2025年12月1日(月曜日)から12月22日(月曜日)18時00分であることから、既にDXに取り組まれていてDX認定も受けているような会社にはチャレンジをお勧めしたい。なお今回から対象が農業法人や医療法人、NPO法人などに広く拡張されたのも特徴である。

DXセレクション2026応募様式サイト: https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251104001/20251104001.html

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