【第2回】DX推進のための補助金・助成金制度について
中小企業の補助金や助成金制度は充実している
中小企業がDXを進めるには規模に応じた投資が必要になる。資金的な障害でDXが進まないことがないように、国は様々な制度を用意している。申請手続きは必要だが、これらの制度を使わない手はない。主なものを紹介しよう。
➀IT導入補助金
デジタル化を進めるには、ITツールの導入やセキュリティ対策が必要になる。IT導入補助金を活用して、業務の効率化を進めDXに繋げる基盤を作ることが望まれる。IT導入補助金には対象によって4つの枠があり、必要な資金を援助してもらえる。
今年度は以下のような補助金制度になっていて、昨年度より赤字の部分が補正された。
ITツールの導入であれば、通常枠で申請すれば良い。具体的な申請のスキームは、IT補助金導入事務局に登録されたIT導入支援事業者からの支援を受けて申請することになる。
申請する内容によって補助金の金額や補助率も変わるので、ITベンダーなどに相談して決めると良いだろう。詳細な情報は中小企業庁や独立行政法人中小企業基盤整備機構のWebサイトを参考にすると良い。
https://it-shien.smrj.go.jp/
IT導入補助金申請のスキーム
➁事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、コロナ禍により影響を受けた中小企業や中堅企業などが、新分野展開、事業転換、業種転換、事業再編などに取り組む費用を補助するものである。DXの本質である企業価値向上のためにビジネスモデルの転換などに活用できる。グリーン分野への進出であるGXビジネスも対象となる。補助金の上限も大きく、本格的に転換を考える場合には心強い制度である。
要件や手続きは以下のようになっているが、補助対象事業が細かく決められていたり、2025年は応募締め切りが3月だったりするので、詳細は中小企業庁のサイトなどで確認した方が良い。
➂ものつくり補助金
正式な名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼ばれるもので、中小企業・小規模事業者が生産性向上に資する革新的な新製品・新サービスの開発や海外需要開拓を目的とした設備投資・システム導入を行う際に活用できる補助金である。業種は製造業に限らず、商業・サービス業など幅広い業種が対象で、補助率・補助上限額は申請する枠によって異なる。
申請の流れは以下のようになっている。
採択された建設業の事例を見ると興味深い。
- 3Dモバイルレーザースキャナーを活用した測量業務への参入
- 好適環境水での完全養殖サケ(魚卵~成魚)の加工食品の新規開発
- 山間部僻地工事の生産性向上に寄与するICT施工サービスの開始
- 「多分野対応汎用免震型枠」の開発で安心・安全な街づくりに貢献
- 早期災害復旧及び短期災害予防工事サービスの実現
- 新型建機による海外市場展開を目指したサービス展開
- バックホウ及び木材切断機の導入による工程改善による売上拡大
- 建設業に特化した外国人労働者管理のためのシステム開発
- ICT建機導入による新たな地盤改良施工の開発と短工期化の実現
- 舗装DX可視化とCIM対応型測量の革新的BtoB向けサービス
- 特許×IoT×人材育成で築く強靭インフラDXモデル
- 建設DXによる短工期・低コストの革新的「土木工事」体制の構築
DXを意識したICT活用の事例が多いようだ。
➃中小企業省力化投資補助金
中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援するもので、これにより、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的とする補助金である。
事務局が予め選定した省力化製品のカタログから選定して申請するカタログ注文型とIoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した設備を導入するための事業費等の経費の一部を補助する一般型がある。例えばカタログ注文型には以下のような事例がある。
補助金の上限と補助率は以下のようになっている。
【カタログ注文型】
【一般型】
なお、括弧内の増額は大幅な賃上げ(最低賃金の45円増額と給与支給総額を6%アップ)を行なった場合に適用され、本制度が中小企業の生産性向上と賃上げを目的としていることがわかる。
申請の手続きは次のようなプロセスになっており、事前の「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要である。GビスIDプライムアカウントとは、法人代表者や個人事業主が取得できる共通認証システムの最上位アカウントで、複数の行政サービスへの申請を一つのIDとパスワードで管理・利用できるようになる。マイナンバーカードを利用すればオンラインで最短即日に取得可能である。これはものつくり補助金の申請にも必要である。
【カタログ注文型】
【一般型】
➄人材開発支援助成金
厚生労働省が進めている政策で、中小企業だけが対象ではない。正規雇用労働者のスキルアップが目的で、パートやアルバイトなど非正規雇用労働者にはキャリアアップ助成金という別の制度がある。
人材開発支援助成金には、現在6つのコースがある。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
建設業のDXに関わるコースについて、詳細を解説する。
【人材育成支援コース】
人材育成支援コースの助成は、以下の訓練を受けた場合の費用や賃金が助成される。
- (1)職務に関連する知識やスキルを習得させるための10時間以上の訓練
- (2)厚生労働大臣の認定を受けたOJT付きの訓練
- (3)非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練
【人への投資促進コース】
以下の訓練を受けた場合の費用や賃金が助成される。
- (1)高度デジタル人材
- (2)成長分野等人材を育成する訓練
- (3)情報技術分野認定実習併用職業訓練
- (4)定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービス)
- (5)労働者が能力開発に向けて自発的に行う訓練
- (6)長期教育訓練休暇等制度
- (7)教育訓練短時間勤務等制度
高度デジタル人材育成では、「ITSS+」及び「DX推進スキル標準」のレベル4、または3 に区分される講座も対象となる。
令和8年度までの期間限定の助成なので、申請は早めに行うのがいい。
【建設労働者認定訓練コース】
本助成金制度は、建設業における労働者の育成及び技能継承を図り、もって建設労働者の雇用の安定、並びに能力の開発及び向上に資するため、中小建設事業主及び中小建設事業主の団体に対して、必要な助成を行うものである。
【建設労働者技能実習コース】
本助成金制度は、中小建設事業主等が雇用する建設労働者に有給で技能実習を受講させた場合に、その経費や賃金の一部を助成する制度である。
両コースとも<>内は賃金要件、資格等手当要件を満たした場合の増額分となる。
建設労働者については、認定訓練や技能実習を受ける場合も経費や賃金の助成が行われるので手厚い助成制度が用意されていると言える。