導入事例【自治体】
熊本県 多良木町様
自治体DX成功のキーは汎用性議会の完全ペーパレス化の先へ
熊本県南部に位置する多良木町(たらぎまち)は、九州山脈に囲まれ、町の中央部を日本三急流のひとつ球磨川が流れる自然豊かな町だ。早くから町内全域に光ブロードバンドを整備し、庁内業務のデジタル化に取り組んできた多良木町が、タブレットを用いた議会のペーパーレスをきっかけに業務DXの基本システムとしてMetaMoJi Shareを選んだ理由・現状についてお話をうかがう。
MetaMoJi Shareの汎用性に注目
多良木町 総務課 参事 尾方 翔氏は導入検討時をこう振り返る。「まず、国が推進するDXについて、町として何ができるのかを検討しました。その際に、町民向けのDXと庁舎内のDXの二つが上げられましたが、町民向けのDXを展開するためには、まず職員がデジタル化に適応することから始めるべきだと考え、庁舎内の取組みを検討していました。その中で、当時庁舎内のペーパーレス化の一環として、電子決裁システムの導入を検討していたこともあったため、併せて議会のペーパーレス化(議案資料の電子化)も行うことにより、紙の削減や膨大な書類の管理、議案の差し替え発生時の複雑な業務を改善できると考えました」
「導入するシステムについては「汎用性」を重視しました。議会での利用のみを考えれば、議会に特化したシステムとして優れたものは沢山あります。しかし、議会は原則年に4回で、期間は2週間程度、準備期間を入れても1ヶ月程度の使用となります。議会のない期間の用途は無視できません。システムと合わせてタブレットも導入するわけですから、庁内での会議などといった、議会以外の業務などでも年間を通して使えるものにしたいと考えました。そのような条件を元に、複数のシステムの中から検討を重ねた結果、 MetaMoJi Shareが、議会や庁舎内会議で使用でき、一般事務にも応用して使える汎用性の高いものではないかとの結論に至りました。また、高い汎用性と直感的に使いやすいユーザーインターフェースも決め手の一つとなっています」
多良木町 総務課 参事 尾方翔氏
議会の完全ペーパーレスを実現
「MetaMoJi
Share導入に際しては、庁内の運用に沿った資料等を作成し、用途例なども含めMetaMoJiによる研修と、電算担当による実施研修を行いました。その後は個別に議員や職員に対し、その都度必要なフォローを行なっています。議会では初回だけ従来の資料も並行して使用しましたが、次からは「使って慣れていただく」ということで、議会の完全ペーパーレス化に踏み切りました。半ば強引なところもありましたが、議会事務局のフォローもありましたので、議員の順応も早く、現在では議員への連絡等もタブレットを介して行なっています。タブレットはセキュリティ面の対策を実施した上、議員活動等でも自由に使ってもらい、使うことで慣れるようにしてもらっています」(尾方氏)。
「現在、議会では、MetaMoJi Shareで議会資料を配布して進行しています。傍聴席に用意された大型スクリーンには同じ資料が投影され、議会の進行に合わせて同様の画面を見ながら傍聴することができる仕様です。
DX化の壁の一つとして、デジタル化への拒否感が挙げられることが多いですが、議会においては誰もが手慣れた様子で操作しています。導入前は、スマートフォンなどに対し、苦手意識のある議員もいたため、タブレット導入への不安もありましたが、いざ導入してみると、事務局が説明した通りに素直に操作してくれています。ペーパーレス化したことで事務局の負担が減ったのはもちろんのこと、議員も紙の資料がなくなり、持ち運びが楽になったとおっしゃられます。運用開始時は、簡単な操作でも議会を中断し、説明したこともありましたが、現在では「ここはこうだよね、ああだよね」と、他の議員と操作について助け合いながら使うことができるようになり、議会自体が効率化したと感じています」(事務局長・浅川英司氏)
多良木町議会 事務局長 浅川英司氏
使って、慣れていくしかない
多良木町議会・髙橋裕子議長は当時を振り返り「他市町村で導入が始まったこともあり、わが町でも導入をしたいという気持ちがありました。機械に疎い世代でもあるので、時間をかけてタブレットやシステムについてのメリット、デメリット等を検討し、システム導入の際には幾度も研修を重ねました。とにかく「使って、慣れていくしかないよね」という気持ちでスタートしました」
MetaMoJi
Share導入前は操作などへの不安もありましたが、いざ使用してみると、取り扱える情報量がとても多くなったと感じました。当初、検索等の操作においては、慣れていないこともあり、ぎこちない面もありましたが、最近では少なくとも最低限の使い方はできるようになったのではないかと感じています。議場においても、わかる人がサッとフォローし合うため、誰も不安はありません。最近では、慣れてきてタブレットの良さがわかってきたところです。
まだ慣れないこともありますが、皆で「ここまではマスターしよう」というラインを押さえながら、少しずつ慣れていくことを目標としています。操作に慣れることは必要ですが、慣れさえすればメリットの方が大きいと思います」
議会以外でも、議会だよりの入稿前の最終確認など、MetaMoJi Shareを介してやり取りするといった活用をすることで、事務局に出向く必要がなくなるなど、議場以外での活用も少しずつ広がっているようだ。
「使って慣れていくしかない。慣れればメリットしかない」多良木町議会 議長 高橋裕子氏
庁舎内業務でも利用が進む
小さな打ち合わせから課長会まで、あらゆる会議のペーパーレスが進む
総務課長の仲川広人氏はペーパーレス化を強く推進したひとりだ。
「導入当初は課長会等の会議において、率先してMetaMoJi
Shareを利用するようにしました。課長会等で率先して使用したことで、会議規模に関係なく自然とペーパーレス化に移行していきました。会議資料等の準備の手間もデータ作成と格納で済みますので、会議や打ち合わせは、場所を限定せずにサッと始まってサッと終わります。特に管理職において業務に占める会議の割合は多いため、資料配布が楽な点もペーパーレス化が進んだ理由だと思います。町民向けのサービス等については、印刷ベースのものが残りますが、庁内全体としての印刷物の減少や保管場所の削減などといった経費の削減効果は大きいです。汎用性が高いため、MetaMoJi
Shareの業務への利用方法は各課の応用次第でもあります」と言う。
管理職の立場として、MetaMoJi Shareを率先して使用し、会議をペーパーレス化し利用を促進した 総務課課長 仲川 広人 氏
本来は大量の紙の地図を使用する水田作付けに関する現地確認作業において、ペーパーレス化を行った場合、専用システムの導入・ランニングコストが非常に高い。そのため、MetaMoJi Shareをペーパーレス化のために応用し、利用している。利用方法は、MetaMoJi Shareに地図データを取り込み、田畑の形、面積、巡回ルートなどを事前に落とし込む。大きくて取り回しのしにくい地図を持ち歩く必要がなくなっただけでなく、現場で直接書込み行い、音声録音したメモや写真などを画面上に貼り付けることもできる。また、庁舎の担当者とのリアルタイムな情報共有も可能となるため業務の効率化に繋がっている。
水田作付けの現地確認:MetaMoJi Share に取り込んだ地図データに現地で書き込む
1人1台環境で加速度的に進むDX
多良木町のタブレット整備は、1段階目として議会に参加する議員・課長・係長級に1人1台、他の職員は利用状況を想定し、2人に1台程度の配置でスタートした。
同町では既にMetaMoJi
Share、行政向けチャットツール、伝票や稟議についての電子決裁システムなどの導入、検討などが進んでいる。各ネットワークをやり取りするデータには、セキュリティポリシーに基づき厳密に制限やルールを決めた上で、ポリシーに影響のない範囲で自由に業務に合わせて使用することができる。例えば事業課において、図面をタブレットで持ち出して書き込みするといった使い方や、農作物の現地調査に使用するなど、これまでは分厚い資料や地図を持ち運ばなければならなかった資料をMetaMoJi
Shareにデータとして取り込むことで、大量の資料を容易に持ち運べるようになり、ストレスフリーになったと言う。なお、LGWANとMetaMoJi
Share間でのデータのやりとりは、自治体向けチャットツールを介在させることで無害化し、セキュリティを確保している。
今後電子契約も追加する予定だ。仮想化していたインターネット系をタブレットへ移行を行い、ペーパーレス化の一層の浸透も見据え、費用圧縮と業務効率をアップさせるために第2段階目として、1人1台の環境にまもなく移行を完了する。同時に外部からの会議参加者に対し、一時的に資料を配布できるようゲスト用の配備も検討している。また、災害時などの緊急時には、タブレット端末において各Wi-Fi環境を利用し、MetaMoJi
Shareでの連携をとれる環境も準備を進めている。現在はそのような応用に関する利用方法やルールの整備に着手し始めているという。常に一歩先を見据えた多良木町のDXに今後も注目したい。