導入事例 04

株式会社TBSテレビ様

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GEMBA Noteで原稿などをタブレット共有に、紙を6割削減
業界の先頭走り番組放送のペーパーレス化を実現

株式会社TBSテレビ様のご紹介

株式会社TBSテレビ(以下TBS)は、帯番組「Nスタ」で原稿を紙からタブレットでの共有に変更し、コピー量を大きく削減、大幅なペーパーレス化を進めている。放送業界において紙原稿は「聖域」とも言われ、ペーパーレス化はどの局においても実現できない積年の課題であった。その課題に部署横断プロジェクトとして果敢に挑戦し、既に局内別番組への導入が着々と進んでいるTBSにお話をうかがう。


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紙からタブレットへの挑戦

 放送時間が3時間に及ぶ「Nスタ」1回の放送で発生するコピー枚数は、原稿、キューシート、進行表合わせて5,700枚にものぼっていた。「変更が入ると、待ち構えている学生アルバイトがコピーして、10数カ所の配布先に配って回って戻ってくる。これを放送中何度も繰り返し、番組終了時には台車2台分もの原稿が積み重なっていた」(法亢(ほうが)プロデューサー)これが毎日となると紙の消費量の甚大さは言うまでもない。


(左)大量のコピーが発生していた紙の原稿が(右)タブレットでの共有に変わった

(左)大量のコピーが発生していた紙の原稿が(右)タブレットでの共有に変わった


「最初は抵抗があった」<br>総合編成本部 アナウンスセンター 井上 貴博 氏

「最初は抵抗があった」
総合編成本部 アナウンスセンター 井上 貴博 氏

 大量の紙が使われる放送業界でペーパーレスへの取り組みは必然とも思われる。しかしそれ以上に放送業界の紙への信頼は絶対的なものがあるという。番組のメインキャスター・井上アナウンサーは「率直に、最初は抵抗感があった。ずっと紙でやっているので、理論的には説明できないが、紙の安心感・絶対の信頼感があった。印字されている紙から視覚に入るのと、タブレットの画面を通して入ってくるものの違いに戸惑いがあった」と当初を振り返る。「紙がこれだけ出るのは環境によくないことだとはわかっていたことだったが、変えられないと思い込んで、わかってるのに踏み出さなかっただけ。せっかくこの番組で変えようとしていて、自分自身も変えた方がいいと思っていたので、これはチャンスだと思った」

挑戦の背中を押したGEMBA Note

 TBSでは年に2回、SDGsキャンペーン「地球を笑顔にするWEEK」を実施し全国にSDGsの重要性を呼びかけている。と同時に、外向けに言うだけでなく社内キャンペーンも実施し真摯にSDGsに取り組んでいる。


制作プロデューサー 法亢 順 氏

制作プロデューサー 法亢 順 氏

 番組プロデューサーの法亢氏は「番組の制作現場には大量の紙が出回っていて、それをコピーして配り回るのに多くの若い人材が囚われているのをなんとかしたい」と考え、技術マネージャーの宮崎氏に相談を持ちかけた。宮崎氏は社内SDGsプロジェクトを推進する側の人であり、自身も報道番組担当の技術として報道番組でのペーパーレスに取り組みたいと考えており、制作と技術のトップの思いが一致した。


 宮崎氏から提案されたGEMBA Noteを初めて見た時「そもそもの目的はペーパーレスだったが、GEMBA Noteの情報伝達の正確さ・瞬時の共有のスピードは理にかなっており、制作現場にとって有益なものだと驚いた」という。そして「人を動員しやすい社内SDGsキャンペーンをきっかけに、報道と技術部門のコラボプロジェクトとしてNスタのペーパーレス化で大規模な改革をしよう」と狙いを定めた。こうして単なるペーパーレスに留まらない、仕事の質を変えるDXプロジェクトが始動した。

メディアソリューション部 依田 純氏 / 制作技術統括部 宮崎 慶太 氏

(左)メディアソリューション部 依田 純氏
(右)制作技術統括部 宮崎 慶太 氏

 最初にGEMBA NoteをTBSに持ち込んだのは「ドラマのロケで発生する大量の紙(原稿)を本社と共有できるものはないかと探した」依田氏だった。その後宮崎氏が選挙特番でGEMBA Noteを導入した。選挙は滅多にないため仕組みも古いままで、刻一刻と変わる情勢に合わせて差替原稿を配り歩き、紙が舞い飛んでいた選挙特番がGEMBA Noteで運用できることは経験済みだったので「紙の削減はできそうでできない一番遅れている部分だが、選挙で使えたGEMBA NoteならNスタでも効果が見込めると確信した」(宮崎氏)と言う。


 他のノートアプリとの比較検討も行い、GEMBA Noteの即時共有(シェア)できる点・様々な形式のデータが使用できる点・個人と共有を使い分けられる点が決め手となった。

1on1の丁寧な説得

ニュースデスク 小路 由香 氏

ニュースデスク 小路 由香 氏

 「働き方ややり方が番組によって全く異なり、それが番組の文化でもある。複数の部門が関わる影響の大きいプロジェクトを成功させるのは難しいこと」(依田氏)特にNスタはTBSの中でも関係者の規模が大きく、ワークフロー変更の影響は小さくない。修正が効かない生放送の現場で、ワークフローの変更に対する出演者の心理的な不安をいかに解消するかにかかっている。「説明に回るスタッフが手分けして、それぞれ異なる感覚に合わせて、1on1で粘り強く必要性を説き、理解を求め、不安な気持ちを聞き取る作業を緻密かつ丁寧に続けてくれたスタッフの存在が大きかった」(法亢氏)


 ニュースデスクの小路氏は「もっとすんなり受け入れられるかと思っていたが、世代を問わず紙からiPadに変わることに対する心理的抵抗が予想以上に大きかった」と当時を振り返る。「例えば進行表は一度紙にしたものをスキャナで取り込んでGEMBA Noteで並べ替えるオペレーションが必要になり、そのための人の配置や手順の検討が必要だった。それに関わる人たちに対して、この変更が必要で、その方が効率がいいということをわかってもらうことが大変だった。わからなくなると『やっぱり紙がいいよ』ということになってしまうので『慣れたら大丈夫、慣れたら楽になるよ』とひとりずつ丁寧に説明する工程は思ったより長かった」


ニュースデスク 杉田 望 氏

ニュースデスク 杉田 望 氏

 ニュースデスクの杉田氏は「番組に関わる人数が多いので、やり方を試行錯誤しながらだと気持ちが離れていく。失敗しないように細かく調整した上で 『こうやってください』と周知する方向がうまくいくと思った。一つ一つ細かい作業を洗い出し、見直して、GEMBA Noteのどの機能を使えばこの仕事に馴染むか、機能をどう活かすか、全ての選択肢を検討した上でこのやり方にするという積み重ねに時間がかかった」と言う。「例えば、手書きで書くかどうか。原稿をPDF化して画面上で文字を書くこともできるが、消えてしまうリスクを回避するため手書きは継続することにした。紙を残すか残さないか、絶対に放送し続けなくてはならないのでせめぎあいがあった」(杉田氏)

全員が瞬時に共有

 「軌道に乗るまでの約2ヶ月間は、説明作業に終始した段階もあったし、慣れるまでは消えてしまうのではないかという恐怖もあったが、慣れてくるとGEMBA Noteの利便性を実感している」(法亢氏)


 尺がオーバーした時に原稿を削ったり、VTR編集待ちで放送の順番を変更したりする場合、これまではインカムで知らせると同時に、指示内容を書いた原稿やキューシート、進行表を人に渡すとそれがコピーされ各セクションに運ばれるバケツリレーのようなやり方で原稿が送られていたが、現在は口で伝えるのと同時にGEMBA Noteに書き込んだ内容が、アナウンサーや、AD、カメラマン、スイッチャーなどスタッフ全員に瞬時に共有されるようになった。「これは凄まじい変化で、紙では絶対できなかったこと。GEMBA Noteがあれば全スタッフが共有できるのは革命的」(井上アナ)と表現するほどだ。


 それぞれが画面を分割させて見たいものを表示して使用しており、それぞれが自分に必要な箇所を表示し、書き込んだり、少し先の進行を確認したり、自由に使えるのも便利な点だ。


GEMBA Noteで情報が瞬時に共有される。編集長、スイッチャー、カメラマン、それぞれが見たいものを見たいように表示できるのも便利。(右端)ADはGEMBA Noteと紙原稿のW体制。空白が生じそうになれば放送を止めないためにアナウンサーに紙の原稿を投げ込む。

GEMBA Noteで情報が瞬時に共有される。編集長、スイッチャー、カメラマン、それぞれが見たいものを見たいように表示できるのも便利。
(右端)ADはGEMBA Noteと紙原稿のW体制。空白が生じそうになれば放送を止めないためにアナウンサーに紙の原稿を投げ込む。


 こうしてNスタのペーパーレスへの「オンエアに支障がない範囲で極限まで削減してみよう」というチャレンジは、使用する紙の6割削減という結果を生み出した。「タブレット購入等の初期コストもコピー代の削減で早いうちに十分ペイできる」(宮崎氏)という。


 宮崎氏はNスタでの成功の理由を「キーパーソン(プロデューサー、編集長、デスク、技術の責任あるポジションの人)が全員これを実現するんだというモードになり、必要で効果のあることだと一人ひとりに丁寧に説明し、地ならしがしっかりできたこと」そして「運用設計に尽きる。非常に面倒な作業だが、サボらず、逃げず、泥臭く汗をかくこと。Nスタは毎日の番組なので問題点が早期に出し切れたこともよかった」と総括する。


 しかし、今回の成功で完結ではない。「原稿は一度プリントアウトし紙を残している。今回は「全部これで行く」とはしておらず間(あいだ)を取っている。『ここは変わらない、ここしか変わらないから安心してこの船に乗って』というやり方にした。もっと紙を削減することもできるが、自分の手足のように使えるようになってから次に進む」(宮崎氏)「大人数がみんな使えるように、あまり広げすぎないようにしている」(杉田氏)が、カンペのスケッチブックをGEMBA Noteに替えてインタラクティブな会話ツールとして使用するなど、利用場面は着実に拡がりつつある。

「Nスタでできたなら」広がる波及効果

 大所帯で夕方の大きな枠のNスタで実現できたならウチもできるだろうという空気が生み出せたこと、Nスタで得たワークフロー変更のノウハウが社内パッケージ化できたことで、他の番組へのGEMBA Note導入の心理的ハードルはぐんと低くなった。例えば「news23」は、運用開始に1週間しかかからなかった。情報番組「ひるおび」でも運用が決まっているという。


 「苦労を経て、結果として紙を削減できた。社内的にも聖域に踏み込んだDX化の象徴になりSDGs意識が広まっている。また、紙に限らず、DX化する上でNスタでGEMBA Noteを使ったことはひとつの指標・頼りにできる結果になった。これをきっかけに社内に必要なDX化を進めていくきっかけにしていきたいと思う」(宮崎氏)


 「法亢氏は、プロジェクトの説明をした時に、学生の「学校でも環境問題を勉強している。この改革はとても大切なことで大賛成」という言葉に後押しされたという。「GEMBA Note導入で彼らの負担軽減になっただけでなく、大量の紙を持って走り回っていた彼らが、今ではiPadとペンを使い、原稿をGEMBA Note化し、順番通り並んでいるか確認し、時に『こうした方が使い勝手がよくなるのでは?』と新しいアイディアを出すなど仕事への関わり方に変化が起きている」と振り返る。「今回の私たちの挑戦は、部局横断の変革であったこと、他にも波及効果が拡がったことが高く評価され、9月には民放とNHKの各局横断の温暖化防止プロジェクト「1.5℃の約束 キャンペーン(*)」においてTBSを代表する事例として発表する機会ももらった。導入するまでの産みの苦しみはあったが、とことんやってよかったなと思う」と振り返った。この挑戦は、ペーパーレスという目標に効果を出しただけでなく、情報の即時共有が仕事の質を変え、若者の未来を照らす大きな一歩となったと言えるだろう。


(左)原稿に指示が書き込まれ(中)スキャンして(右)GEMBA Noteに取り込む

(左)原稿に指示が書き込まれ(中)スキャンして(右)GEMBA Noteに取り込む


(*)国連広報センターとSDG メディアコンパクトに加盟する日本のメディア有志が立ち上げたキャンペーン。地球の気温の上昇を食い止めるためにメディアが取り組む行動を各局が発表した。TBSは台本を紙からタブレットに変えて大幅に紙の消費量を減らした今回のプロジェクトを発表した。

本取材は2022年11月に行われました。画面キャプチャ、機能、肩書きは当時の情報に基づきます。

*お話を伺ったのは

株式会社TBSテレビ
報道局報道番組センター報道番組1部 Nスタ

制作プロデューサー 法亢 順 氏

ニュースデスク 小路 由香 氏

ニュースデスク 杉田 望 氏

メディアテクノロジー局

制作技術統括部 宮崎 慶太 氏

メディアソリューション部 依田 純氏

総合編成本部 アナウンスセンター 井上 貴博 氏 

MetaMoJiは、TBSが取り組むペーパーレス化から始まる業務DXを、GEMBA Noteをはじめとする製品群で今後も強力にサポートしてまいります。


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