創立100年の企業が目指す
DXによる建設業改革
株式会社橋本組 様
株式会社橋本組(静岡県焼津市)は、1922年に創業。地域の土木・建設分野におけるニーズに幅広く応えてきた。事業の継続的な発展を目指して現在取り組んでいるのが、MetaMoJiの「eYACHO」を活用したDXの推進だ。次代に向けて建設業のあり方が問われている。
橋本組の創業は1922年、大正時代にさかのぼる。以来、地域密着型の建設会社として、静岡県中部地方の公共事業や、地場産業である水産加工業者向けの工場、冷凍倉庫の建設などを展開してきた。船舶(橋本丸)や生コン工場を自社保有しており、港湾関係や土木等の港町の地元企業ならではの工事も得意としている。
同社では、2000年代初頭の国の構造改革を機に、それまで公共工事中心だった経営方針を転換。食品工場や商業施設、宿泊・温浴・スポーツ施設、オフィス・クリニックなど、民間の建築工事も受注するようになり、現在の受注は建築8割、土木2割という構成になっている。
「企画提案から設計、施工、アフターメンテナンスまで一貫した体制で取り組めるのが当社の強み。建築、土木とも分け隔てなく、社員はどちらも手掛けられるように技術と経験を蓄積するようにしています」。このように語る橋本真典氏が橋本組の5代目としてCEOに就任したのは、2020年11月のこと。設計・施工の品質とともに建設会社の地位向上を目指して、それまで課題として感じていた、いくつもの案件に真正面から向き合うこととなった。
新卒社員の採用に注力
女性も活躍する職場に
橋本氏が直面している喫緊の課題は、入職者の減少と社員の高齢化だ。「事業継続に関わる問題です。そのためには新卒採用に注力するとともに、業務と組織の改善に取り組んで、これからの時代に対応していくことが求められます」(橋本氏)。
目標として掲げているスローガンは「トリプル1000」。社員の平均年収を1000万円に。そのためには年間1000億円の売り上げを目指す。その実現のために1000人の技術者を育てる。橋本氏は「10年で実現」と意気込んでいる。
既に数年前から新卒採用は年間20人ペースに到達している。男女関係なく優秀な人材を採用するという方針をとり、現在は30歳以下の社員の約40%が女性となった。
技術支援部で検討し
新技術をスムーズに活用
社内の人材の構成が変わっていく過程で、さらなる変革を促進したのが、2018年の働き方改革関連法の成立だ。ドローンの導入、ペーパーレス化、現場監督へのタブレット端末支給、3Dスキャナーアプリの導入、新社屋での完全フリーアドレス制の導入など、業務効率の向上と費用削減に向けた取り組みが進められた。
技術支援部の新設もその1つだ。「業務を見直していくなかで、もっとも人手がかかっているのは、書類作成などの事務作業であることがわかりました。担当者が1人で現場を見て、事務処理も抱えて、残業を繰り返していたのです。そこで、一定のスキルと知識のある社員を技術支援部として組織し、業務にあたる各部署に応援に向かわせることにしたのです」(橋本氏)。
工務の改善を図るうえで、DX推進も技術支援部の業務に。現在は、新しいICTの導入にあたっては、技術支援部が検討し、手順の整備や仕様の調整などを行い、スムーズに現場で活用できるようにしている。
「eYACHO」の導入で
旧来の業務を見直す
「より安全で効率的な施工を目指すには、グローバルな建設ICTを活用したi-Constructionの推進が必要不可欠」というのが、橋本氏の考え。施工管理支援アプリ「eYACHO for
Business」の導入もその一環だ。
当初は関連会社でテスト的に導入し、技術支援部での検討を経て、全社的に取り入れていった。橋本氏はCEO就任後も月に一度の安全パトロールを続けているが、その際、「eYACHO」を使用して、そのメリットを実感しているという。「施工箇所を図面と引き合わせてチェックし、そこで撮った画像を添付。関係各所が閲覧し、サインと押印という一連の流れがクラウド上で完結するので、非常に効率がいい」と評価する。
「eYACHO」導入当初は、従来の帳票を落とし込んで展開していたというが、「これまで疑問を持たずに使い続けていた帳票類や事務作業を改めて見直す、いいきっかけになりました。不要な手順や改善点を見つけられたのは大きいですね」と橋本氏。
新機能「GEMBA Talk」で
離れた場所から現場を支援
2024年から「eYACHO」のシェアノートから簡単にビデオ通話ができる新機能「GEMBA
Talk」も、早々に現場での活用が開始されている。映像と音声で現場の状況をリアルタイムに共有できるというメリットがあり、ビデオ通話のためのURL発行などの面倒な手間や調整は不要だ。
現場からの報告や質疑応答などもスムーズに行えるという。現場と事務所間の移動を省けるので、緊急時の対応やちょっとした相談なども容易に実施できる。
実際に機能を検証した技術支援部からは、「現場からの問い合わせに即時対応できる」「ミーティングのために全員が1カ所に集まる必要がない」「経験の浅い若手社員のサポートツールになる」といった声が挙がっているという。
「こうしたツールによって現場の負担を減らし、その分、設計・施工の品質をさらに高めていきたい」と橋本氏。旧来は、現場管理を終えて、帰社してから事務作業に取り掛かるため、残業は必須だったが、現場に居ながらにして帳票類の処理ができるようになれば、労働時間は大幅に削減できる。
「これからはBIMで設計して、そのデータのまま、現場で施工する。仮想空間で構築したものを具現化する、建設技術者の仕事はそういうものになっていく。だから、業務をシームレスなものにするeYACHOのような技術は私たちに必要不可欠」(橋本氏)
100年の積み重ねを経て、また次世代に向けて事業を継続、進展させていく。橋本組は柔軟な姿勢でDXを推進して組織を変革し、企業としての価値を高めようとしている。