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若手現場監督の「辞めたい」を防ぐ!
離職理由トップ3と定着率を上げる施策

「最近入った若手が、また辞めたいと言い出した」——建設業の経営者や現場所長から、こうした声を聞く機会が増えています。賃上げを行い、ホワイト化を進め、叱責も控えているのに、若手は辞めていく。その答えは、若手本人のメンタルでも、上司の指導力でもなく、毎日の現場が抱える業務構造そのものにあります。

本記事では、若手現場監督が辞めたいと感じる構造的な背景を公的統計で整理したうえで、離職理由トップ3と、定着率を上げる実効性ある対策を解説します。大林組や阪神高速技術といったゼネコン・インフラ維持管理の現場で、実際に若手定着の手応えが出ている取り組みを一次情報として取り上げます。

若手現場監督の「辞めたい」を防ぐ!離職理由トップ3と定着率を上げる施策

若手現場監督の「辞めたい」は個人の弱さではなく構造的な問題

若手現場監督の早期離職は、建設業界全体に共通する構造課題です。まずは「自社だけの問題ではない」という事実を、公的データから押さえておきます。

建設業の29歳以下就業者は、就業者全体の約12%にとどまります(※1)。これは全産業の平均と比べて顕著に低い水準で、若手は構造的に少数派であり、ひとたび辞めると補充も難しいのが実態です。

年齢階層別の建設技能者数

さらに、建設業に就職した新規高卒者の3年以内離職率は、近年4割を超える水準で推移しており、全産業平均を上回っています(※2)。せっかく採用した若手が、早期に現場を去ってしまう構造が続いているのです。

労働時間の負担も全産業平均より重い状態が続いています。国土交通省の資料では、建設業の年間出勤日数は全産業平均より10日多く、年間総実労働時間は約48時間長いとされています(※1)。さらに、施工管理に従事する技術者については、月平均残業時間が45時間を超える建設業者が13%、完成工事高50億円以上の企業に限れば35%にのぼります(※3)。

つまり、若手が「辞めたい」と口にするのは、業界全体の労働構造が長時間労働を生みやすい設計になっているからです。個人のメンタルや覚悟の問題に矮小化してしまうと、本質的な手は打てません。

若手現場監督の離職理由トップ3——現場で本当に起きていること

数値の裏側で、若手の本音はどこにあるのか。国土交通省や厚生労働省の調査、そして建設DX推進企業の現場ヒアリングをもとに、若手現場監督の離職理由を3つに整理します。

  • 理由1:持ち帰り残業を生む「終わらない書類業務」

    最大の離職要因は、現場業務そのものではなく、現場が終わってから始まる事務作業です。日報、写真台帳、KY(危険予知)シート、打合せ簿、検査記録——若手は現場で得た情報を、夜の事務所で手入力し直すという二度手間を毎日繰り返しています。

    建設業には、2024年4月から罰則付きで時間外労働の上限規制が適用されています(原則として月45時間・年360時間以内)(※4)。一方で、施工管理の業務量自体が減っているわけではありません。規制で表面上の残業は減らされても、サービス残業や持ち帰り作業に転嫁されれば、若手の不満はかえって深まります。

  • 理由2:現場で頼れない「孤立感」

    2つめは、現場での孤立感です。経験の浅い若手が、初めて担当する工種、初対面の職長、相手のあるトラブル対応に直面し、判断を求められる場面が日々発生します。ベテラン上司は別の現場に出払い、相談したくても物理的に届かない——これが、若手の心が折れる典型的な構造です。

    「現場でわからないことがあっても、聞ける人がそばにいない」「写真や図面をスマホで送っても、文章では伝わらない」という声は、建設DX推進企業のヒアリングでも繰り返し挙がります(※本稿のための独自取材による)。叱責の有無ではなく、リアルタイムに頼れるかどうかが定着を左右しているのです。

  • 理由3:ベテランの背中に「自分の将来像」を重ねられない

    3つめは、キャリアの将来像が描けないことです。若手の目の前にいるベテラン現場監督は、夜遅くまで書類と格闘し、休日も電話対応に追われています。建設業の生産労働者の年収は約432万円で、全産業平均(約508万円)を15%下回るというデータもあります(※1)。長時間労働で休日も少なく、賃金も他産業に見劣りする——その働き方を10年後の自分の姿として受け入れられなければ、若手は静かに転職活動を始めます。

    つまり若手は、目の前のベテランの労働環境を見て、自分の将来を予測しています。将来像を魅力的に描けるかどうかが、定着の分かれ目になります。

若手定着で陥りがちな3つの誤解

実効的な対策に踏み込む前に、若手の離職を防ごうとして採用担当者や経営層が陥りがちな誤解を3点だけ整理しておきます。これらは善意の取り組みであるにもかかわらず、結果として定着率を下げかねないものです。

ひとつめは「ホワイト化すれば若手は定着する」という発想です。残業を表面上だけ減らしても、業務総量が変わっていなければ、しわ寄せはサービス残業や同僚への負荷の付け替えに表れます。若手は同僚の疲弊を見て、自分の未来を予測してしまいます。

ふたつめは「叱らない指導が安全策」という発想です。叱責を控えること自体は妥当ですが、それが「無関心」や「丸投げ」に転化すると、若手はかえって孤立を深めます。問題は叱るか叱らないかではなく、判断に詰まったときにリアルタイムで相談できる相手が現場にいるかどうかです。

3つめは「過剰な配慮で成長機会を奪う」リスクです。若手を守るあまり重要な判断や対外折衝から遠ざけると、3年後に「やりがいがない」「市場価値が上がらない」という別の離職理由を生みます。守るべきは若手の心身であり、機会を遠ざけることではありません。

これらの誤解を避けたうえで、業務構造を変える実効施策に進みます。

「辞めたい」を防ぐ3つの実効施策——精神論ではなく業務構造を変える

ここからは、定着率を上げるための実効施策を3つに絞って解説します。共通するのは、若手の根性や上司の指導力を変えるのではなく、業務構造そのものを書き換えるという発想です。

  • 施策1:書類業務の発生源を絶ち、「現場で完結」させる

    第1の施策は、現場で発生する記録(野帳・日報・KYシート・写真・図面の指摘)を、その場でデジタルとして完結させる体制をつくることです。発生源で記録が完成していれば、夜の事務所での再入力は構造的に発生しません。

    具体的には、既存のExcelやPDFの帳票を「見た目そのまま」テンプレート化し、現場でタブレットから入力するだけで日報・写真台帳・打合せ簿が出来上がる仕組みが理想です。撮影した写真も自動で台帳に紐付けば、夜の写真整理という典型的な持ち帰り作業がそもそも発生しません(※本稿のための独自取材による)。

    たとえば株式会社大林組の建築現場では、施工管理アプリ「eYACHO」の導入により、以前は1〜2時間かかっていた朝礼準備が10〜20分でできるようになりました(※6)。撮影した写真の整理時間もほぼゼロになったとされています。これは個人の効率化スキルではなく、業務フロー自体を変えた結果です。

    「現場で終わる」状態を構築することが、2024年問題への対策であると同時に、若手の持ち帰り残業を物理的に減らす最短ルートになります(※同社導入事例より)。

  • 施策2:遠隔OJTで「孤立する若手」を作らない

    第2の施策は、ベテランが事務所から複数の若手現場をリアルタイムでフォローできる体制を整えることです。物理的にそばにいなくとも、図面・写真・現場映像を同期共有しながら指示が出せれば、若手は判断に詰まった瞬間に相談できます。

    阪神高速技術株式会社では、eYACHOにビデオ通話機能「GEMBA Talk」を組み合わせることで、リモート朝礼・遠隔検査・遠隔OJTを実現し、移動に伴うタイムロスを大幅に削減し、残業時間の削減にもつなげています(※5)。同社では、従来は現場同行が中心だったOJTが「つながりながら任せる」育成に進化し、ベテランが事務所から複数の現場の若手を効率的に支援できるようになったと報告されています(※5)。

    加えて、若手が単独で危険予知(KY)活動を行う場面では、AIによる支援を組み合わせる選択肢もあります。作業内容や使用機械を入力すると、過去の事故事例から類似リスクを提示する機能を活用すれば、知見の少ない若手でも安全管理の質を担保しやすくなります(※本稿のための独自取材による)。これは精神論で「危険を察知しろ」と求めるのではなく、ベテランの暗黙知をシステムで補う発想です。

    「遠隔だから若手が育たない」のではなく、「遠隔でつないでいるから、ベテランが複数の若手を同時に支援できる」という発想の転換です。

  • 施策3:ベテランも抵抗なく使えるツールで、世代間の分断を埋める

    第3の施策は、若手だけでなくベテランも自然に使い続けられるツールを選ぶことです。ITが苦手なベテランが新ツールを使わなければ、結局は若手が紙とデジタルの両方を扱う羽目になり、業務はかえって増えます。

    紙の野帳に近い感覚で手書きできるUIや、既存のExcel・PDF帳票をそのままテンプレート化できる仕組みを備えたツールであれば、ベテランも業務フローを変えずに移行できます(※本稿のための独自取材による)。世代を問わず同じ画面・同じ帳票で会話できる状態が、若手の孤立を構造的に防ぐ前提になるという考え方です。

事例から学ぶ:若手定着率を改善した2社の取り組み

ここでは、現場でDXに踏み出し、若手の業務負担を実際に削減した事例を取り上げます。いずれも施工管理アプリ「eYACHO」を活用した一次事例です。

  • 株式会社大林組(建築):朝礼準備1〜2時間→10〜20分

    以前は1〜2時間かかっていた朝礼準備が10〜20分になり、撮影した写真の整理時間がほぼゼロになった事例です(※6)。複数人が同時にキープラン(現場の見取り図)を編集できるため、「特定の若手や担当者にだけ作業が集中する」状況が解消されました。

    ポイントは、特定の個人が頑張って速くなったのではなく、複数人で同時編集できる仕組みがボトルネックを解消したことです。

  • 株式会社大林組(JV/千住関屋ポンプ所工事):午前中の事務作業が消える

    eYACHO導入以前は、安全当番が午前10時頃から各職長に電話や口頭で作業内容を確認し、Excelに手入力して打合せ簿を作成していました。導入後は、全員がタブレットから各自入力するため、打合せ簿の作成は10分程度で完了するようになり、「パトロール報告書や打合せ簿作成で忙殺されていた午前中がまるまる空いた」と現場担当者は語っています(※7)。

    その空いた時間で測量や資材の注文といった現場本来の業務に集中できるようになり、結果として残業発生のメカニズム自体が変わっています。

「辞めたい」を防ぐ施策を、明日から始める順番

最後に、本記事で取り上げた施策を、自社で実行する優先順位として整理します。

  • 1. 若手の離職を「個人の問題」と切り分けるのをやめ、業務構造に原因があると経営層・現場所長が認識を揃える
  • 2. 自社の若手が抱える書類業務の量と、それに伴う持ち帰り残業を1ヶ月計測する
  • 3. 書類業務の発生源(現場での記録)をデジタル化し、現場で完結する体制をパイロット現場でテストする
  • 4. ベテランが事務所から複数の若手現場をフォローできる仕組み(遠隔OJT)を、1人のメンター×3現場規模で試行する
  • 5. 効果を月次で計測し、若手の残業時間・離職意向の変化を追跡しながら他現場に展開する

この順番で進める意義は、賃上げや福利厚生の充実といったコストのかかる施策に踏み込む前に、業務構造そのものから変える余地が残っていることを社内に示すことにあります。

若手現場監督の離職対策に関するよくある質問

  • Q. 賃上げだけでは若手の離職は止められませんか?

    賃金水準の改善は重要ですが、それだけで離職を止めるのは難しいというのが、ヒアリングで一貫して聞かれる現場の見解です(※本稿のための独自取材による)。若手の退職面談で挙がる理由は「給料が低い」だけでなく、「終わらない事務作業」「孤立感」「先輩の働き方を見て将来が見えない」が複合的に絡みます。賃上げと業務構造の見直しは、並行して進めるのが現実解です。

  • Q. 退職代行で突然辞められる前に、兆候をつかむ方法はありますか?

    退職代行に踏み切る若手の多くは、上司に話しても改善されないという無力感を抱えています。1on1の制度を月次で設けても、議題が「仕事の進捗確認」だけだと意味がありません。日報や写真台帳がデジタルで共有されていれば、若手の業務量・残業傾向の変化が数値で見えるようになり、面談の前に異変に気づける可能性が高まります。

  • Q. 中小ゼネコンでも、DXツールの導入で本当に効果は出ますか?

    導入規模ではなく「現場で完結する」運用が組めるかが効果を左右します。大林組のような大手だけでなく、地方ゼネコンや専門工事会社でも、まずは1現場・1業務(日報、朝礼準備、写真整理など)からスモールスタートし、効果検証を経て他現場に展開する流れが一般的です(※本稿のための独自取材による)。最小5ライセンスから契約できるツールもあるため、いきなり全社展開する必要はありません。

まとめ

若手現場監督の「辞めたい」は、本人のメンタルや上司の指導力ではなく、持ち帰り残業を生む書類業務、現場での孤立、ベテランの背中に描けない将来像という3つの構造要因から生まれます。離職対策の本筋は、精神論や個別ケアではなく、業務フローそのものを書き換えて、現場で記録が完結し、ベテランが遠隔で複数の若手を支援できる体制を作ることにあります。

大林組や阪神高速技術の事例が示すように、デジタル野帳のようなDXツールを活用すれば、朝礼準備の時間や現場間の移動時間を大きく削減できます。削減された時間を若手の休息や学習に充てる循環を作れれば、「辞めたい」の発生源を断ち、定着率を着実に押し上げられます。現場監督の離職対策は、現場の業務構造を変えるところから始まります。


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出典一覧

※1 国土交通省 不動産・建設経済局建設振興課「最近の建設産業行政について」(令和7年9月) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001566406.pdf
※2 厚生労働省 職業安定局雇用開発企画課 建設・港湾対策室「建設労働をめぐる情勢について(参考資料3)」(令和7年10月15日) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001592320.pdf
※3 国土交通省「『適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和4年度)』の結果を公表」 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00183.html
※4 国土交通省(建設業を支える人材の確保・育成)「建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から!」 https://daiku-sodateru.mlit.go.jp/data/807e5605b217ca2cd09298d9a4a25c62.pdf
※5 株式会社MetaMoJi「阪神高速技術、MetaMoJiの施工管理支援アプリ『eYACHO』を導入、ビデオ通話機能『GEMBA Talk』を活用し、移動のタイムロスを削減」(PR TIMES、2025年6月25日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000379.000004007.html
※6 株式会社MetaMoJi「eYACHO導入事例|株式会社大林組(建築)」 https://product.metamoji.com/gemba/eyacho/user/obayasigumi_kentiku.html
※7 株式会社MetaMoJi「eYACHO導入事例|株式会社大林組(JV/千住関屋ポンプ所工事)」 https://product.metamoji.com/gemba/eyacho/user/obayasigumi_jv.html
※8 株式会社MetaMoJi「MetaMoJiの『eYACHO』がゼネコンで利用される施工管理アプリNo.1に」(2026年3月25日) https://metamoji.com/jp/news/20260325/
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【監修】eYACHO編集部

施工管理アプリ「eYACHO」は、タブレット1つで現場の記録・共有・管理を可能にし、施工管理から安全管理まで幅広い業務をサポートします。
本コラムでは、建設業界の課題解決やDX推進に役立つ情報や最新動向をお伝えします。

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