建設現場のデジタル化が進むなかで、「情報共有のリアルタイム性」がアプリ選定の決め手になる場面が増えています。日報や図面をクラウドに置く仕組みは多くのツールが備えていますが、「同じ紙面に複数の担当者が同時に書き込めるか」となると話は別です。
本稿では、施工管理アプリeYACHOに搭載されているShare機能を取り上げます。なぜ「同時書き込み」を実現できる設計になっているのか、現場でどんな業務変化が起きているのか、導入企業の一次事例と独自視点で読み解いていきます。
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建設現場のデジタル化が進むなかで、「情報共有のリアルタイム性」がアプリ選定の決め手になる場面が増えています。日報や図面をクラウドに置く仕組みは多くのツールが備えていますが、「同じ紙面に複数の担当者が同時に書き込めるか」となると話は別です。
本稿では、施工管理アプリeYACHOに搭載されているShare機能を取り上げます。なぜ「同時書き込み」を実現できる設計になっているのか、現場でどんな業務変化が起きているのか、導入企業の一次事例と独自視点で読み解いていきます。
Share機能は、同じノート・図面・帳票に複数の利用者が同時に書き込めるリアルタイム共有機能です。提供元の株式会社MetaMoJiが「リアルタイム伝搬技術」と呼ぶ独自技術が中核にあり、誰かが書き込んだ線やテキストが、ほぼ遅延なく他の参加者の画面に反映されます(※本稿のための独自取材による)。
一般的なクラウド型施工管理アプリの「共有」は、ファイルをアップロードして他の人がダウンロード・閲覧する、あるいは順番に編集していく非同期型が主流です。Share機能はこれとは設計思想が異なり、Webドキュメントの同時編集に近い感覚で、同じ紙面の上で複数人がペン・テキスト・写真貼り付けを並行して進められます(※1)。
「誰が」「どこに」「いつ」書き込んだかは自動で記録され、書き込み内容を色分けして識別することも可能です。事務所のデスクで管理者がペンを入れた指示が、現場のタブレットにそのまま表示される。逆に現場で職長が撮った写真と書き込みが、事務所の図面にリアルタイムに反映される。こうした双方向のやり取りが、1つのノート上で完結します。
リアルタイム共有が注目される背景には、建設業の働き方改革と発注者要件の変化があります。
第一の要因は、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制です。原則として月45時間・年360時間以内、特別条項を結んでも年720時間以内などの厳格な制限が設けられました(※2)。違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される、罰則付きの規制となっています。現場と事務所を往復する移動時間や、事務所に戻ってからの書類作成時間を圧縮することが、合法に事業を続けるための前提になりました。
第二の要因は、公共工事を中心に広がる遠隔臨場の実施要領です。国土交通省は2022年3月に「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」を策定し、段階確認・材料確認・立会を遠隔で実施することを公式に位置付けました(※3)。映像と音声のリアルタイム性、記録としての保存性が要件とされ、これらを満たすツールが現場に求められています。
第三の要因は、JV(共同企業体)や協力会社を含む多人数体制の常態化です。1つの工事に元請・設計・専門工事業者が同時に関与し、図面の改訂や是正指示が日々発生します。誰かがファイルを更新して、後から全員が確認する従来型のフローでは追いつかない場面が増えてきました。
これらの要因が重なり、「同じ図面・帳票を、その場で全員が見ながら手を入れられる」リアルタイム共有が、選定基準として一段上のレイヤーに上がってきています。
Shareで実現できる代表的なユースケースを、現場の業務単位で見ていきます。
PDF図面に対して、複数の参加者がペンで丸印や矢印、コメントを書き込めます。事務所の設計担当が修正指示を入れた瞬間に、現場のタブレットを持つ職長の画面に反映され、その場で職長が「ここで干渉あり」と追記する、というやり取りが可能です。レイヤー機能を使えば「指示」「質疑」「是正完了」などを別レイヤーに分けて管理できます。
KY(危険予知)シートや作業日報、検査チェックシートの作成では、複数の担当者が関わるケースが少なくありません。しかし、紙や一般的な帳票運用では、一人の入力が終わるまで次の担当者が作業できず、「入力待ち」が発生しがちです。
Share機能を使うと、1つの帳票を複数の担当者が同時に編集できます。例えば、安全当番が現場の安全施策を記入している間に、安全統括が総括欄を入力し、別の担当者が現場写真を追加するといった役割分担が可能です。
それぞれが担当部分を並行して作業できるため、帳票作成のスピードが向上し、情報共有もスムーズになります。チーム全体で効率よく帳票を完成させられることは、現場業務の大きなメリットです。
撮影した写真の上に直接、丸囲み・矢印・コメントをペンで書き加えられます。是正対象の場所と内容を「指示書を別途作る」必要なく、写真1枚で完了できます。書き込まれた写真はShare機能で協力会社にもそのまま共有され、Eメールやチャットへの転送作業を省略できます。
ビデオ通話機能GEMBA Talkと連動させると、通話しながら同じ帳票・図面・写真を見て、双方が書き込めます。発注者側の監督職員が画面の図面に「ここを再確認」と書き込み、現場側の担当者がカメラで該当箇所を映しながらメモを返す、といった操作が一画面で完結します(※1)。
Share機能を含むeYACHOの導入によって、実際にどの程度の業務変化が起きているのか。公開されている一次事例から、特に数字が明確な3社を取り上げます。
NEXCO東日本では、Share機能を活用した遠隔立会の試行で、移動時間を年間500時間から240時間にまで圧縮しています(※同社導入事例より)。立会1件ごとに発生していた現場までの往復が、デジタル野帳上で「同じ図面を見ながら確認」に置き換わったことが大きく効いています。
朝礼用のKYシート・作業指示書をテンプレート化し、Share機能で複数の担当者が前日のうちに分担入力する運用にした結果、従来2時間かかっていた朝礼準備が10分まで短縮されたと公表されています(※同社導入事例より)。短縮された時間は、現場での実作業や安全確認に振り向けられています。
現場と事務所のあいだで発生していた電話・FAX・対面打合せの時間が、Share機能による画面共有と同時書き込みで10〜20分に圧縮されたと報告されています(※同社導入事例より)。「事務所への持ち帰り業務」が現場で完結する範囲が広がったことの効果です。
これらの数字に共通するのは、単にデジタル化したから時間が減ったのではなく、「複数人が同じ紙面で同時に動ける」というShare機能の設計特性が、待ち時間・移動時間・転記時間を構造的に削っているという点です。
リアルタイム共有を謳うアプリは多いものの、建設現場には「電波が届かない」という現実があります。Share機能の実用性は、この通信制約への対応で評価が分かれます。
eYACHOはネイティブアプリとして設計されており、トンネル坑内・地下構造物・山間部などの通信途絶下でも、ノートや帳票の入力・閲覧・写真貼り付けが端末ローカルで継続できます。通信が回復した時点でShareサーバーと自動同期し、複数端末で同じノートを編集していた場合でも差分がマージされます(※1)。Shareノートとしての書き込みは、手動で「シェアレイヤーに移す」ことで同期されます。
加えて、KDDI株式会社との協業によって、2025年4月から本格提供が始まったau Starlink Directにも対応しています。スマートフォン・タブレットがStarlink衛星と直接通信できる仕組みで、空が見える場所であればauの5G/4G LTEエリア外でも接続可能とされています(※4)。山岳トンネル、ダム現場、長大橋梁の上下部工など、これまでリアルタイム共有が物理的に不可能だった現場での運用余地が広がっています。
導入時には、いきなり全現場・全業務に展開するのではなく、まず1現場・1業務(例えば朝礼の議事録)から始めるのが定石です。30日間の無料トライアルが提供されているため、現場での実機検証から着手するのが、定着失敗を避ける近道といえます(※同社公表情報による)。
Share機能の効果を引き出すには、機能のオン/オフ以前に、現場の運用設計が重要です。実際の導入で押さえておきたい順序を、4ステップで整理します。
第一に、Share機能で共有する対象を絞り込みます。すべての帳票・図面をいきなりShare化すると、誰がどこを編集中か分からなくなり、かえって混乱を生みます。日報・KYシート・是正指示書・図面の指示レイヤーなど、「複数人が同時に触る価値が高い書類」から優先順位を付けるのがおすすめです。
第二に、テンプレートを整備します。既存のExcel帳票やPDF帳票を取り込んでテンプレート化し、入力欄を手書き枠・チェックボックス・ドロップダウンなどに設定しておくと、Share上での同時入力が効率化します。会社で長年使っている帳票フォーマットをそのまま持ち込める柔軟性が、定着率を左右します。
第三に、参加者の権限設計を行います。元請のチーム、JV構成会社、専門工事会社、発注者など、立場ごとに編集権限・閲覧権限を分けることで、「協力会社にも見せたいが、機密部分は分けたい」といった現場のニュアンスに対応できます。フォルダ単位・ノート単位での権限設定が可能なため、運用ルールを最初に決めておくと混乱が少なくなります。
第四に、操作講習を関係者全員で受けます。Shareの真価は「現場の職人・ベテラン監督・若手・協力会社」が同じ紙面に集まることで発揮されるため、一部の推進担当だけが使える状態だと効果が頭打ちになります。提供元のオンライン講習や全国の販売パートナーによる訪問講習を活用して、関係者の操作レベルを揃えていくのが現実的です(※本稿のための独自取材による)。
導入時の留意点として、Share機能を含むeYACHOは初期費用と最小ライセンス数が設定されているため、1〜2名の個人事業主向けではなく、ある程度の現場規模・チーム規模を前提とした製品です。費用対効果の試算は、削減できる移動時間・残業時間に時給を掛けて回収月数を出すと、現場の判断材料になります。
施工管理アプリeYACHOのShare機能は、単なるファイル共有ではなく「同じ紙面で複数人が同時に動ける」リアルタイム伝搬技術として設計されています。大林組との共同開発の背景から、現場での同時作業を前提に作られている点が、他の共有手段と一線を画す独自性です。
2024年からの時間外労働上限規制、公共工事での遠隔臨場要件、JV体制の常態化という三つの圧力のなかで、リアルタイムで現場の状況を共有できる仕組みは「あれば便利」から「ないと回らない」段階に近づいています。東日本高速道路・大林組・大日本土木などの一次事例は、Share機能を中心に据えた業務再設計が、移動時間・朝礼準備・打合せ時間という具体的な数字を動かすことを示しています。
自社の現場でShareがどう機能するかは、運用設計の質に大きく依存します。まずは効果が出やすい業務(朝礼準備・是正指示・遠隔臨場)から小さく始め、テンプレート・権限設計・講習体制を整えながら拡張していくのが、デジタル野帳とリアルタイム共有を定着させる現実的な道筋です。
eYACHOのShare機能について、自社の現場に合うかを具体的にご検討いただける30日間の無料トライアルをご用意しています。製品の詳細や導入事例、お見積もりについては、株式会社MetaMoJiの公式サイトよりお問い合わせください。