国土交通省が公表する「建設業における働き方改革推進のための事例集」では、施工管理アプリの活用効果として「コミュニケーションの円滑化、手戻りの防止、事務作業の削減」が明確に位置付けられています(※1)。逆に言えば、これら3つは現場が抱える慢性的な課題として国も認識しているということです。
言葉だけの指示には、現場で再現性のある3つの弱点があります。
第一に、解釈のズレが必ず発生します。「ここを少し」「もう少し」「いい感じに」といった表現は、指示する側の頭の中にある完成像と、受け取る側が思い描く完成像を一致させる手段を持ちません。経験豊富な職長と新人作業員では、同じ言葉から想起する作業内容が異なって当然です。
第二に、伝達経路の途中で情報が欠落します。元請の監督から職長へ、職長から作業員へ、と伝言が重なるたびに、最初のニュアンスは少しずつ削れていきます。重層下請構造を持つ建設業では、特にこの問題が深刻化しやすい構造があります。
第三に、記録が残らないため後から検証できません。「言った」「聞いていない」という認識相違が起きたとき、口頭指示には決着をつける材料がありません。再発防止のためのナレッジ蓄積もできません。
これらは一人ひとりの努力では解決できない、構造の問題です。