【この記事でわかること】
- ・ 設備工事DXの基本や建設DXとの違い
- ・ DXが急務となる業界背景や現場の課題
- ・ DX導入による現場業務や働き方の変化
- ・ DX推進のはじめ方と具体的なステップ
- ・ eYACHOや三菱電機の事例から学ぶ実践ポイント
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【この記事でわかること】
設備工事の現場では、近年「人手不足」や「長時間労働の是正」など、かつてない課題が表面化しています。法律の改正や働き方改革が進むなか、これまでの紙やExcel中心のやり方だけでは対応しきれない状況に追い込まれている会社も少なくありません。その一方で、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進した企業は、現場の効率化や残業削減、人材の定着など、着実に成果を上げています。本記事では、設備工事におけるDXの全体像から、現場改革が進む理由、実際の導入事例、そして今日から始められる具体的なステップまでを、現場目線でわかりやすく解説します。
設備工事のDXは、従来の施工や点検、保全業務だけでなく、事務やバックオフィスも含めて、デジタル技術で業務を効率化することを指します。例えば紙で管理していた図面や日報をデジタル化し、工程や進捗をリアルタイムで共有することで、作業のムダやミスを減らし、事務作業も大きく簡素化できます。建設DXの一部ではありますが、特に設備工事では「設備図」「配管・配線」「機器管理」「点検・保全」といった領域が主戦場です。近年はゼネコン主導の全体DXだけでなく、設備会社自らが主体となってDXを推進する動きが加速しています。
建設DX全体では建物の設計・施工・管理まで広くカバーしますが、設備工事に特化すると配管や配線の複雑さや、各種機器管理、点検・保全作業の効率化が最大のテーマです。現場の実情に即したツールや、データを一元管理できる仕組みが求められます。これまでのようにゼネコン主導の枠組みに合わせるだけでなく、自社の現場事情に合わせて独自のDXを設計する姿勢が、これからの時代には欠かせません。
今、設備工事業界がDXに本気で取り組むべき理由は明確です。人手不足や高齢化、残業規制といった課題が深刻化し、旧来のやり方では立ち行かなくなっているためです。さらに、他社との競争や発注側の要望の変化も重なり、これまでの仕事の進め方を見直す必要が生まれています。
設備工事の現場では、若手人材の不足や採用難が続いています。少人数で多くの現場を回さなければならず、これまで通りの紙・Excel中心のやり方では業務が回りきらない現状です。さらに、2024年の改正労働基準法による残業規制の強化も大きなインパクトとなりました。工事の繁忙期であっても、月45時間、年360時間など厳格な上限が設けられ、ルール違反には罰則が科されます。例えば、現場監督が日中は現場管理、夜間は書類作成に追われる状況は、もう認められません。今後はデジタル化によって労働時間を適正化しなければ、そもそも事業継続が危うくなります。
2025年問題とも言われる、団塊世代の大量退職による技術やノウハウの消失も大きなリスクです。これまで現場を支えてきたベテラン層が持つ「勘」や「経験」「段取り」は、紙のメモや口伝だけでは残りません。DXは、そうした知見をデジタルのデータやワークフローとして可視化し、若手や新しいメンバーに引き継ぐための「器」として機能します。例えば、作業手順や点検ポイントをアプリで残すことで、属人化からの脱却が実現しやすくなります。
DXに積極的な企業と、そうでない企業との間では、すでに案件の回転率や利益率、受注機会に明確な差が生まれ始めています。例えば同じ人数でも、DX導入で複数現場を効率よく管理できる会社と、アナログ管理にとどまる会社とでは、年間で対応できる案件数や、一案件ごとの粗利に違いが出てきます。最近では発注者側や元請け会社も「DXに前向きな協力会社」を選ぶ傾向が強まっているため、生き残りのためにも変革は急務です。
DXを導入すると、現場や事務作業がどのように変わるのでしょうか。現場目線で見た具体的なメリットを5つにまとめます。
デジタルツールの導入で、工事ごとの工程・要員・資材を一元的に把握できるようになります。現場でスマホやタブレットから進捗や作業実績をリアルタイムで入力でき、そのデータがそのまま台帳や報告書に反映されるため、現場と事務所での転記作業も不要です。点検や保全作業でも、現場で記録した情報をすぐに活用できる仕組みが整います。
DX化によって、常に最新版の図面や指示内容が全員で共有されます。これにより、古い図面による施工ミスや、記入漏れ・誤記といった人為的なミスも大幅に減らせます。例えば、必須項目のチェック機能やプルダウン選択により、記入ミスが発生しにくい仕組みになっています。また、現場で撮影した写真に位置情報や図面ピンを連携させることで、証拠写真の撮り忘れ・撮り直しも防げます。
現場で撮影した写真やメモに、その場で事務所や元請けがコメントを付けられるため、コミュニケーションのスピードが格段に上がります。トラブル発生時も、電話やメールだけでなく、アプリ上で状況を可視化し共有できるので、判断のスピードが向上します。変更指示や承認もオンラインで完結でき、従来より待ち時間が短縮されます。
これまで現場代理人が帰社後にまとめていた日報や報告書作成、写真台帳の整理などの「事務作業」を現場で完結できるようになります。転記作業の削減によって残業が減り、プライベートの時間が確保しやすくなります。また、デジタル化された現場は若手にとっても魅力的に映り、人材の定着にもつながります。
DXによって集まったデータは、原価管理や次の案件への業務改善、そして保全契約の提案に活かせます。工事ごとの工数や手待ち時間、手戻りの発生箇所を可視化できるため、次回以降の無駄を削減しやすくなります。点検・保全履歴データをもとにした更新提案や、AIによる予知保全へのステップアップも目指せます。
数多くのツールが登場しているなか、どこから始めればいいのか悩む声も少なくありません。ここでは、実際の現場に直結する領域から着手する流れを整理します。
まずは工事現場で時間がかかっている「工程管理」「写真台帳」「日報」など、主要業務を一つのアプリに集約するのが効果的です。現場ごとにバラバラだった情報を一元管理することで、日々の負担を減らしながら生産性を高められます。
工場やビルなどの保全部門では、点検・保全の履歴や故障情報をSaaS型の管理システムでまとめて管理できます。IoTセンサーや振動・温度監視を導入することで、設備の異常を早期に検知し、予知保全につなげることが可能です。
将来的には顧客管理や見積、請求、原価管理など、バックオフィス領域とも連携し、会社全体でのDXを目指すことが重要です。いきなりすべてを変えるのではなく、まずは現場アプリを導入し、慣れてから段階的にシステムを広げていく方法が現実的でしょう。
DXを現場で実現する第一歩として、多くの設備工事会社が選んでいるのが「eYACHO」です。紙の野帳をそのまま進化させたこの現場DXツールは、設備工事の現場にぴったりの機能がそろっています。
設備図面をタブレットで開き、手書きのメモや修正を直接加えられます。図面上にピンを打ち、写真や点検項目と連動できるため、現場の状況が直感的に把握可能です。従来は紙で記入していた帳票も、そのまま電子化して現場で記入し、すぐに提出できる仕組みになっています。
eYACHO上で記入した情報や図面を、リアルタイムで事務所や元請けと共有できます。GEMBA Talkといったビデオ通話機能を活用すれば、遠隔地から現場の状況確認や指示出しも可能です。
大規模な設備工事プロジェクトでは複数の協力会社やJVが関与しますが、eYACHOなら同じ図面や帳票をそれぞれの立場で書き込めます。協力会社が入れ替わった場合も、データが引き継がれるため、情報の途切れがありません。
三菱電機プラント建設統括部では、現場の時間外労働の多さや紙資料の多さに悩んでいました。特に竣工時の資料電子化作業や、安全パトロール資料の印刷作業は大きな負担でした。
よく使う帳票を50種類ほどに絞り、一気に電子化したことで、現場全体の効率が飛躍的に上がりました。各拠点にキーパーソンを立てて若手中心に展開し、最初は紙フォーマットをそのまま移行、慣れてから最適化するステップも成功要因です。
設備工事DXで得られたデータは、保全部門でも大きな武器になります。点検や保全の記録をクラウドで一元管理し、異常時には素早く対応できる体制が築けます。
従来バラバラに管理されていた点検記録や交換部品情報をまとめて管理することで、保全計画や更新提案が容易になります。点検結果もそのまま報告書や次の保全計画に反映され、手間が大きく減少します。
最初は振動や温度、電流などのシンプルなセンサー監視から始めるのが現実的です。異常値が検知された場合、即座にアラートが届き、点検や修理計画に反映されます。これにより、重大な故障の未然防止が可能となります。
事後対応中心だった体制から、計画的な保全・予知保全へとシフトできます。若手がデータやマニュアルを見ながら対応し、ベテランは遠隔で指示や改善活動に専念できるので、人材育成にもつながります。
最DXを進めるうえで大切なのは、いきなりすべてを変えようとせず、小さく始めて現場に浸透させることです。まずは現状の課題を洗い出し、「何にどれだけ時間がかかっているのか」を可視化します。そのうえで目標(KPI)を明確に設定し、最適なツールを選んで導入しましょう。現場の抵抗が予想される場合は、紙のやり方と併用しながら、徐々にデジタル化を進める方法も有効です。
組織体制では、各現場にデジタル推進役となるキーパーソンを置き、若手を中心に展開することで全社的な巻き込みがしやすくなります。さらに、国や自治体の補助金を活用すれば、初期コストも抑えられます。
設備工事現場のDX化を、まずは現場の使いやすさから実現したいと考えている方は、eYACHOの導入を検討してみてはいかがでしょうか。紙の野帳と同じ感覚で使いながら、図面や帳票、写真の管理、遠隔コミュニケーションまで、すべてを1台のタブレットで完結できます。現場の業務改善や働き方改革に、ぜひeYACHOを活用してみてください。
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