社会インフラを支える
プラント建設部門
eYACHOで業務DXを推進
三菱電機株式会社 様
総合電機メーカー・三菱電機株式会社の事業領域は広範にわたる。身近なところでは家庭内のエアコンや冷蔵庫、街中ではエレベーターやエスカレーター、
ジェットタオル、駅のホームドア。社会を支える交通プラント・上下水道プラント・ビル設備や、発電プラントといったエネルギー分野、そして宇宙にも及ぶ。中でも社会インフラの建設工事を担当するプラント建設統括部では、建設現場向けアプリ「eYACHO
for Business」(以下eYACHO)を導入して1年になる。eYACHOで
進めるDXについてお話を伺う。
課題 |
|
---|---|
導入の 決め手 |
|
効果 |
|
社会インフラ設備の施工設計から
現地施工まで担う技術部門
社内でいち早くeYACHOを導入した「プラント建設統括部」は、公共・交通分野といった社会インフラを支えるプラントシステムの施工設計・現地施工管理を担う部門だ。三菱電機の製品やシステムを現地での配線工事などにより
有機的に繋ぎ合わせ、水処理・河川管理設備、ビル設備、道路交通設備、鉄道交通設備などがプラントとして稼働できるように現地で完成させる。北海道
から九州まで全国6箇所の拠点があり、全国で年間400件程度のプラント建設工事に対応する。当該部門の担当業務は
現地建設工事のDX推進による
業務効率化が急務
プラント建設統括部でのeYACHO導入の経緯について、毛塚氏は「時間外労働に対する罰則つき上限規制の建設業への適用期限が迫る中、現場で施工管理
業務に当たる現場代理人の時間外労働が社内他部署と比べて多いことから、現場の施工管理業務のDX推進による生産性向上(労働時間の縮減)は、至近の
経営課題であり、重要なプロジェクトだ」という。
まずは、ペーパーレス化の推進やwithコロナを見据え「利用場所を選ばない」タブレットの活用が適切であろうと判断した。そして導入するアプリには以下の
ような条件を満たすものを求めた。
なぜeYACHOを選んだか?
◉資料作成の効率化に有用かつiPad活用への心理的なハードルを下げられる
現場で日々作成する資料は、同じ内容の入力を繰り返す(例えば工事件名など)場面が多い。それらが予め入力された状態のフォーマットをeYACHO内で「既定用紙」に設定しておけば、毎日同じフォーマットを使用し、簡単に書類が作成できる。カレンダーをタップして日付入力、選択肢から選んでタップして項目入力
など、最も効率よく入力できる方法をフォーマットに設定できる。こうしたフォーマットへの入力を毎日積み重ねることで、実際に効率よく資料が作成できることを実感してもらい、作業員のiPad活用が増え、浸透が加速する。
*既定用紙設定・・決まった体裁でフォーマットを開く設定。毎日同じフォーマットを使用する場合に設定しておく。
◉フォーマットが自由に設定・変更できる
まずは紙で運用していたフォーマットをそのままの形式で取り入れ、ペーパーライクにeYACHOの中で使ってみる。慣れてきたらユーザー側でフレキシブルに
フォームを編集できる。これらの操作が他と比較しても非常に容易で優位性がある。
◉テキストの入力方法が複数あり、自由に選べる
全国の現場での相談役として
「推進チーム」を設置
プラント建設統括部の各部門は北海道から九州まで各支社に点在しており、各支社が担当する工事現場を含めると範囲が広く人数も多い。iPad並びにeYACHOの導入に際しては、本社の計画部メンバーで構成された推進チームだけできめ細かく対応するのが難しいため、DX化を強力に推し進め浸透させる仕組みとして、
iPad・eYACHOの活用を中心となって推進する「iPad展開キーパーソン」を各支社に1名ずつ配置した。
さらに、計画部の推進チームからも2-3名を1組として担当支社を割り当て、各支社の展開キーパーソンと共に連携して導入をサポートする体制も構築した。各地の現場に導入する際には現地での操作説明会を実施し、導入段階での手厚いサポートを実施した。導入後も、複数名でカバーすることにより、現場からの質問や
相談に迅速に対応できるようにした。(毛塚氏)
導入時の心理的ハードルを
下げるために
北爪氏は「工事部では、現場は全て紙だった。それを電子化するにあたり、現場で実際にeYACHOを使用する協力会社の作業者の年齢層が高いこともあり“これまで紙でうまく回っているのだからそのままで支障はない・今からiPadを使いこなすなんて難しい”という心理的なハードルがあった。導入時は、この“とっかかりのハードル”を下げることに集中した」という。導入時には、各支社・現場に推進チームメンバーまたは展開キーパーソンが出向き、活用法や注意事項を説明する
だけでなく、「ここをタップするだけですよ、ラジオボタンを押すだけで入力できますよ。紙と同じで、しかも便利になりますよ」と、具体的にどのように使うかを
丁寧にサポートした。
「eYACHOの"見てすぐわかるユーザーインターフェース"は受け入れられやすかった。画面の上下に見る・書く・選ぶと書いてあり、シンプルでごちゃごちゃして
ない。これを押したらどういうことが起こるかがわかりやすく、現場のベテラン世代やiPad初心者でも受け入れられやすいと感じた」という。mazecは複数の入力方法(フリック、キーボード、ペン)から自分に合ったものを選んで使用できるが、iPadの活用が浸透してくるにつれて、導入当初は敢えて説明しなかった「音声入力がいいよ」という声も聞かれるようになってきたと言う。
展開キーパーソンが若手である点も有利に働いた。「若いんだから、これわかるでしょ?ちょっと教えてよ」と気軽に相談してもらえたという。"若い(デジタル
ネイティブ)世代は知ってて当たり前だし、逆に自分の世代が知らないのも当たり前"と、聞きやすい雰囲気作りに一役買っていると言えるだろう。逆に若手から
すれば、自分の親世代以上に年の離れたベテラン世代が多い工事現場において、iPadやeYACHOがコミュニケーションのきっかけになり、業務全般において
異なる世代間のコミュニケーションの円滑化、活性化に繋がった。
eYACHOの活用シーンとその効果
部内で使用するフォーマットが約600種類ある中で、特に使用頻度の高いもの約50種のフォーマットを推進チームで一括してeYACHOに移行し、現場の施工
管理業務での活用を勧めてきた。特に活用されている場面と、eYACHO導入による効果について北爪氏に聞く。
⚫︎資料の電子化:作業指示書・KY
現場で最も利用頻度の高いフォーマットだ。BoxとeYACHOを連携し、過去の不具合情報を検索して閲覧できるようにした。蓄積したノウハウを活用し、
継承することができる。
【効果】
作業時間の削減
工事期間中毎日紙で作成する作業指示書は、竣工時に電子化して保存する必要があり、その作業に2時間程度かかっていた。
↓
そもそも電子化されているため作業時間はゼロになった
⚫︎資料の電子化:現場パトロール 以前は紙だったが、eYACHO上で試行を始めている
【効果】
完全ペーパーレス化・準備にかかる時間の削減
◉管理部門による大規模安全パトロール時の工事の概要説明・安全衛生説明資料
50枚×15部程度→ゼロ
◉月に一度の安全衛生協議会での資料
20枚程度×作業者全員分→ゼロ
⚫︎シェア機能の活用:打合せ・会議
図形や線が使いやすいため、図面や要領書などの各種書類の内容を、紙ではなくeYACHOのシェア機能を使って実施することが可能になった。デザインレビューでの活用のほかに、普段の現場の会議、スタッフ部門の会議での資料の共有にも活用場面が広がっている。それぞれが自分のタブレットで資料を参照して
いても、eYACHOならシェアされた資料の「今ここの話をしている」と間違いなく伝えることができるため、参加者が正しく同じ箇所を見て議論できる。
【効果】
◉資料準備の手間の削減
◉打ち合わせの質の向上
◉議事録の作成が不要に
◉印刷コストの削減
(年間800万円*試算)
会議の大小に関わらず、eYACHOのシェア機能が仕事の仕方を根本的に
変えている。前後の手間が削減できるため、より「業務そのもの」に集中し、
時間を割けるようになる。
また、現場での活用定着が進むに従い、現場から「このフォーマットはeYACHO化できるんじゃないか」という声が上がるケースが増え、導入から約1年の間に
さらに30件程度のフォーマットのeYACHO化が進んだ。
今後の定着・流れを
加速するために
今後のeYACHO活用拡大について、橋口氏は次のような点を挙げた。
◉資料が紙である前提の現場業務フローや個人情報の扱いなども含めた規定面の見直しを進め、電子化を加速させ、さらに活用を進めたい
◉iPadの活用が進めば、よりiPad・eYACHOに寄せたさらに使いやすいフォーマットへ見直したい
◉業務内容によってeYACHOの使用頻度にはばらつきがあるので、将来的には社内のチェックシートなどへも拡大していきたい
施工管理業務を担当する社員を支援する立場の橋口氏は、それまで現場の施工管理業務に携わったことはなかった。eYACHOによるDX推進プロジェクトに
おいて「どんな経緯でこのフォーマットができたのか・この項目があるのかを直接現場で聞くことができ、理解が深まり、大変良い経験になった」という。
今後の課題として挙げたよりiPad・eYACHOに寄せたフォーマットへの展開」も、現場を深く理解した上で進めることで、ユーザーが使いやすいものになる
だろう。
「導入当初、iPad用のペンの導入を提案した一人だったので、導入時に『使いやすい。iPadを使う上で便利』と言ってくれた人がいたのは嬉しかったエピソードだ」という。「『自分に合った入力方法で使ってください』と言えるのもeYACHOの良いところ。これからも、ユーザーに寄り添った展開方法やサポートの体制を
整えることが重要だ」
部門を超えた変革が波及
各支社に配置されたiPad展開キーパーソンと計画部の推進チームでは、四半期毎に情報交換の場を設け、不明点や課題の解決・各支社における良好事例の
共有を通して、全体のレベル向上を図っている。現在プラント建設統括部が手掛ける現場のうちeYACHOを使用しているのは約3割。もちろん今後全現場での
使用を目指している」(毛塚氏)
また、プラント建設統括部以外にも、社内の別部門である神戸製作所および電力プラント建設センター(電力会社向けの発電所、変電所などのプラント設備工事を担当する工事部門)とは、経験の相互転用が可能と考え、密に情報を共有する場を設け、良好事例を紹介するなどしている。
プラント建設統括部から始まった業務DXは、既に他の部門へも繋がりつつある。綿密な計画のもと、若い力を中心に据えてよりよい方向への変革を力強く推進
する姿は、企業の根底にある"文化"ともいえる「Changes for the Better」と重なって見えた。
MetaMoJiは、プラント建設統括部から始まる三菱電機株式会社様の業務DXを、これからもeYACHOをはじめとする技術力で強力にサポートしてまいります。
(2023年3月取材)