デジタルツールを生かして“土建一体”の意識共有を促進
鉄建建設株式会社 様
鉄建建設の幕張新駅作業所(千葉市美浜区)では、2020年5月の着工以来、MetaMoJiのデジタル野帳「eYACHO for Business」を主に引き継ぎや打ち合わせ等の業務に活用している。土木と建築の両分野でどのように意識や情報を共有しているのか。DXおよびi-Con推進担当者のほか、作業所における土木、建築の所長、担当者に話を伺った。
鉄建建設は、創業以来、鉄道関係の工事を得意としており、土木と建築の両面でプロジェクトに取り組む、いわゆる"土建一体"の体制を確立させ ている。現在取り組んでいる「京葉線新習志野・海浜幕張間新駅設置他」建設工事は、JR東日本から受注し、JR京葉線の新習志野駅と海浜幕張駅の中間に新駅を設置するというもの。この現場でも土木、建築の両分野それぞれ施工を進行中だ。同社がデジタル野帳「eYACHO for Business」(以下、eYACHO)を導入したのは、2019年5月のこと。
導入・普及推進の中心となって動いた土木本部 i-Con推進部 課長 情報化推進グループリーダーの園田宏昭氏は、デジタル技術に詳しい社員に直接働きかけたり、新入社員の研修に組み込んだり、と利用者の輪を少しずつ広げていった。「打ち合わせ用のテンプレートをこちらで作成するなどして、取り入れやすいようにお膳立てすることを心掛けました」(園田氏)。
DX推進室 DX企画部 課長の髙須賀伸生氏は、「当社における"土建一体"の現場では工種が多く、昼夜勤の引き継ぎもあります。eYACHOを取り入れることで土木と建築の間の情報共有が効率化され、意思疎通が以前より密接に行えるようになっている」と話す。
引き継ぎや打ち合わせがタブレットの中で行える
このような社内での取り組みもあり、幕張新駅の作業所でも2020年5月の設置当初からeYACHOが日常業務に取り入れられた。現場代理人であり、土木分野の幕張新駅作業所 所長の丸山哲則氏は「私もデジタル野帳を現場で利用するのは初めてでした。まずは毎日の業務を通して慣れていこうと考えました」と語る。 この現場では、翌日の作業内容について「作業打合せ表・マネジメントシステム日誌」(以下、MS日誌)という書式を用いて、社員、作業員が情報共有している。 従来は紙で行っていたものをデジタル化したテンプレートに落とし込み、eYACHOで処理できるようにしたのだ。
事務所が設けられたビルと施工現場は約1.7kmの距離がある。会議や打ち合わせのたびに頻繁に往復するのを 「避けるため、現場と事務所をweb会議ツールでつないだ。資料はお互いの手元のタブレットのeYACHOを通して確認すれば、往復の負担がゼロになる。土木工事の管理に携わる社員の堀洋輔氏は、「タブレットさえあればどこでもMS日誌の作成ができるのはありがたいですね」と言う。eYACHOではタブレットやスマートフォンの画面から直接ペンで文字や記号などをメモできる機能がある。内容を確認したらその場でサインもできるので、書類を回覧したり、全員が打ち合わせのために集まる必要もなくなった。
「昼夜勤の引き継ぎでは、従来、紙のノートに連絡事項を書き込んでいたのですが、eYACHOを使うようになってからは現場で気づいたことはその場でタブレットからメモを書き込んでいます。注意箇所は写真や動画で記録して、直接、引き継ぎノートに貼り付けられるようになったので、伝達できる情報量が格段に増えました」(堀氏)。
事務所に持ち帰る作業が減り、自分の時間を効率よく使える
一方、建築部門である幕張新駅建築作業所 所長の芦村武夫氏は、施工検討会議で重宝しているという。「施工内容を説明するとき、図面にその場で印を付けたり、線を引いたり。打ち合わせ時に決まったことをメモして共有のデータに残せるので、思い違いなども起きにくくなりました」(芦村氏)。
従来は、多くの設計図書を現場に持ち込んで施工箇所の確認などを行っていたが、eYACHOであれば、そうした資料はインターネット上のクラウドに収納して、必要なものだけ呼び出すこともできる。「詳細なおさまりを職長に説明するとき、事務所で簡単な説明用の図を作成して現場に送ってもらうということもありました」と芦村氏。
「現場から事務所に戻ってからの帳票類の作業時間が大幅に減ったように思います。その分、他の業務に時間を割くことができるようになりました」(亀田氏)。
コロナ禍でも密な打ち合わせが可能、施工品質の向上にもつながる
こうしてデジタル化を進めることで、建築作業所の社員である亀田祐一氏も「圧倒的に机の上の書類が減りました」と笑う。書類を探す手間が省け、事務作業もスムーズになったという。
この現場では、土木と建築間の工程打ち合わせなども毎週実施している。従来、"土建一体"の現場では、発注者の窓口が別々で、作業内容も異なることから、互いの情報を共有するのもひと苦労だったという。しかし、eYACHOを導入してからは「時間と場所に縛られないので、コミュニケーションもスムーズになりました」(丸山氏)、「お互いの進捗が影響しあうので、連携が重要。コロナ禍でも密に打ち合わせできるようになったのは施工品質の向上にも大きく役立つはず」(芦村氏)と両所長は口をそろえてその効果を認めている。
鉄建建設では全国の作業所にタブレット端末を支給しているが、こうした成果もあり、デジタルトランスフォーメーションを推進すべく全社員へのスマートフォンの配布を決めた。
「eYACHOの使い勝手に慣れてしまうと、もう昔のような紙ベースには戻りたくありませんね(笑)。多くの作業所で採用してほしいです」堀氏のこのような願いは、実現に向けて進み始めた。
【お話を伺った鉄建建設のみなさん】
鉄建建設株式会社
東京鉄道支店
幕張新駅作業所
所長
丸山 哲則 氏
鉄建建設株式会社
東京鉄道支店
幕張新駅建築作業所
所長
芦村 武夫 氏
鉄建建設株式会社
東京鉄道支店
幕張新駅作業所
工事管理者
堀 洋輔 氏
鉄建建設株式会社
東京鉄道支店
幕張新駅建築作業所
亀田 祐一 氏
鉄建建設株式会社
DX推進室
DX企画部 課長
髙須賀 伸生 氏
鉄建建設株式会社
土木本部
i-Con推進部 課長
園田 宏昭 氏
※2021年7月取材。画面キャプチャ、機能、肩書は当時の情報にもとづきます。