建築にIT知識が要求される時代に 最初の一歩にeYACHO
大和ハウス工業株式会社 様
大和ハウス工業株式会社では、タブレットとeYACHO for Business(以下eYACHO)を導入し、建築系工事部門のDXを強力に推し進めている。
大和ハウス工業は、ライフサイエンスに関わる最先端企業を集積・産業クラスターを形成し川崎殿町地域の都市再生に貢献する民間都市再生事業計画「(仮称)殿町プロジェクトⅣ」の拠点となる研究施設を建築中である。
現場での利用事例、利用促進のための取り組み、グループの成長戦略におけるeYACHOの役割について、建築系施工推進部長 吉岡憲一 執行役員、技術統括本部 副本部長 菊池雅明 執行役員、建設DX推進部
山川秀和氏、関東工事部 清水慶典氏、東京工事部(流通)田中信宇氏、東京工事部(建築)文元常宝氏、膳敦宏氏にお話を伺う。
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残業時間削減のためにアナログ作業なくす
施工管理の膳敦宏氏が最初に取り組んだのは日々の作業間連絡調整だ。毎日、配置計画図にマーカーで書いて運ぶ作業が繰り返し発生していたが、eYACHO導入後は図面をPDF化してeYACHOに取り込み必要事項を書き込むなど準備は簡素化、その画面をサイネージに表示。すぐに朝礼が始められるので、朝の早出も必要なくなり、残業時間の削減となった。
日々の巡視作業では、以前は現場所長が午前・午後の巡視内容を夕方紙媒体で回覧して、翌日是正していたが、eYACHO導入後は写真を閲覧して即日是正できるようになった。各種点検表もペーパーレスになり、iPhoneやiPadで点検している。職長会パトロールでも見てパッとわかる書式を作成し、情報が伝わりやすくなった。一部の職長もiPad(eYACHO)を用いてKY活動で使用している。今後職長を含めて利用が加速すれば、さらにペーパーレス化・効率化が進むだろう。
「eYACHO導入当初は多少の戸惑いはあったが、スマホ慣れしている世代が多いこともありすぐに慣れた。次は工事写真や施工写真等、デジカメでやっているものをeYACHOに移行する予定だ。新しいことをするためには準備に多少時間がかかるが、さらに新しいことにもチャレンジして行きたい」
同じ画面を・同じタイミングで eYACHOの中で正確に会話できる
現場所長の文元氏は「eYACHOで新人からベテランまで全員が同じ図面を見ることができ、図面変更も同じタイミングで周知・共有できる環境が整い、スタッフ同士の会話・コミュニケーションが増えた。施工店から製作図が出るとPDFにして取り込み、設計との確認など、図面チェックも便利だ。意匠・構造・設備設計を含めて関係者間で図面を共有できるため、離れていても、同じ図面・同じ写真をリアルタイムで見ることができ、正確に会話でき、確認しやすくなった」
また、非常に簡単なテンプレートで簡易な勤怠管理としても使用しており、簡単だからこそ書き込みも習慣化しやすいという。「図面・写真・作業間調整から簡易な勤怠管理まで、eYACHOというひとつのツールの中で情報が一元管理できるようになったことは現場を管理する立場として非常に大きな意味がある。現在は安全計画・施工に使っているが、関連書類をどこまでまとめられるかで応用の範囲が広がると考えている。また、チャット機能の通知設定が細かくできればもっと便利に使えるだろう」
大和ハウス工業がeYACHOを導入し始めた早い時期からeYACHOを積極的に使用しているひとり、横浜流通工事課の清水氏は、社内でのeYACHOの利用が進む中で、導入の当初悩みながら蓄積したノウハウの提供や、先進の使い方を広める中心的人物だ。
絵を描くように指示書が書ける
eYACHO導入前は、現場監督は画板のようなものを持って移動し、各部門の進捗は電話などで確認して集めていく必要があった。様々な情報がひとつに集まり、変更があったときにそれを一度に周知することは紙の帳票ではできなかったがeYACHOがこれを解決した。情報が一同に集まるようになると「何ができていて、できていないか」が現場所長の目線でチェックでき、フォローできるようになった。
eYACHOの注目すべき点は建築知識が浅くても使えるソリューションであることだ。図面を扱うソリューションにはいろいろあるが、若い世代は特化してやっていない。しかしeYACHOなら、建築知識が十分とは言えないスタッフでも絵を描くように要点を押さえた指示書が書ける。これが従来の現場管理から変わったところだと思う。
紙で印刷する行為は、工事期間が30日あれば30回繰り返さなくてはならなかった。それがデジタルならeYACHOの中でコピーすれば使える。以前は適当に書いていた重機なども、実際の縮尺で重機を描いておけば繰り返し使える。
描くためのベースは必要だが、取り入れるのも容易だ。DX化はeYACHOが難しいのではなく、建築に関わる部分が難しいのであって、そこをフォローすれば使える。年代による使いこなしの差はあるが、日頃からデジタルを使い慣れた強い若い世代はベテランのデジタルの悩みごとをフォローし、
ベテランは現場知識を伝え、デジタルに置き換えてもらうことで現場が円満になっているように感じる。
「eYACHOは能力的に非常に高いもので、我々がどのように使うかが試されているところだと思う。eYACHOに実際に使用する我々の知識が蓄積され、進化を促すことができるようになれば、現場のスタッフにもさらにわかりやすいものになると思う」
と言う清水氏は、施工検討会や進捗写真報告、監査的な書類作成などにもeYACHOを使用している。我々の知識が蓄積されeYACHOのさらなる進化を促すことができれば、さらに現場のスタッフにわかりやすいものになるだろう。建設業の将来性を感じて入社して来た若い世代の未来を築くためにも、DX化をどんどん進めていくことが我々の使命だ。
東京流通工事の田中氏も、早い時期からeYACHOを積極的に使用してきたメンバーのひとりだ。着工前の現場の準備や現場のサポートなどでeYACHOの積極利用を促している。
デジタル化の最初の一歩に最適なハードルの低さ
コロナ禍により、遠隔で現場管理と可視化が必要な状況となり、職長へのタブレット(eYACHO)の貸与を進めてきた。最初は世代が違うこともあり難しいと感じる人も多かったが、eYACHOは野帳が変わっただけで、スマートフォンを使っていれば概ね大丈夫だった。
新規教育の時間を取ったり、建築現場では午前と午後にある休憩時間なども使うなどしたが、自然に広がっていきあまり苦労した感覚はないと言う。導入が進んだ結果、搬出入状況や現場の進捗管理、安全・工程・品質上必要な情報などがタイムリーに職長を含め全員で共有できるようになった。
また今後、BIMや工程自動管理などの様々なITツールを利用する必要性が高まる中で、eYACHOのハードルの低さは最初の導入に最適だ。簡単で使いやすいeYACHOが入り口なら次に進むきっかけになる。
内装の進捗管理やコンクリートの打設管理など、現場独自の優れた書式も多数出来ており、今後も定期的にDX推進部と情報を共有し、様々な改善・改革を進めていきたい。
続いて、eYACHOをはじめとするDXツールの利用を促し現場運営の効率化の促進を図るための取り組みについて、本社 建設DX推進部で建築系部門全体に対するDX企画業務を担う山川氏にお話を伺う。
推進リーダー配置しDX化に弾みを
建築系工事におけるペーパーレス化と業務削減を目的にDXへの取組を開始するにあたり、eYACHOは関東のいくつかの現場で既に利用の実績があった。多様なツールの中で全社への導入の決め手となったのは、手書きであることや、現場で自由に帳票を使える点などへの評価が高かったことだという。
デジタルに対して抵抗感があることを危惧していたが、爆発的に利用者が増え、現在では約2000クライアントを導入して業務に活用し、当初の目的であったペーパーレスについては印刷費用5割削減、それに伴うCO2削減に繋がり、業務削減については1日あたり最大で約110分の業務時間削減といった結果に繋がる部門もあった。
2022年10月、eYACHOを含むDXを促進させるために「建築系施工DXリーダー」を全国9ブロックに27名配置した。先進例である東京や横浜を中心に帳票などを全国標準にしていく動きを加速させていく。
今後はeYACHOの利用を設計・設備・構造・工場などの部門に拡大すると共に、将来的には工事日報・KY安全指示書・出面情報などを自動集計するシステム連携に繋げていきたい。
最後に、経営的視点から、eYACHOをはじめとするDXの意義について、建築系施工推進部長 吉岡憲一 執行役員、技術統括本部 副本部長 菊池雅明 執行役員にお話を伺う。
グループの成長支えるDX
大和ハウスグループの持続的成長モデル実現のための5ヵ年計画「第7次中期経営計画」において、経営指針を支える重点テーマのひとつである「デジタルトランスフォーメーション」は全体を支える位置づけとして描かれている。
現在は社会環境が厳しくなり、現場を見なくてはならないのに、エビデンスを残す・報告するための書類が増えている。書類を作る作業を減らすことが省略化の要であり、eYACHOの全社導入後劇的な変化を感じている。
まずは第7次中期経営計画で掲げた「2026年に3割以上の仕事を削減する」という目標をクリアし、その先に分析活用に繋がるデータを蓄積するという視点でさらにDX推進を進めたい。
技術力が会社を支える。技術を持ったスタッフは取り合いになっている状況だ。様々なソリューションを使ってひとりの人が何人分の業務をこなせるようになるかが大切だ。デジタルソリューションにより3Kと呼ばれた時代から建設業界も変わりつつある。効率よく業務をこなすだけでなく、 夢のある建設という仕事を楽しいと感じつつ取り組む従業員が増え、グループはもちろん建設業が一体となって盛り上がることを期待している。
※2022年10月取材。画面キャプチャ、機能、肩書は当時の情報にもとづきます。