ここまで述べた考え方を建設現場で具体的な形にしているのが、施工管理アプリ「eYACHO」の安全AIソリューションです。ここからは主語を明確にして、eYACHOが提供する内容として紹介します。施工管理アプリ「eYACHO」は、2015年に大林組と共同開発され、ゼネコンでの利用シェアはNo.1(19%)です(※3)。
eYACHOの安全AIソリューションは、KY活動(危険予知活動)でのリスク見落としを支援するものです。作業内容を入力したり、重機や作業場所の写真をアップロードしたりすると、過去の建設業労災事例をもとに、その作業に潜むリスクと対策をAIが提案します。参照する根拠は、21種類の安全関連法令と31種類の通達・ガイドラインです。作業員の確認の抜けが起こりがちな作業についても、AIが潜在リスクを示し、全員で共有できる点が特長です。
この安全AIソリューションは、大林組と共同開発され、独立行政法人
労働安全衛生総合研究所との共同研究で得た知見を反映しています。仕組みも進化しており、あらかじめ用意した知識から引き当てる知識型から、過去の災害事例・マニュアル・法令などをもとに、AIが作業内容や現場状況に応じたリスクと対策を提案する生成型へと変更済みです。自由に入力するとAIが参照情報を自動で選ぶ自動モードと、ユーザー自身が災害事例・マニュアル・法令を選んで生成するインタラクティブモードの2モードを備えます。また、公開データと自社の労災報告などの自社データを統合して利用できるため、一般的な事例だけでなく、その企業で再発しやすいパターンにも対応しやすくなっています。なお、安全AIソリューションはeYACHOのスタンダード版以上が対象です。
実際に、大林組や横河ブリッジの現場では、この安全AIソリューションを活用したKY活動が進められています。過去の事故という不具合データからパターンを引き出し、次の現場での再発を防ぐという流れが、日々の安全管理に組み込まれています。
パターン分析がこうして機能する前提には、そもそも過去の記録がデータとして蓄積されていることがあります。この点でもeYACHOには特徴があります。建設現場ではPCが使えないことが多く、従来は紙に書いた内容を事務所に戻ってからPCに入力し直していました。eYACHOでは、現場でタブレットに手書き入力した内容がそのまま電子帳票になるため、記録が生まれた時点でデジタルデータになります。手書き入力には建設mazec(手書き入力システム)を使えば、建設・土木・設備の専門用語も効率よく入力できます。さらに、手書き文字をテキスト化しておけば、過去のノートや帳票を横断して検索することができ、似た事象が過去になかったかを後から探しやすくなります。日々の帳票が、そのまま再発防止のための検索できる資産として積み上がっていくという考え方です。