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ベテランの暗黙知をデジタルで残す!
持続的な技術継承の仕組みをつくる方法

建設現場では、ベテランが長年かけて身につけた段取りや勘どころが、本人の頭の中だけに残りがちです。こうした言葉になりにくい知識を「暗黙知」と呼びます。マニュアルに書き起こせる「形式知」とは対照的に、暗黙知は経験を通じてしか伝わりにくく、技術継承を難しくする最大の要因になっています。

技術継承をテーマにした記事の多くは、継承の「進め方」や「ステップ」を説明します。本稿はあえて切り口を変え、「デジタルツールをどう活用すれば継承が回り出すのか」に絞って解説します。結論を先に言えば、ツール選びで見るべきは「ベテランが無理なく使えるか」「日常業務の中で暗黙知が自然に蓄えられるか」「離れていても教え合えるか」の3点です。建設現場の実例と公的データをもとに、具体的に掘り下げます。

ベテランの暗黙知をデジタルで残す!持続的な技術継承の仕組みをつくる方法

なぜ今、技術継承は「待ったなし」なのか

まず、技術継承が急務である背景を数字で確認します。建設業の技能者のうち、60歳以上が全体の約25パーセントを占める一方、29歳以下は約12パーセントにとどまります(※1)。10年後にはこの60歳以上の層が大量に引退すると見込まれ、ベテランが持つノウハウが組織から失われる「継承の断絶」が懸念されています。

人手の余裕がない中で、長時間労働も許されません。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間・年360時間が上限となりました(※2)。つまり「ベテランが残業して若手につきっきりで教える」という従来型の継承は、時間の面でも成り立たなくなっています。

ここに技術継承の難しさがあります。限られた人数と時間の中で、生産性を上げながら同時に技術を引き継がなければなりません。マニュアルを整備するだけでは、言葉にできない暗黙知までは残せず、属人化は解消されません。この二つの課題を両立させる現実的な手段が、デジタルツールの活用です。

技術継承が進まない本当の理由は「ツールが使われない」こと

技術継承のためにツールを導入したのに、現場で使われず形骸化する。これは珍しい話ではありません。原因の多くは、ツールそのものが「ベテランにとって使いにくい」ことにあります。

ここに、見落とされがちな第一の視点があります。技術継承の主役はベテランです。その本人がツールを使えなければ、どれだけ立派な継承の仕組みを設計しても、入口で止まってしまいます。継承の方法を考える前に、「ベテランが抵抗なく使えるか」を最優先で確かめる必要があります。

キーボード入力やパソコン操作に不慣れなベテランは少なくありません。だからこそ、紙の野帳やメモと同じ感覚で、ペンで手書きできることが重要になります。たとえば施工管理アプリ「eYACHO」は、もともと紙の野帳をそのままデジタルに置き換える発想で、大林組と共同開発されたツールです(※4)。手書きの書き味にこだわり、丸や矢印、文字をペン1本で書き込めるため、ITが苦手な職人でも普段どおりの感覚で使えます。

さらに、現場特有の用語を効率よく入力できるかも定着を左右します。eYACHOには建築・土木・設備などの専門用語を約4万語収録した手書き入力システム「建設mazec」が搭載されており、手書きした文字を建設用語に高い精度で変換します(※4)。「自分の言葉でそのまま書ける」という体験が、ベテランの心理的なハードルを下げます。
使いやすさは、現場の実態にも表れています。建設現場ではパソコンを開けない場面が多く、スマートフォンやタブレットで完結できることが欠かせません。eYACHOはスマートデバイスを使うユーザーの利用シェアでもNo.1となっており(※3)、PCが使えない現場での実運用に耐えてきた実績があります。ツールを選ぶ第一基準は、機能の多さではありません。「現場で実際に使う人、とりわけベテランが、明日から無理なく使えるか」。ここを外すと、継承以前に運用そのものが続きません。

暗黙知は「特別な継承の時間」ではなく「日常の記録」から残す

技術継承というと、ベテランにインタビューして知識を文書化する、といった「継承のための特別な作業」を思い浮かべがちです。しかし、そのための時間を別途確保するのは、人手不足の現場では現実的ではありません。
そこで第二の視点です。暗黙知は、日報・帳票・KY活動(危険予知活動)といった「毎日の業務の記録」から自然に蓄えていくのが現実的です。継承のために特別な時間を取るのではなく、日常業務そのものを形式知の蓄積に変える発想です。

このとき効くのが、既存の帳票をそのまま電子化できる機能です。eYACHOは、会社で長年使ってきたExcelや紙の帳票を取り込み、見た目そのままでデジタル帳票に変換できます。画像認識AIによって入力欄を自動生成することもできるため、ゼロからフォーマットを作り直す必要がありません。業務のやり方を変えずに済むので、ベテランは違和感なく記録を残せます。

加えてeYACHOの「スマートテンプレート」を使うと、一度入力した情報を関連する帳票へ転記できます。工事名・日付・作業内容などを入力すれば、日報から週報・月報へと値を反映できます。日々の記録が積み上がるほど、その現場での段取りや判断の履歴が「誰が・いつ・何を」とともにデータとして残っていきます。

こうした「日常の記録」がそのまま継承の資産になる場面は、引き継ぎの現場でも見られます。たとえば夜勤と昼勤の作業者が入れ替わる現場では、eYACHOを使えば引継ノートをリアルタイムに共有し、写真や図面への書き込みで夜間作業の進捗を視覚的に残せます。誰がいつ何を書いたかが履歴に残るため、口頭だけでは抜け落ちがちな申し送りも正確に伝わります。一日の終わりの記録が、翌朝の作業者にとっての貴重なナレッジになります。

紙の野帳には、書いた本人にしか分からない、紛失すれば情報が消えてしまうという弱点がありました。記録をデジタルに変えるだけで、過去のノートを横断して検索でき、退職や異動があっても知識が組織に残ります。「特別な継承イベント」を待つのではなく、日常の記録が静かに形式知へ変わっていく。これが、無理なく続く継承の土台になります。

ベテランの「判断」をデジタルとAIに移す

ベテランの「判断」をデジタルとAIに移す

暗黙知の中でも、もっとも引き継ぎが難しいのが「状況に応じた判断力」です。どこに危険が潜むか、どの手順で進めるべきか、ベテランは経験から瞬時に判断します。しかしその思考は言葉になりにくく、若手にはなかなか伝わりません。

ここで第三の視点が活きます。ベテランが頭の中で行ってきたリスクの判断を、AIに肩代わりさせて経験差を埋めるという考え方です。特に安全管理の領域は、判断の差が事故に直結するため、デジタルとAIの支援効果が大きく出ます。

eYACHOの安全AIソリューションは、KY活動の見落としをAIが補う機能です。作業内容や現場の写真を入力すると、過去の労災事例や法令をもとに、潜在的なリスクと対策をAIが提示します。労働安全衛生法に関わる21法令・31ガイドラインに対応しており、若手の知見不足を補完します。経験の浅い監督でも、ベテランに近い水準でリスクを洗い出せるようになります。

安全パトロールの記録でも、判断の継承は進みます。eYACHOでは、現場で気づいた危険箇所を写真に撮り、その写真に直接、丸囲みや矢印、コメントを手書きして、そのまま是正指示として共有できます。ベテランが「ここが危ない」と感じた勘どころを、抽象的な言葉ではなく、写真と書き込みという具体的な形で残せるため、若手にも認識のズレなく伝わります。

注意したいのは、AIは判断を「肩代わり」するのであって「丸投げ」させるものではない点です。AIが提示したリスクを、最終的に人が確認し、現場の文脈に当てはめて使う。この運用を前提にすれば、AIはベテランの判断を写し取った「もう一人の経験者」として機能します。法改正が頻繁な安全分野で、最新の知見を踏まえたKY活動を全員が一定水準で行えるようになることは、属人化の解消に直結します。

「背中を見て覚える」を離れていても成立させる

建設の技術は、長く「見て覚える」もので継承されてきました。しかし現場が分散し、ベテラン一人が複数現場を掛け持ちする今、若手の隣に常駐して教えるのは困難です。

そこで第四の視点です。「背中を見て覚える」OJTを、リアルタイム共有と遠隔臨場で、離れていても・非同期でも成立させるという発想です。

eYACHOのShare機能は、同じノートや図面、帳票に複数人が同時に書き込めるリアルタイム共有の仕組みです。若手が書いた帳票にベテランがその場で赤入れする、同じ図面を見ながら指示を書き加える、といった使い方ができます。誰がいつ何を書いたかが履歴として残るため、後から見返して学ぶこともできます。当社導入事例の東日本高速道路(NEXCO東日本)では、Share機能とウェアラブルカメラを活用した遠隔での立会(遠隔臨場)を取り入れ、移動時間を約500時間から約240時間へと削減しています。移動が減った分、ベテランは複数の若手に目を配れるようになります。

さらに、eYACHOのビデオ通話機能「GEMBA Talk」を使えば、ベテランは事務所や別現場にいながら、若手の手元の図面・帳票を見て助言できます。実際に、当社の導入事例でも、阪神高速技術の現場ではGEMBA Talkを活用してリモートでの確認や若手育成に取り組んでいます。

知識の共有は、毎朝の朝礼でも進みます。eYACHOで作成した朝礼資料やKYシートを、現場のデジタルサイネージ(大画面表示)に映し、その場で書き込みながら全員に伝えられます。多くの作業員や協力会社が集まる場で、危険箇所や当日の段取りを一斉に共有できるため、ベテランの注意点が現場全体に行き渡ります。「常に同じ現場にいなければ教えられない」という前提は、もはや必須ではありません。同じ画面を共有し、必要なときに顔を合わせる。この仕組みがあれば、限られたベテランの知見を、より多くの若手へ届けられます。

蓄積したナレッジで、若手の立ち上がりを早める

技術継承の最終的なゴールは、暗黙知を残すこと自体ではなく、若手が早く一人前になることです。ここまで述べてきた「日常の記録」「AIによる判断支援」「遠隔OJT」は、いずれも若手の成長を支えるための土台でもあります。

蓄積された帳票テンプレートやナレッジは、経験の浅い監督にとって心強い手がかりになります。たとえばeYACHOは、多数の現場で磨かれた帳票テンプレートを備えており、ゼロから様式を考えなくても、業務ですぐに使えるものが用意されています。ベテランが積み上げてきた「型」を引き継ぐことで、若手は判断の基準を早く身につけられます。

教える側の負担を減らす工夫も、継承を持続させる鍵です。eYACHOでは、操作で分からないことがあれば、アプリ内のAIヘルプがその場で回答するため、ベテランが手を止めて一から教える場面を減らせます。教わる側が自走できるようになれば、限られたベテランの時間を、本当に伝えるべき勘どころの指導に振り向けられます。

こうした仕組みは、若手の定着にもつながります。早く戦力になれる手応えと、いつでも支援を受けられる安心感は、離職を防ぎ、人材育成を後押しします。技術継承とは、ベテランの知識を残すことと、若手を育てることの両輪で進むものです。

継承の仕組みを「定着」させる3つのポイント

ツールを選んでも、使われ続けなければ継承の仕組みにはなりません。第五の視点は、ツールは「入れて終わり」ではなく、使われ続ける定着設計まで含めて初めて継承の仕組みになる、というものです。最後に、定着のための実践的なポイントを3つ挙げます。

  • 1. 小さく始めて成功体験をつくる

    最初から全社・全機能で導入すると、現場が混乱して定着に失敗しがちです。まずは1〜2現場、日報やKYシートなど1つの業務から始めるのが現実的です。eYACHOは最小5ライセンスから契約でき、30日間の無料トライアルも用意されています。小さく試し、効果を確かめてから広げる進め方が、定着の近道です。

  • 2. 導入時の支援を活用する

    ベテランが操作でつまずくと、そこで継承の取り組みが止まります。操作講習会や、既存帳票をデジタル化するテンプレート作成支援などを活用し、立ち上がりの負担を下げることが重要です。eYACHOは全国の販売パートナーと協業しており、地方でも対面での導入支援を受けられます。eYACHOには書類作成そのものを代行するBPOサービスもあり、現場が記録に集中できる体制を整えられます。

  • 3. 効果を数字で可視化して社内に共有する

    取り組みを続けるには、現場と経営の双方が手応えを感じられることが欠かせません。たとえば当社の導入事例では、朝礼準備の時間が約2時間から10〜20分へ短縮された例もあります。こうした定量的な成果を月次で測り、社内に発信することで、「使うのが当たり前」という空気が育ちます。


技術継承を担う人材が、完了した現場から次の現場へ移ることで、ツールの使い方とともに継承のノウハウが伝播していきます。この流れが回り始めれば、継承は一過性の取り組みではなく、組織に根づいた仕組みになります。

まとめ

技術継承は、ベテランの暗黙知をいかにデジタルで残し、次世代へ渡すかにかかっています。本稿では、その鍵を「デジタルツールの活用」という切り口で整理しました。

要点は5つです。第1に、継承の方法より前に、ベテランが手書き感覚で無理なく使えるツールを選ぶこと。第2に、特別な継承の時間ではなく、日報や帳票という日常の記録から暗黙知を蓄えること。第3に、ベテランの判断を安全AIで補い、経験差を埋めること。第4に、リアルタイム共有と遠隔臨場で、離れていてもOJTを成立させること。第5に、小さく始めて支援を活用し、効果を可視化して定着させること。

人手と時間に余裕がない今だからこそ、ベテランの知識を確実に残す仕組みづくりが、企業の持続的な競争力を左右します。技術継承を「ツール活用」の視点で見直すことが、その第一歩になります。

建設現場の野帳をデジタル化したeYACHOでは、ベテランの暗黙知を残す機能や、ゼネコンを中心とした導入事例を多数公開しています。技術継承の仕組みづくりに関心のある方は、無料トライアルや導入事例、製品資料からご確認ください。詳細はeYACHO公式サイトをご覧ください。

出典一覧

※1 国土交通省「改正の背景(第三次・担い手3法)」 https://ninaite-sanpo.mlit.go.jp/background/
※2 国土交通省「令和7年版国土交通白書 第1節 直面する課題」 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r06/hakusho/r07/html/n1111000.html
※3 株式会社MM総研「建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)」 https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=710
※4 株式会社MetaMoJi「eYACHO(イーヤチョー)施工管理支援アプリ 公式サイト」 https://product.metamoji.com/gemba/eyacho/
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【監修】eYACHO編集部

施工管理アプリ「eYACHO」は、タブレット1つで現場の記録・共有・管理を可能にし、施工管理から安全管理まで幅広い業務をサポートします。
本コラムでは、建設業界の課題解決やDX推進に役立つ情報や最新動向をお伝えします。

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