「一般管理費」と「現場管理費」は、名前が似ているため混同されがちな費用です。しかし、どちらの費用かを取り違えると、見積もりや原価管理の精度が大きく崩れてしまいます。この記事では、両者の違いを工事原価の構成という全体像から整理し、それぞれの内訳・計算方法・率の仕組みまでをわかりやすく解説します。さらに、現場管理費の費目をよく見ると見えてくる「削減の着眼点」と、その実務的な進め方についても、現場目線でお伝えします。
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「一般管理費」と「現場管理費」の違いをわかりやすく解説!
工事原価の仕組みを理解
工事費の全体像:一般管理費と現場管理費は「工事原価」のどこにある?
最初に押さえたいのは、一般管理費と現場管理費が「工事費」という大きな枠の中のどこに位置するか、という全体像です。ここがあいまいなまま個別の用語を覚えると、混乱の原因になります。
国土交通省の「公共建築工事積算基準」では、工事費は次のように階層的に組み立てられています(※2)。発注者に請求する「工事費」は、「工事価格」と「消費税等相当額」で構成されます。そして工事価格は、「工事原価」と「一般管理費等」に分かれます。
工事原価は、さらに「純工事費」と「現場管理費」に分かれます。純工事費は、材料費や労務費など工事の施工そのものに直接かかる「直接工事費」と、複数の工事に共通して使う仮設にかかる「共通仮設費」の合計です。
つまり、費用の積み上がり方を上から並べると、次の構造になります。
| 区分 | 含まれる主な費用 |
|---|---|
| 直接工事費 | 材料費、労務費、直接経費 |
| 共通仮設費 | 仮設建物、安全設備、動力用水光熱費など |
| 現場管理費 | 工事現場を管理するための間接費 |
| 一般管理費等 | 会社全体を運営するための費用 |
| 消費税等相当額 | 上記合計(工事価格)にかかる消費税相当 |
ここで重要なのは、「直接工事費+共通仮設費=純工事費」「純工事費+現場管理費=工事原価」「工事原価+一般管理費等=工事価格」という積み上げの順番です(※2)。一般管理費等は工事原価の“外側”に位置し、現場管理費は工事原価の“内側”にある、という違いがまず大切なポイントになります。
現場管理費とは?工事現場を管理するための間接費
現場管理費とは、工事現場を管理・運営するためにかかる費用のことです。材料や施工に直接かかる費用ではありませんが、その現場を回していくために必要な間接的な経費を指します。
国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」では、現場管理費に含まれる費目が定められています(※1)。代表的な費目を挙げると、次のようなものがあります。
- ・ 労務管理費:現場で働く作業員の募集・解散、慰安、安全衛生、研修訓練などにかかる費用
- ・ 従業員給料手当:現場従業員や現場雇用従業員の給与、諸手当、賞与など
- ・ 法定福利費:労災保険料・雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料の事業主負担額など
- ・ 福利厚生費:現場従業員への慰安、健康診断、慶弔見舞などにかかる費用
- ・ 事務用品費:事務用消耗品費、OA機器などの事務用備品費、工事写真代など
- ・ 通信交通費:通信費、旅費および交通費
- ・ 退職金:現場従業員の退職給付引当金繰入額など
- ・ 保険料:火災保険、工事保険、賠償責任保険などの保険料
- ・ 施工図等作成費:施工図・完成図などの作成にかかる費用
- ・ 租税公課:工事契約書の印紙代、固定資産税・自動車税などの租税公課
- ・ 補償費:騒音・振動・濁水などに対して近隣の第三者に支払う補償費
これらに加え、上記のいずれにも該当しない費用は「その他(雑費)」として扱われます。なお、こうした費目を実務上わかりやすく「17項目」のように整理して紹介する記事もありますが、根拠となるのは上記の積算基準に定められた費目の区分です。
費目を眺めてみると、現場管理費の多くが「現場で働く人にかかる人件費」「現場の事務作業や情報のやり取り」「移動」に関わる費用であることが見えてきます。ここが、後ほど解説する「現場管理費の最適化」を考えるうえでの大きなヒントになります。
一般管理費とは?会社全体を支える経営の費用
一般管理費(積算上は「一般管理費等」)とは、個別の工事現場ではなく、会社全体を運営・維持していくためにかかる費用のことです。本社や支店の運営費、経営管理にかかる費用がここに含まれます。
具体的には、役員報酬、本支店の従業員給料手当、退職金、法定福利費、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、動力用水光熱費、地代家賃、減価償却費、租税公課、保険料、調査研究費、広告宣伝費、交際費、雑費などが該当します。本社の光熱費や通信費、事務職員の給料、広告料、固定資産税などをイメージするとわかりやすいでしょう。
一般管理費の大きな特徴は、特定の工事に紐づかないという点です。複数の現場を抱える会社であっても、本社の家賃や役員報酬は工事ごとに発生するわけではありません。だからこそ、一般管理費は工事原価の“外側”に置かれ、工事原価全体に対する比率で配分されるのです。
一般管理費は工事現場で直接発生する費用ではないものの、会社を維持し、次の受注につなげていくために欠かせない費用です。コンペなどで価格を下げようとするとき、削りにくい直接工事費に代わって真っ先に削られやすいのが一般管理費だと言われます(※5)。そのため公共工事では、後述のとおり一定の水準を確保する考え方が取られています。
一般管理費と現場管理費の違いを一目で整理
ここまでの内容を踏まえ、両者の違いを早見表で整理します。混同しやすいポイントは、「どの単位で発生する費用か」「工事原価に含まれるかどうか」の2点です。
| 比較項目 | 現場管理費 | 一般管理費(一般管理費等) |
|---|---|---|
| 費用の単位 | 工事現場ごと | 会社全体 |
| 目的 | その現場を管理・運営するため | 会社を維持・経営するため |
| 工事原価への計上 | 含まれる(工事原価の内側) | 含まれない(工事原価の外側) |
| 主な費目 | 現場従業員の給料手当、法定福利費、事務用品費、通信交通費、保険料など | 役員報酬、本支店の給料、地代家賃、減価償却費、広告宣伝費など |
| 計算の基準 | 純工事費に対する比率(現場管理費率) | 工事原価に対する比率(一般管理費等率) |
ひとことで言えば、「その現場を回すために必要なのが現場管理費」「会社を回すために必要なのが一般管理費」です。同じ「保険料」「事務用品費」のような費目名が両方に登場しますが、現場単位で発生するか、本社・支店単位で発生するかで区分が変わる、という点を意識すると整理しやすくなります。
それぞれの計算方法と率の仕組み(国土交通省の積算基準)
公共工事の積算では、現場管理費も一般管理費等も、原則として「率(比率)」を使って算定します。直接工事費のように一つひとつ積み上げるのではなく、過去の実態調査などに基づいて定められた率を用いるのが特徴です(※2)。
計算式の考え方は次のとおりです。
- ・ 現場管理費 = 純工事費 × 現場管理費率(※処分費を含まない純工事費が対象)(※1)
- ・ 一般管理費等 = 工事原価 × 一般管理費等率(※2・※3)
ここで誤解されやすいのが、これらの率の“目的”です。公共工事の積算における率は、受注者が自社のコストを正確に出すためというより、発注者が予定価格を適正に設定するための仕組みです(※2)。受注者側も、発注者がどの基準で予定価格を組むかを理解したうえで積算を行うことになります。
また、一般管理費等率には「一定水準を確保する」という考え方が取り入れられています。これは、価格競争のなかで一般管理費が過度に削られると、本社・支店スタッフの人材確保や会社の持続性に影響が及ぶためです(※5)。
率は固定的な数字ではなく、実態に合わせて改定され続けている点も押さえておきましょう。土木工事の積算基準では、人材育成・確保や働き方改革を反映する形で一般管理費等率・現場管理費率の見直しが重ねられてきました(※3)。建築(官庁営繕)の分野でも、令和8年(2026年)4月以降に入札手続きを開始する官庁営繕工事から、一般管理費等率の算定式が工事種別ごとに分かれていたものを一本化する改定が適用されています(※4)。最新の率や算定式を確認する際は、国土交通省の積算基準の最新版を参照することが大切です。
なお、ここで紹介した率の考え方は公共工事の積算が基準です。民間工事では発注者と受注者の合意によって設定され、業界の慣例や案件の性質によって幅が出る点にも留意してください。
現場管理費の多くは「人件費と間接作業」——最適化の着眼点
ここからは、用語の整理から一歩進んで、実務での「現場管理費の最適化」を考えてみます。先ほど現場管理費の費目を見たとき、その多くが現場従業員の人件費・事務作業・情報共有・移動に関わる費用だと指摘しました。裏を返せば、これらの間接作業を効率化できれば、現場管理費の負担を抑える余地が生まれるということです。
たとえば、現場で紙に記録した内容を事務所に戻ってからパソコンで清書する、同じ数値を日報・週報・月報へ何度も書き写す、発注者の立会のために現場と事務所を往復する——こうした作業は直接工事ではありませんが、人件費や交通費として確実に現場管理費に積み上がっていきます。
近年は、こうした現場の間接作業をデジタルで効率化する施工管理アプリの活用が広がっています。たとえばMM総研「建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)」では、施工管理アプリを利用するエンドユーザーがゼネコンで60%に達したとされています(※6)。間接作業の削減が、現場の生産性を左右する共通テーマになっていることがうかがえます。
施工管理アプリ「eYACHO」での効率化の例
現場目線でこのテーマを考えるうえで、施工管理アプリ「eYACHO(イーヤチョウ)」の活用は参考になります。eYACHOは株式会社MetaMoJiが大林組と共同開発した施工管理アプリで、MM総研の同調査ではゼネコンでの事業者別シェアNo.1(19%)、スマートデバイス利用シェアNo.1(21%)を獲得しています(※6)。導入企業は900社、利用者は約80,000ユーザーにのぼります。
eYACHOでは、紙の野帳と同じ感覚の手書き入力で、日報や検査帳票などを現場でそのまま作成できます。手書き入力には建設mazec(手書き入力システム)が使われ、建設・土木・設備の専門用語を効率よく入力できます。現場で記録を完結できるため、事務所に持ち帰ってからパソコンに入力し直すという二度手間を減らせます。
また、転記の手間も抑えられます。eYACHOでは、入力した値を他の帳票に転記することができ、工事名や日付などの共通項目を一度入力すれば関連帳票へ反映できます。同じ内容を何度も書き写す作業や、その際に起こりがちな転記ミスを減らすことにつながります。
eYACHOで複数人での作業を効率化するのが、Share(シェア)機能です。eYACHOのShare機能を使うと、同じ図面や帳票に複数の担当者が同時に書き込み、内容をリアルタイムで共有できます。この特性は、実際の導入事例にも表れています。大林組の現場では、Share機能の活用によって、朝礼準備にかかっていた時間が約2時間から10〜20分まで短縮されました。
さらに、発注者との立会などで発生しがちな移動も削減の対象です。東日本高速道路(NEXCO東日本)の事例では、ウェアラブルカメラとeYACHOを組み合わせ、Share機能を活用した遠隔立会によって、移動時間を約500時間から240時間へと削減しました。eYACHOは、こうした遠隔臨場(遠隔立会)を支えるツールとして活用できます。
これらはいずれも、現場管理費に積み上がる「人件費」「事務作業」「移動」といった間接コストに直接働きかける取り組みです。現場管理費を“ただ削る”のではなく、間接作業そのものを減らして適正化していく——という発想で見ると、施工管理アプリの活用が現場管理費の最適化と地続きであることがわかります。
まとめ
一般管理費と現場管理費は、どちらも工事に直接かかる費用ではない「間接費」ですが、発生する単位がまったく異なります。現場管理費は「その工事現場を管理・運営するための費用」で工事原価の内側に含まれ、一般管理費は「会社全体を維持・経営するための費用」で工事原価の外側に置かれます。両者の違いと内訳、そして率の仕組みを正しく理解することが、見積もりや原価管理の精度を高める第一歩です。
そのうえで、現場管理費の費目の多くが人件費・事務作業・移動・情報共有に関わる間接コストである点に注目すると、最適化の着眼点が見えてきます。紙の清書や転記、立会のための移動といった作業を施工管理アプリで効率化することは、現場管理費の適正化に直結します。用語を整理したうえで、自社の現場のどの間接作業に手を入れられるかを考えてみてください。
施工管理アプリ「eYACHO」は、現場での帳票作成・手書き入力・図面共有・遠隔立会の活用までをひとつのアプリで支え、現場の間接作業の効率化をサポートします。30日間の無料トライアルで、実際の現場での使い勝手を試すことができます。導入をご検討の際は、製品サイトの資料やトライアルをご活用ください。
出典一覧
※2 国土交通省「公共建築工事積算基準等資料(工事費の構成・共通費の算定)」 https://www.mlit.go.jp/common/001184223.pdf
※3 国土交通省・国土技術政策総合研究所「令和6年度 国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定」 https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/kisya/journal/kisya20240228.pdf
※4 国土交通省 官庁営繕部「公共建築工事共通費積算基準」(改定情報の掲載ページ) https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_touitukijyun_kyoutuuhi_sekisan.htm
※5 一般管理費等率の考え方(積算の基礎知識)アークシステム「楽王」コラム https://rakuoh.jp/contents/knowledge/management-cost-estimation.html
※6 株式会社MM総研「施工管理支援アプリは働き方改革関連法の適用後も導入が進み、建設業全体の利用率は4割強に上昇」(2026年3月12日公開) https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=710
