プラント建設におけるDX推進が避けて通れない理由は、業界が直面する4つの構造的な課題に集約されます。人手不足と高齢化、技術継承の停滞、安全管理の負担、そして時間外労働の上限規制への対応です。これらは互いに絡み合い、従来のやり方の延長では解決が難しくなっています。
まず深刻なのが、現場を支える人材の不足と高齢化です。限られた人数で複雑な工程を回しながら品質と安全を守るには、一人ひとりの業務効率を高めるほかありません。とりわけプラント建設は工種が多岐にわたるため、人手が薄くなるほど工程間の調整に負荷が集中します。
これと表裏一体なのが、技術継承の停滞です。ベテランが現場を離れれば、長年の経験と勘に頼ってきた工程判断や安全対策のノウハウが失われていきます。実際、社会インフラのプラント建設を担う三菱電機
プラント建設統括部がアプリ導入時に求めた条件の一つは、全国の現場ナレッジや熟練世代のノウハウを集約・蓄積・伝承できることでした。個人の頭の中にある知見を、組織で使えるデジタルの資産へ移すことが、いま強く求められています。
次に、安全管理の重みです。建設業は長年にわたり、全産業の中で労働災害による死亡者数が最も多い業種であり、近年も年間200人を超える水準で推移しています(※1)。事故の型別では墜落・転落が最も多く、国も第14次労働災害防止計画で建設業の死亡災害を大きく減らす目標を掲げています(※2)。プラント建設は高所作業・重量物の取り扱い・狭隘空間での作業が重なるため、工程が複雑になるほど潜在リスクの見落としが起きやすくなります。
さらに、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間・年360時間という枠の中で業務を収める必要が生じました(※3)。現場が終わってから事務所で帳票や報告書を作成する、いわゆる持ち帰り残業を前提とした働き方は、もはや成り立ちません。複雑な工程を管理しながら労働時間を縮減するには、現場で記録・共有・確認が完結する仕組みが不可欠です。
こうした背景を受けて、施工管理アプリの導入は着実に進んでいます。MM総研の調査によると、建設業全体でのアプリ利用率は42%、施工管理業務の比重が高いゼネコンに絞ると60%に達しています(※4)。プラント建設の現場でも、複雑工程と安全をどうデジタルで支えるかが、経営課題として正面から問われる段階に入っています。