建設業のメンタルヘルス対策は、もはや「余裕のある会社が取り組むもの」ではなくなりました。背景には、悪化する労災データと、待ったなしの法制度改正があります。
仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の労災請求件数は、2024年度に3,780件に達し、過去最多水準を更新しました(※1)。支給決定(労災と認められた件数)は6年連続で増加しています(※2)。業種別に見ても建設業は請求件数で上位に入る業種であり(※1)、決して例外ではありません。
さらに深刻なのは、過重労働と自殺の関係です。令和6年度の精神障害の労災請求3,780件のうち、未遂を含む自殺に至った事案は202件にのぼります(※1)。長時間労働と精神的不調が、最悪の結果に直結しうるという現実を示すデータです。
こうした状況を受け、法制度も大きく動いています。一つは2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制です。時間外労働は原則として月45時間・年360時間以内とされ、違反した使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(※3)。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内、月45時間を超えられるのは年6回までという上限を超えることはできません(※3)。いわゆる「2024年問題」です。
もう一つがストレスチェック制度の拡大です。ストレスチェックは2015年12月から、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施が義務付けられてきました(※4)。50人未満の事業場は当分の間努力義務とされてきましたが(※4)、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、この義務が50人未満の事業場にも拡大されることが決まりました。施行は2028年4月が方針として示されており、厚生労働省は小規模事業場向けの実施マニュアルを2026年2月に公表するなど準備を進めています(※5)。
つまり、従業員数の少ない地場の建設会社であっても、近い将来ストレスチェックが義務になります。労災リスク、罰則付きの労働時間規制、そして全事業場へのストレスチェック義務化。この三つが重なる今こそ、現場監督のメンタルヘルス対策に着手すべきタイミングなのです。