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現場監督のメンタルヘルス対策!
業務負荷の見える化と適切なフォローアップの方法

「最近、あの監督の元気がない」。そう感じても、何時間働き、どれだけの書類を抱えているのかが見えなければ、手の打ちようがありません。建設業のメンタルヘルス対策は、精神論や面談だけでは続きません。まず必要なのは、現場監督一人ひとりの業務負荷を見える化し、過重になっている部分を客観的な事実として把握することです。

この記事では、精神障害の労災が増え続ける建設業の現状と法制度の動きを公的データで確認したうえで、現場監督特有の「見えにくい負荷」の正体、その見える化の具体的な手順、そして見える化した後の適切なフォローアップまでを、現場の実例を交えて解説します。一般的な「7つのコツ」では語られない、記録作業そのものが負荷を生んでいるという逆説にも踏み込みます。

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なぜ今、現場監督のメンタルヘルス対策が急務なのか

建設業のメンタルヘルス対策は、もはや「余裕のある会社が取り組むもの」ではなくなりました。背景には、悪化する労災データと、待ったなしの法制度改正があります。

仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の労災請求件数は、2024年度に3,780件に達し、過去最多水準を更新しました(※1)。支給決定(労災と認められた件数)は6年連続で増加しています(※2)。業種別に見ても建設業は請求件数で上位に入る業種であり(※1)、決して例外ではありません。

さらに深刻なのは、過重労働と自殺の関係です。令和6年度の精神障害の労災請求3,780件のうち、未遂を含む自殺に至った事案は202件にのぼります(※1)。長時間労働と精神的不調が、最悪の結果に直結しうるという現実を示すデータです。

こうした状況を受け、法制度も大きく動いています。一つは2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制です。時間外労働は原則として月45時間・年360時間以内とされ、違反した使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(※3)。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内、月45時間を超えられるのは年6回までという上限を超えることはできません(※3)。いわゆる「2024年問題」です。

もう一つがストレスチェック制度の拡大です。ストレスチェックは2015年12月から、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施が義務付けられてきました(※4)。50人未満の事業場は当分の間努力義務とされてきましたが(※4)、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、この義務が50人未満の事業場にも拡大されることが決まりました。施行は2028年4月が方針として示されており、厚生労働省は小規模事業場向けの実施マニュアルを2026年2月に公表するなど準備を進めています(※5)。

つまり、従業員数の少ない地場の建設会社であっても、近い将来ストレスチェックが義務になります。労災リスク、罰則付きの労働時間規制、そして全事業場へのストレスチェック義務化。この三つが重なる今こそ、現場監督のメンタルヘルス対策に着手すべきタイミングなのです。

現場監督が抱える「見えない業務負荷」の正体

メンタルヘルス対策の第一歩は、現場監督が何にどれだけの時間と労力を割いているのかを知ることです。ところが建設現場の業務負荷は、勤怠データの残業時間だけでは捉えきれない「見えない部分」が多いという特徴があります。

代表的なのが、書類作成の負荷です。現場監督は日報、週報、KY(危険予知)シート、工事写真の整理、検査記録、朝礼資料など、大量かつ多種類の書類を日々作成しています。とくに見落とされがちなのが、現場で紙の野帳に手書きしたメモを、事務所に戻ってからもう一度パソコンに打ち直すという二度手間です。この再入力作業は、表向きの「現場作業」にも「会議」にも分類されにくいため、負荷として可視化されないまま現場監督の残業時間を押し上げています。

ここに、業務負荷の見える化を考えるうえで重要な逆説があります。 負荷を測ろうとして新たな記録作業を増やせば、見える化そのものが現場監督の負荷になってしまう のです。建設現場ではパソコンが使えない場面が多く、紙とパソコンを往復する運用が常態化していると、何を記録するにも余計な工数がかかります。

二つ目は移動時間です。現場と事務所、複数現場の巡回、発注者との立会いのための往復移動は、成果物として残らないため軽視されがちですが、確実に拘束時間として現場監督を疲弊させています。

三つ目は心理的なプレッシャーです。工期の遵守、品質と安全の確保、協力会社との調整、若手の育成。これらは数値化しにくいものの、慢性的なストレス要因として蓄積します。とくに経験の浅い若手監督は「相談できる相手が近くにいない」状況に置かれやすく、孤立しがちです。

業務負荷を見える化するとは、これら「残業時間という数字には表れにくい負荷」を、記録作業の手間を増やさずにすくい上げることに他なりません。

業務負荷を見える化する3つのステップ

では、現場監督の業務負荷をどう見える化すればよいのでしょうか。基本は「データ収集」「分析」「改善」の3ステップですが、建設業では各ステップに現場ならではの工夫が必要です。

  • ステップ1:現場で完結するデータ収集

    まずは負荷の実態を示すデータを集めます。具体的には、業務日報による作業内容と工数の記録、定期的なアンケートによるストレスや負担感の把握、そして業務時間の記録です。

    ここで前述の逆説を思い出してください。データ収集の方法そのものが現場監督の負担になっては本末転倒です。重要なのは、現場でその場で記録が完結し、事務所での再入力を発生させないことです。手書きやチェックリスト形式で、移動中や作業の合間にスマートフォンやタブレットからさっと入力できる仕組みであれば、記録のための残業を増やさずにデータを蓄積できます。

  • ステップ2:負荷の偏りを可視化する分析

    集めたデータは、定期的に分析して傾向を把握します。日報の累計から、どの業務にどれだけの時間がかかっているか、特定の現場監督に負荷が偏っていないかを確認します。

    分析でとくに注目したいのが、業務量の変化とメンタルヘルスの兆候の相関です。残業時間の増加、日報の記述量や質の変化、報告の遅れといったサインは、不調の前触れであることがあります。ここで大切なのは、業務負荷の見える化とメンタルヘルスの見える化を別々のものとして考えないことです。日報やKY、帳票のデジタルデータは、そのまま不調の早期兆候を読み取るためのデータにもなります。一つのデータ基盤で、業務改善と心の健康管理を同時に進められるのが理想です。

  • ステップ3:データに基づく改善とフィードバック

    分析結果は、チーム全体で共有し、具体的な改善につなげます。業務の優先順位の見直し、業務分担の再考、過度な負荷がかかっている監督への応援人員の配置などです。

    改善は一度で終わりではありません。改善策を実施したら、その効果を再びデータで測定し、必要に応じて見直すというサイクルを回します。このPDCAを月次で可視化することで、「対策が効いているのかどうか」が経営層にも現場にも見えるようになります。

デジタル活用で見える化の負荷を下げる

3つのステップを、記録の手間を増やさずに回すための現実的な手段が、施工管理アプリ(デジタル野帳)の活用です。紙とパソコンの往復をなくし、現場で記録を完結させることで、見える化に伴う新たな負荷を最小化できます。

たとえば、大林組とMetaMoJiが共同開発した施工管理アプリ「eYACHO」では、紙の野帳と同じ感覚で手書き入力ができ、その内容がそのまま電子帳票としてクラウドに保存されます。現場で書いたものを事務所で打ち直す二度手間が不要になるため、書類作成という見えない負荷を根本から削減できます。

実際の業務負荷削減の事例も公表されています。大林組の現場では、Share機能の活用により、これまで1〜2時間かかっていた朝礼準備が10〜20分にまで短縮されたという事例があります。またeYACHOのスマートテンプレートを使えば、日報に入力した内容を週報・月報へ転記・集計できるため、締め作業のたびに同じ数値を打ち直す手間もなくなります。

見落とされがちな「移動時間」という負荷にも、デジタルは効きます。Share機能とウェアラブルカメラ、eYACHOを組み合わせて遠隔臨場(遠隔立会)に活用した東日本高速道路(NEXCO東日本)の事例では、立会いのための移動時間が約500時間から240時間へと削減されました。移動という、これまで成果に残らなかった負荷を可視化し、半減させた例といえます。

安全管理の心理的負荷も軽減できます。建設現場の安全管理は法令改正が頻繁で、KY活動のたびに最新の知見を確認する負担は大きく、ベテランほど経験則に頼って潜在リスクを見落とすことがあります。eYACHOの安全AIソリューションは、21種類の安全関連法令と31種類の通達・ガイドラインをもとに、作業内容に応じて関連度の高い潜在リスクと対策を動的に抽出します。これにより、リスク確認の負担と「見落としてはいけない」というプレッシャーを、個人からツールへ分散できます。実際に湧田鉄筋の現場では、この安全AIを活用して安全管理業務を効率化しています。

ゼネコンで利用される施工管理アプリのシェアでは、このeYACHOが19%でNo.1となっています(※6)。建設現場で持ち歩くスマートデバイスでの利用シェアでもNo.1であり(※6)、パソコンが使えない現場でも記録を完結できる点が評価されています。なお、ツールはあくまで見える化を支える手段です。自社の現場の規模や業務内容に合うものを、複数のサービスで比較検討することをおすすめします。

見える化した後の「適切なフォローアップ」

業務負荷を見える化しても、そのデータを放置すれば意味がありません。むしろ、見える化の本当の価値は、その後のフォローアップにあります。負荷が高まっている監督を早期に発見し、適切に支えるところまでが対策です。

ラインケア:上司による日常の気づき

最も身近なフォローアップが、上司や職長による「ラインケア」です。ラインケアとは、管理監督者が日常的に部下の様子を観察し、いつもと違う変化に気づいて声をかけ、必要に応じて相談につなげる取り組みを指します。見える化したデータで残業時間の急増や報告の遅れといったサインを早期に捉えられれば、ラインケアの精度は格段に上がります。「最近どう?」という曖昧な声かけではなく、「今月、書類作成の時間が先月より増えているけれど、何か困っていることはないか」と、事実に基づいて踏み込めるようになります。

相談窓口の整備

二つ目は相談窓口の設置です。社内に相談窓口を設ける場合は、相談内容の守秘義務を徹底し、現場監督が安心して利用できる環境を整えることが欠かせません。社内だけでは利用をためらう人も多いため、外部の専門機関による従業員支援プログラム(EAP)を併用すると、相談のハードルが下がります。窓口は設置して終わりではなく、利用状況を定期的に確認し、改善を続けることが大切です。

若手監督への遠隔サポート

三つ目は、孤立しやすい若手監督への支援です。経験の浅い若手が現場で判断に迷ったとき、すぐにベテランへ相談できる環境があるかどうかは、心理的負荷を大きく左右します。現場の状況をビデオ通話で見せながら遠隔で助言を仰いだり、図面や帳票をリアルタイムで共有しながら指導したりできる環境があれば、ベテランが常に現場へ足を運べなくてもOJTを継続できます。eYACHOのビデオ通話機能(GEMBA Talk)はこうした遠隔サポートに活用でき、阪神高速技術ではこの機能を若手育成に役立てています。

フォローアップは、見える化で得た事実を「人の支援」につなげる工程です。データはきっかけにすぎず、最後は人が人を気づかう仕組みがあって初めて、メンタルヘルス対策は機能します。

中小・地場の建設会社が今日から始められること

ここまでの対策は、大手ゼネコンだけのものではありません。むしろ、ストレスチェックの義務化が50人未満の事業場にも2028年4月に拡大される方針が示されている今(※5)、人手も予算も限られる中小・地場の建設会社こそ、早めの準備が重要になります。

まずは一つの現場、一つの業務から小さく始めることです。いきなり全社で多機能なシステムを導入しようとすると、現場が使いこなせず定着に失敗しがちです。日報や写真整理など、負荷が大きく効果の見えやすい業務を一つ選び、限られた現場で試すところから始めましょう。

次に、業務負荷を見える化するための記録方法は、現場の職員が抵抗なく使えるものを選ぶことです。建設業はITに不慣れなベテラン層も多いため、手書きのように直感的に扱える仕組みであれば、年齢を問わず定着しやすくなります。

限られたリソースの中では、外部の力を借りることも有効です。ストレスチェックや相談対応は、外部の専門機関に委託できます。書類作成の負担そのものを軽くしたい場合、たとえばeYACHOでは帳票作成を代行するBPOサービスも提供しています。50人未満の事業場がストレスチェックを導入する際には、国や自治体の助成金を活用できる場合もあるため、最新の制度を確認するとよいでしょう。

大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。現場が「これなら続けられる」と感じる小さな一歩から始め、効果を測りながら少しずつ広げていく。それが、建設業のメンタルヘルス対策を根づかせる最も確実な進め方です。

まとめ

建設業のメンタルヘルス対策は、現場監督の業務負荷を見える化することから始まります。精神障害の労災が6年連続で増え、時間外労働の上限規制とストレスチェックの義務化拡大が重なる今、対策は待ったなしの経営課題です。

ポイントは三つです。第一に、残業時間だけでは見えない書類作成・移動・心理的プレッシャーといった負荷を、記録の手間を増やさずに見える化すること。第二に、現場で記録が完結するデジタル化を活用し、業務負荷とメンタルヘルスを同じデータ基盤で同時に把握すること。第三に、見える化したデータを、ラインケアや相談窓口、若手への遠隔サポートといった「人によるフォローアップ」につなげることです。

業務負荷の見える化は、それ自体が目的ではなく、現場監督が安心して長く働ける環境をつくるための手段です。自社の現場に合った進め方で、できる一歩から始めてみてください。

建設現場の業務負荷の見える化やペーパーレス化にご関心のある方は、施工管理アプリ「eYACHO」の導入事例や30日間の無料トライアルをご活用いただけます。製品資料のダウンロードや導入のご相談は、MetaMoJiの公式サイトよりお問い合わせください。

出典一覧

※1 厚生労働省「令和6年度『過労死等の労災補償状況』を公表します」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html
※2 労働政策研究・研修機構(JILPT)「『精神障害』の労災支給決定件数が6年連続の増加(国内トピックス:ビジネス・レーバー・トレンド 2025年8・9月号)」 https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/08_09/kokunai_01.html
※3 日本建設業連合会「時間外労働上限規制対応」 https://www.nikkenren.com/sougou/overtimework/index.html
※4 厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等 関係法令等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000181838.html
※5 厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html
※6 株式会社MM総研「施工管理支援アプリは働き方改革関連法の適用後も導入が進み、建設業全体の利用率は4割強に上昇」(2025年12月調査) https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=710
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【監修】eYACHO編集部

施工管理アプリ「eYACHO」は、タブレット1つで現場の記録・共有・管理を可能にし、施工管理から安全管理まで幅広い業務をサポートします。
本コラムでは、建設業界の課題解決やDX推進に役立つ情報や最新動向をお伝えします。

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