ここまで紹介した4ステップを、もっとも素直に実装している現場ツールの一つが「デジタル野帳」として着想を得た、「eYACHO」です。建設業の現場で長年使われてきた紙の野帳(レベルブック)を、タブレットやスマートフォン上で再現し、手書き・写真・図面・帳票・録音をひとつの紙面に集約できます。MM総研の建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)では、ゼネコンにおける利用シェアNo.1(19%)、現場で持ち歩かれるスマートデバイス利用者でもシェアNo.1(21%)という結果が示されました(※3)。
属人化解消の文脈で注目したいのは、こうしたデジタル野帳が単なる紙の代替ではない、ということです。
ひとつは、複数人での同時編集を前提に設計されている点です。同じノートや図面に、現場と事務所、元請けと協力会社がリアルタイムで書き込めます。これは紙の野帳には絶対にできなかったことで、「ひとりしか作業できない」状態を物理的になくします。
もうひとつは、現場で完結する点です。手書きメモ・写真・図面書き込み・帳票入力・遠隔ビデオ通話までを、現場のスマートフォンとタブレット1台で完結できれば、「事務所に戻ってからPCで打ち直す」工程そのものがなくなります。実際、ある発注者の事例では、現場立会いの約半分を、Share機能とウェアラブルカメラを活用した遠隔立会いに切り替えた結果、従来は500時間以上かかっていた移動時間を240時間にまで削減できたと公表されています(※同社公開導入事例より)。1日8時間労働で約1ヶ月分の労働時間に相当する削減です。
さらに、現場で生まれた情報がそのままクラウドに蓄積されるので、検索でき、過去の現場のテンプレート・帳票・判断記録を、次の現場や別の担当者が呼び出して再利用できます。「あの時、あの現場でどう判断したか」を、3年後の別の現場で参照できる状態は、これまで紙の野帳と個人のExcelでは絶対に実現できなかった、組織としてのナレッジ蓄積のかたちです。
加えて、ITが苦手な世代でも違和感なく使える「手書き」の操作性が、ベテランの暗黙知をデジタル化する入り口になります。普段の野帳と同じ感覚で書き込むだけで、その内容がクラウドに自動同期され、組織の資産として残ります。属人化解消とナレッジ蓄積が、現場の働き方を変えずに同時に進む仕組みです。