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「あの人しか分からない」をなくす!
現場情報の属人化を解消するナレッジ蓄積術

建設現場では「あの人にしか分からない」業務が多く残っています。ベテラン現場監督の手書き野帳、特定の担当者しか触れないExcel帳票、職人の頭の中にある段取りや判断基準。こうした暗黙知が組織のナレッジとして流れていない状態は、休職・異動・退職が起きた瞬間に現場の止まりやすさへ直結します。

2024年4月の時間外労働の上限規制適用(原則として月45時間・年360時間)(※1)と、技能労働者の高齢化(建築・建設業就業者における60歳以上の技能者の割合は約25.7%)(※2)が重なるなか、属人化の解消は「いつかやる課題」ではなく、いま着手すべき経営テーマになりました。ベテラン1人が抱える業務を分散できなければ、残業削減と技能継承が同時に破綻する構造になっているからです。

本記事では、約900社の建設業現場で使われてきた施工管理アプリ「eYACHO」の実例を踏まえ、現場特有の属人化が深刻化する構造的な理由と、ナレッジ蓄積で解消する具体的な進め方を解説します。一般的な「マニュアル化」「業務標準化」だけでは届かない、現場ならではの視点を中心にまとめました。

「あの人しか分からない」をなくす!現場情報の属人化を解消するナレッジ蓄積術

現場で「属人化」が深刻化しやすい3つの構造的理由

属人化の一般的な解説では「マニュアル化」「業務標準化」「情報共有ツール」の3点が定番の打ち手として語られます。しかし建設現場の属人化は、オフィスワークとは異なる構造的な理由で深刻化しやすく、定番の打ち手だけでは届かない領域があります。

  • 理由1:現場ではPCが使えないという前提が抜け落ちる

    建設現場の多くは、屋外・高所・狭所・通信不安定といった条件下にあります。現場監督や職長が手に持っているのはPCではなく、紙の野帳・チェックシート・図面、そして電話とメールが使えるスマートフォンやタブレット程度です。

    その結果、現場で発生した情報は、まず紙やベテランの頭の中に蓄積されます。事務所に戻ってからPCで電子化し、社内サーバやクラウドに上げる。この「現場→紙→事務所→PC→共有」という流れ自体が、情報の鮮度を落とし、入力する個人のクセや判断に依存する温床になります。

    ナレッジが現場の外で組織知になるまでに、何人もの個人の手と判断を経由します。途中で「これは個人のメモだから」「自分のExcelにだけ残しておこう」という判断が一度でも入ると、その情報はもう組織には流れません。さらに、現場で手書きしたメモを事務所で打ち直す工程そのものが、月に数十時間規模の残業を生み出している現実もあります。属人化と残業は、ここで密接につながっています。

  • 理由2:ベテランほど多くの暗黙知を抱え、それを言語化する時間がない

    建設現場では、地盤の見方、施工順序の判断、是正の優先順位、KY(危険予知)で見るべきポイントなど、長年の経験で培われた暗黙知が品質と安全を支えています。

    問題は、こうした暗黙知ほどキーボード入力を前提としたシステムでは記録されにくいということです。ベテラン世代ほど「キーボードよりペンが速い」「整った文章にまとめるより、現場で殴り書きする方が伝わる」と感じる傾向があります。結果として、属人化の解消に最も貢献するはずのベテランの知見が、組織のシステムには入力されないまま放置されます。

    属人化の議論でしばしば見落とされるのは、「入力ハードルそのものが属人化を作る」という視点です。記録の手段が現場や入力者の感覚に合っていない限り、ナレッジ蓄積は始まりません。逆に言えば、紙の野帳と同じ感覚で手書きができるデバイスやアプリがあれば、ベテランの頭の中にあった知見が、はじめて組織のデータとして残り始めます。

  • 理由3:ツールの仕様が「一人作業」を強制する

    属人化の根は人や意識にあると考えがちですが、実は使っているツールの仕様そのものが属人化を強制している場合があります。

    ある大手ゼネコンの建築現場では、朝礼で使うキープラン(現場の作業位置を示す図面資料)を、もともとExcelとPowerPointで作成していました。同社の担当者は、これらのツールでは一人しか作業ができず特定の担当者に作業が集中していたため、複数人で同時に作業できることを理由にeYACHOを選んだと振り返っています。

    この発言は属人化の本質を突いています。同時編集ができないツールを使い続ける限り、業務は必ず特定の一人に流れ込みます。マニュアルを整備しても、最終的な作成作業を「一人ずつ順番に」しかできないツールであれば、属人化は構造的に再生産されます。逆に、複数人が同じ資料に同時に書き込めるツールであれば、業務は自然に分散され、特定の人への集中はなくなります。

ナレッジ蓄積を阻む「現場ならでは」の壁

属人化解消の打ち手として、ナレッジマネジメントツールや社内Wikiの導入が語られることが増えました。一方で、建設業の現場ではそのまま輸入してもうまく機能しない理由があります。

第一に、ナレッジは現場で生まれます。図面への赤書き、是正指示の現物を撮った写真、ベテランが歩きながら呟いた一言、計測値、職長と短時間で交わした打合せの結論。こうした情報は、事務所に戻ってからまとめ直すと、必ず量も粒度も落ちます。「あの場所の、あのときの、あの判断」という一次情報こそが本当のナレッジですが、それは現場でしか拾えません。

第二に、ナレッジは特定の現場・特定の作業に紐づいた文脈情報です。「あの場所のあの仕事のあの判断」という座標がなければ、後から見て役に立つ知見にはなりません。テキストだけのデータベースに切り離して保存しても、検索しても意味が読み取れない情報になりがちです。写真・図面・帳票・手書きメモが同じ「ノート」上で関連付けられてはじめて、後から「あの現場でどう判断したか」が再現可能になります。

第三に、ナレッジは即時に共有されてはじめて価値が出ます。事務所で1日分の情報をまとめてから配信する運用では、現場の判断はすでに過ぎたあとです。事故やトラブルの予兆をリアルタイムに止めることはできません。安全パトロールで気になった是正箇所を、その場で写真と手書き指示として記録し、関係者の手元にリアルタイムで共有できる仕組みがあれば、是正対応の遅れによる重大事故のリスクは大幅に下がります。

これらの壁を越えるには、「事務所で整理してからクラウドに上げる」発想から、「現場でその場で記録し、その場で共有する」発想への転換が必要です。

属人化を解消するナレッジ蓄積の4ステップ

属人化を解消するナレッジ蓄積の4ステップ

ここからは、属人化を解消し、現場で生まれる情報を組織のナレッジに変えていくための具体的な進め方を、4つのステップで整理します。

  • ステップ1:現場で生まれた情報を、現場でデジタル化する

    最初の一歩は、紙とExcelをやめることではありません。「現場で発生した情報を、現場のスマートフォンやタブレットでそのまま記録する」状態を作ることです。

    具体的には、日報・KYシート・チェックリスト・是正指示書・写真台帳といった、現場で日々書く帳票をデジタル化し、現場で完結させます。事務所に戻ってからのPCでの再入力をなくすこと、これだけで属人化のリスクは大幅に下がります。再入力工程がある限り、入力した人の解釈が必ず混じり、情報の劣化と属人化が起きるからです。

    ある専門工事会社の事例では、従来は作業終了後に日報作成のため会社へ戻る必要があったものの、「eYACHO」の導入後は現場にいながら書類を作成できるようになり、毎日1時間以上早く帰れるようになったと公表されています(※同社公開導入事例より)。1日1時間の短縮は、月20稼働日で20時間。これは2024年問題の時間外労働上限規制への直接的な対応にもなります。

    このステップで重要なのは、既存の帳票や運用を大きく変えないことです。会社で長年使っているExcel帳票や紙の帳票には、現場での実用知が蓄積されています。それを捨てて新しいフォーマットを覚えてもらうのではなく、既存帳票をそのままデジタル化できるツールを選ぶと、現場の抵抗感は最小限になります。

  • ステップ2:「複数人で同時に書ける」前提に切り替える

    属人化解消の鍵は、ナレッジを1人の手から複数人の手に解放することです。同じ図面や帳票に複数人が同時に書き込めるツールが現場にあれば、業務は自然に分散します。

    たとえば朝礼資料・KYシート・パトロール記録・是正指示書を、現場の複数人で分担して同時に書き込めるようにするだけで、特定の一人に作業が集中するという構造はなくなります。さらに、現場と事務所、元請けと協力会社、ベテランと若手といった距離のあるメンバーが、同じ紙面を見ながら作業できれば、ナレッジは自然に流通します。誰がどこに何を書いたかが履歴として残るので、後から「誰のどの判断がどの結果につながったか」を辿ることもできます。

    冒頭で紹介した大手ゼネコンの事例は、まさにこのステップで属人化が解消された例です。「ひとりしか作業できない」ツールから「複数人で同時に作業できる」ツールに切り替えただけで、朝礼準備は1〜2時間から10〜20分に短縮されました。短縮された時間そのものよりも、「特定の一人に作業が集中しなくなった」という構造の変化が本質的な成果です。担当者が休んでも別の人が同じツールで朝礼資料を完成できる状態こそ、属人化解消のあるべき姿といえます。

  • ステップ3:既存の帳票・記録様式をそのまま活かす

    ナレッジ蓄積で最も挫折しやすいのが、「新しいフォーマット・新しいルールへの全社移行」です。せっかく長年使ってきた帳票には、現場の知見が織り込まれています。一気にゼロから作り直そうとすると、現場は反発し、移行は止まり、結局元の紙とExcelに戻ります。

    属人化解消を進めるうえでは、既存のExcel帳票・PDF帳票・社内独自のチェックシートをそのまま電子化できる仕組みを選ぶのが現実的です。レイアウトはそのまま、入力欄を「手書き」「写真貼付」「チェック」「自動転記」に対応させていけば、現場は「いつもの帳票が、タブレットで書けるようになっただけ」という感覚で使い始められます。

    帳票間の共通項目(工事名・日付・担当者・作業内容)を一度入力すれば関連する帳票すべてに自動転記される仕組みがあれば、転記ミスと再入力作業がなくなります。日報に書いた内容が週報・月報に自動集計される設計にしておけば、月末の締め作業も劇的に軽くなります。

    加えて、テンプレートを社内で共有できる仕組みがあると、ベテランが作った帳票や指示書のフォーマットをそのまま若手が再利用できるようになります。「あの先輩のチェックリストの作り方」が、テンプレートとして組織の資産になるのです。これは紙の野帳では絶対に実現できなかった、デジタルならではのナレッジ蓄積のかたちです。

  • ステップ4:ベテランの「見方」を組織知として残す

    属人化解消の最後のテーマが、ベテランの暗黙知をどう組織に流すかです。最も難しい領域ですが、ここを諦めると技能継承は止まります。

    ひとつの有効な打ち手は、ベテランが現場で見ているもの・気にしているポイントを、写真と手書きメモでそのまま残すことです。「この鉄筋のここをこう見る」「この時期はここで湿気が回りやすい」「この作業の前にこの確認を入れる」といった判断の根拠を、現場で図面や写真に書き込んでおけば、それ自体が若手にとっての教材になります。

    もうひとつの打ち手は、ビデオ通話で「ベテランの判断」を遠隔から共有することです。経験の浅い若手監督が現場で判断に迷ったとき、ベテラン監督が事務所からタブレット越しに同じ画面を見ながら指示できれば、ベテランの判断プロセスがその場で共有されます。ある高速道路関連の専門工事会社では、設備の現場業務において、若手育成にビデオ通話機能を組み合わせ、ベテランが複数現場を遠隔でサポートする運用に切り替えています(※同社公開導入事例より)。一人のベテランの判断が、複数現場の若手に同時に流れる構造です。

    さらに、KY活動など定型的なリスクアセスメントについては、AIによる支援が現実的な選択肢になってきました。作業内容や現場写真から潜在リスクを提示する仕組みがあれば、ベテランの「目線」を一定水準まで標準化し、若手や経験の浅い担当者の見落としを補えます。建設業に関わる労働安全衛生法系の法令・ガイドラインに準拠したチェックをAIが補助する仕組みも実用化されており、「ベテランしか分からないリスク」を「組織全員が確認できるリスク」に変えていく動きが進んでいます。AIが判断を代替するのではなく、ベテランが見ているはずのポイントを抜けなく挙げる「チェックリスト」として機能させる発想です。

デジタル野帳がもたらすナレッジ蓄積の実像

ここまで紹介した4ステップを、もっとも素直に実装している現場ツールの一つが「デジタル野帳」として着想を得た、「eYACHO」です。建設業の現場で長年使われてきた紙の野帳(レベルブック)を、タブレットやスマートフォン上で再現し、手書き・写真・図面・帳票・録音をひとつの紙面に集約できます。MM総研の建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)では、ゼネコンにおける利用シェアNo.1(19%)、現場で持ち歩かれるスマートデバイス利用者でもシェアNo.1(21%)という結果が示されました(※3)。

属人化解消の文脈で注目したいのは、こうしたデジタル野帳が単なる紙の代替ではない、ということです。

ひとつは、複数人での同時編集を前提に設計されている点です。同じノートや図面に、現場と事務所、元請けと協力会社がリアルタイムで書き込めます。これは紙の野帳には絶対にできなかったことで、「ひとりしか作業できない」状態を物理的になくします。

もうひとつは、現場で完結する点です。手書きメモ・写真・図面書き込み・帳票入力・遠隔ビデオ通話までを、現場のスマートフォンとタブレット1台で完結できれば、「事務所に戻ってからPCで打ち直す」工程そのものがなくなります。実際、ある発注者の事例では、現場立会いの約半分を、Share機能とウェアラブルカメラを活用した遠隔立会いに切り替えた結果、従来は500時間以上かかっていた移動時間を240時間にまで削減できたと公表されています(※同社公開導入事例より)。1日8時間労働で約1ヶ月分の労働時間に相当する削減です。

さらに、現場で生まれた情報がそのままクラウドに蓄積されるので、検索でき、過去の現場のテンプレート・帳票・判断記録を、次の現場や別の担当者が呼び出して再利用できます。「あの時、あの現場でどう判断したか」を、3年後の別の現場で参照できる状態は、これまで紙の野帳と個人のExcelでは絶対に実現できなかった、組織としてのナレッジ蓄積のかたちです。

加えて、ITが苦手な世代でも違和感なく使える「手書き」の操作性が、ベテランの暗黙知をデジタル化する入り口になります。普段の野帳と同じ感覚で書き込むだけで、その内容がクラウドに自動同期され、組織の資産として残ります。属人化解消とナレッジ蓄積が、現場の働き方を変えずに同時に進む仕組みです。

ナレッジが流れる現場をつくるために、いま着手すべきこと

属人化解消とナレッジ蓄積は、ある日突然完成するものではありません。一気に全社展開を狙うほど、現場の反発と運用の混乱を招きます。現実的な進め方は、次のような小さな歩幅です。

まず、属人化している業務の棚卸しをします。誰か1人しかできない作業、誰かが辞めたら困る帳票、特定の人にしか分からない判断基準を、紙でもよいので書き出してみます。書き出した時点で、対策の優先順位は自然に見えてきます。

次に、その中で「現場で記録・共有が完結すれば解消できる」業務を優先的にデジタル化します。日報・KYシート・パトロール記録・是正指示書あたりが取り組みやすい入口です。これらは毎日生まれる情報の量が多く、属人化の影響を早く実感できる領域でもあります。

そして、最初は1〜2現場の小規模パイロットで30〜90日試します。既存帳票をそのまま電子化し、複数人で同時に書ける状態を作り、現場の声を集めて運用ルールを調整します。

このフェーズで効果(残業時間の削減、朝礼準備の短縮、再入力作業の消滅)が数字で見え始めたら、展開を広げていきます。経営層のメッセージと現場推進担当者の体制があれば、半年〜1年で全社展開の見通しが立ちます。協力会社にもアカウントを配布できる仕組みを選んでおけば、現場全員が同じナレッジ基盤を共有する状態に近づきます。

属人化の解消は、特定のツールを買えば終わる話ではなく、ツールが現場に馴染むかどうか、ナレッジが組織に流れる構造ができるかどうかで勝負が決まります。

まとめ:現場の属人化を解消し、ナレッジ蓄積を組織の資産に変える

現場の属人化は、「あの人にしか分からない」という個人の問題ではなく、「現場で生まれた情報が組織のナレッジに流れない」という構造の問題です。

紙の野帳・個人Excel・口頭伝承の3点セットがそのまま残る現場では、どれだけマニュアルを整備しても属人化は再生産されます。逆に、現場で記録・共有が完結し、複数人で同時に書ける環境を作れば、ナレッジ蓄積は自然に進み、属人化は確実に解消の方向へ向かいます。

属人化の解消とナレッジ蓄積は別々のテーマではなく、現場で発生する情報の流れを設計し直す、同じ取り組みの裏表です。2024年問題と技能労働者の高齢化が同時進行するいま、このテーマは、来年に先送りできるものではありません。まずは1つの帳票、1つの現場から、現場で完結するデジタル化を始めてみてください。

現場の属人化解消・ナレッジ蓄積を進めたい方へ

「eYACHO for Business」は、株式会社MetaMoJiが大林組と共同開発した施工管理アプリです。手書き・写真・図面・帳票を1つの紙面に集約し、複数人での同時編集により現場のナレッジ蓄積を支援します。30日間の無料トライアルでご利用いただけます。


製品の詳細・導入事例・無料トライアルのお申し込みは、eYACHO公式サイトをご覧ください。
https://product.metamoji.com/gemba/eyacho/


出典一覧

※1 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
※2 厚生労働省 「最近の建設産業行政について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001566406.pdf
※3 株式会社MM総研「建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)」(2026年3月12日公開) https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=710
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【監修】eYACHO編集部

施工管理アプリ「eYACHO」は、タブレット1つで現場の記録・共有・管理を可能にし、施工管理から安全管理まで幅広い業務をサポートします。
本コラムでは、建設業界の課題解決やDX推進に役立つ情報や最新動向をお伝えします。

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