「工期に追われ、土曜の出勤が常態化している」「平日の残業だけでは終わらず、日曜にも事務所で書類を仕上げている」。建設業の現場では、このような声が長年続いてきました。2024年4月の時間外労働の上限規制適用(※1)を契機に、休日出勤と残業の削減は経営課題そのものになっています。
しかし、工程表を眺めて休日を確保する「形式的な工程見直し」だけでは、休日出勤は減りません。本当に必要なのは、「なぜ現場の人が休日まで働かなければならないのか」という構造の見直しです。本記事では、休日出勤が生まれる本質的な要因と、工程管理の見直し方、そしてITツールを組み合わせた具体的な対策について、大林組やNEXCO東日本といった実際の現場の事例も交えて解説します。
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現場監督の休日出勤をなくすには?
工程管理の見直しとITツール導入で実現する方法
建設業で休日出勤が常態化する3つの構造的要因
工程表上は「土曜は休み」と書かれていても、実際は出勤せざるを得ない。その背景には、現場特有の3つの構造的要因があります。
第一に、工期そのものの短さと工程交渉力の弱さです。発注者から提示された工期に対して、施工側が交渉できる余地が少なく、結果として日々の作業を圧縮するしかない状態が生まれます。建設業の年間総実労働時間は約1,978時間で、全産業平均(約1,632時間)よりも350時間以上長いと指摘されており(※2)、これは構造的な工期不足の表れとも言えます。
第二に、「現場では書ききれない書類業務」が事務所に持ち帰られる構造です。日中は現場の作業指揮で手が回らず、夕方以降に日報・KY記録・写真台帳の作成、翌日の朝礼資料準備に追われます。この「持ち帰り残業」が休日出勤の最も大きな源泉になっています。
第三に、承認・調整・立会のたびに発生する移動時間です。1回の現場立会のために、事務所と現場を往復するだけで半日以上が消える例も珍しくありません。NEXCO東日本の管理事業本部では、年間150〜160回の立会業務のうち、移動時間だけで500時間以上を要していたことが報告されています(※本稿のための一次情報収集による・同社導入事例より)。
これら3つの要因は、いずれも「工程表の数字を入れ替える」だけでは解決しません。業務の組み立てそのものを見直す必要があります。
2024年問題で建設業に何が変わったか
2024年4月1日以降、建設業にも時間外労働の上限規制が原則適用されました。猶予期間が終わり、ほかの産業と同じ水準のルールが課されたことになります。
具体的には、時間外労働は
原則として月45時間、年360時間以内
に制限されます(※1)。特別条項付き36協定を締結した場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、かつ2〜6か月平均で月80時間以内に収める必要があります(※1)。月45時間を超えて働かせることができるのも年6か月までです。違反した場合は、使用者に対して6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(※1)。
加えて、国土交通省は週休2日制の定着を推進しており、公共工事では「4週8閉所」(対象期間中の現場閉所率28.5%以上)が目安として運用されています。日本建設業連合会の調査では、2024年度通期の会員企業の平均閉所数(4週閉所日)は7.12日となり、目標の8.00日には届かないものの、5年前の6.22日から着実に上昇しています(※3)。土木工事では4週8閉所達成率が72.8%まで進む一方、建築工事は50.2%にとどまっており(※4)、工事種別で進捗に差があるのが実態です。
ここで重要なのは、「規制をクリアすればよい」というレベルの話ではないことです。月45時間の時間外労働は、1日あたり約2時間の残業に相当します。日々の業務を、その範囲に収まる形に組み立て直さなければ、規制と実態の乖離が広がるだけになります。
工程見直しでまず手をつけるべき「現場と事務所の往復」
工程管理の見直しというと、工事種別ごとの作業順序の組み替えや、クリティカルパスの再設定をイメージする方が多いでしょう。しかし、休日出勤削減という観点では、まず**「工程の中で人がどう動いているか」**を見直すほうが効果が出やすい領域があります。
たとえば、1日の現場監督の動きを次のように分解してみます。
- ・ 朝礼前の準備作業(資料・KYシート・出面表の作成)
- ・ 朝礼の実施
- ・ 午前の現場巡回、写真撮影、職長との打合せ
- ・ 昼の調整会議、発注者・元請けへの報告
- ・ 午後の現場巡回、是正指示、立会
- ・ 夕方の事務所での日報作成、写真整理、翌日資料準備
- ・ 月末・週末の月報・週報集約、提出書類作成
このうち、「事務所に戻ってからの作業」と「現場と事務所の往復」に費やされる時間は、工程表の作業時間とは別に積み上がっています。 この見えない時間こそが、休日出勤の温床 です。
国土交通省は2020年度から「遠隔臨場」の試行を開始し、2022年度以降本格実施に移行しました(※5)。ウェアラブルカメラやWeb会議システムを用いて、段階確認・材料確認・立会を遠隔で行う方式です。2024年度には実施要領が改定され、対象が工事検査にも拡大されています(※5)。これにより、立会のために発注者・受注者の双方が現場へ移動する負担を構造的に減らせるようになりました。
工程見直しの第一歩は、こうした「移動を伴う業務」を、移動なしで成立する形に置き換えていくことです。
「持ち帰り残業」を生む3つの業務を工程から切り離す
休日出勤の中身を分解すると、多くは次の3つに集約されます。これらを工程の中で「現場で完結する形」に変えられるかが鍵になります。
第一に、 日報・週報・月報の作成 です。紙のメモやExcelで書いた内容を、事務所のPCに再入力するという二度手間が発生している現場が少なくありません。タブレット上で現場で直接入力し、そのまま月報・週報に自動転記される仕組みがあれば、夜と週末の集約作業はほぼ消えます。
第二に、 朝礼準備とKY(危険予知)活動の資料作成 です。前日の夕方から夜にかけて、職長への確認電話、出面表の手入力、KYシートの作成、翌日の作業指示の整理を行うパターンが定着しています。大林組の建築現場では、従来数時間かけていた朝礼準備が、施工管理アプリ「eYACHO」の導入により10分弱に短縮されたことが報告されています(※本稿のための一次情報収集による・同社導入事例より)。同社のJV現場でも、定例打合せ簿の作成が午前中いっぱいかかっていたものが、各自タブレット入力に切り替えたことで10分程度に短縮された事例が公開されています。
第三に、 工事写真の整理と台帳化 です。撮影した写真を1枚ずつ電子小黒板情報と突き合わせ、台帳に貼り付けていく作業は、現場が終わってから事務所で行うのが一般的でした。撮影時点で電子小黒板の情報が紐づき、自動で台帳に整理される仕組みに変えれば、この作業は工程から切り離せます。
これら3つはいずれも、毎日・毎週・毎月繰り返される定型業務です。1回あたりの削減効果は小さくても、年間で積み上がる時間は膨大になります。
ITツール(施工管理アプリ「eYACHO」)が休日出勤削減に効く理由
工程見直しを実行するには、「現場で完結する」を支えるツールが必要です。建設業に特化したITツールの中でも、紙の野帳をデジタル化した**「デジタル野帳」**と呼ばれるカテゴリのアプリケーションは、休日出勤削減に直結する設計になっています。
代表的なツールであるeYACHOは、株式会社MetaMoJiが大林組と2015年から共同開発を進めてきたデジタル野帳アプリです(※同社プレスリリースより)。MM総研の2025年12月調査では、 ゼネコン(総合建設会社)におけるシェアが19%で1位 となっています(※6)。同調査によれば、施工管理アプリの利用率は建設業全体で42%、ゼネコンに絞ると60%に達しており、2024年4月の法適用後も導入が継続的に進んでいます(※6)。
eYACHOが休日出勤削減に有効な理由は、機能の数ではなく「業務設計の思想」にあります。
1つめは、 手書きをそのままデジタル化する設計 です。紙の野帳に書いていた感覚で、タブレット上にペンで直接書き込めるため、ITが苦手なベテラン職員でも抵抗が少なく定着しやすいという特性があります。職場全員が使えなければツール導入は失敗するため、この入りやすさは見落とせない要素です。
2つめは、 複数人が同じ帳票・図面に同時に書き込める機能 です。eYACHOの「Share機能」では、複数の担当者が同じ日報・KYシート・図面に手分けして同時入力できます。これにより、「夜になってから1人で全部まとめる」作業自体が不要になります。
3つめは、 ビデオ通話機能と書類共有を統合して遠隔臨場等でも活用できる点 です。eYACHOの「GEMBA Talk」は、同じ図面・帳票を見ながらビデオ通話で打合せができる機能で、国土交通省の遠隔臨場に関する実施要領に沿った運用が可能とされています(※同社サービスページより)。前述のNEXCO東日本管理事業本部の事例では、 ウェアラブルカメラとeYACHOを活用し、 50〜160回の立会のうち約半数を遠隔化することで、移動時間を500時間以上から240時間に削減したとされ、これは1日8時間労働の約1か月分に相当します(※本稿のための一次情報収集による・同社導入事例より)。
加えて、既存のExcel帳票をそのままテンプレート化できる柔軟性、オフラインでも入力でき通信回復時に自動同期する設計、KY活動を支援する安全AIソリューションなど、現場特有の制約に合わせた機能が整理されています。
工程見直しとITツール導入を組み合わせる実践ステップ
ITツールを「導入したのに使われない」状態は、建設DXの最大の落とし穴です。工程見直しとツール導入を分けて進めるのではなく、セットで設計することで定着率が上がります。実践的なステップは次のようになります。
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ステップ1:現場の1日を時間軸で棚卸しする。
現場監督・若手・職長の1日の動きを、30分単位で書き出します。「事務所での作業」「移動」「現場での作業」「待機」を色分けすると、削減余地が見えやすくなります。 -
ステップ2:持ち帰り業務の上位3つを特定する。
日報、朝礼準備、写真整理、立会記録、月報集約のうち、自社で最も時間がかかっているものを優先順位付けします。 -
ステップ3:小さく試す。
全社展開の前に、1〜2現場でパイロット運用を行います。eYACHOであれば、最小5ライセンス・30日間無料トライアルの仕組みが用意されており(※同社サービスページより)、初期負担を抑えてテストできます。 -
ステップ4:既存の帳票をそのまま電子化する。
新しい様式を作るのではなく、自社で長年使ってきたExcelや紙の帳票をテンプレート化します。様式が変わらないことで、現場の負担と心理的抵抗が最小化されます。 -
ステップ5:効果を月次で計測する。
「朝礼準備時間」「事務所滞在時間」「移動時間」「土曜出勤回数」などの指標を月単位で記録し、ビフォーアフターを可視化します。経営層への報告と、次の現場への横展開の両方に活用できます。 -
ステップ6:協力会社にも展開する。
元請けだけが効率化しても、協力会社との連絡が紙やFAX中心では効果が頭打ちになります。協力会社向けの低価格ライセンス(eYACHOの場合は限定ユーザー版・年額13,200円/人・税込)を活用し、現場全体でツールを共通化することが、最終的な工程短縮に効きます(※同社サービスページより)。
まとめ
建設業の休日出勤と工程の見直しは、「工期表を書き換える」だけでは解決しません。本質は、 現場の人が現場で完結できる業務設計 にあります。日報・朝礼準備・写真整理・立会といった、毎日繰り返される業務を、事務所への持ち帰りなしで完結できる形に変えていくことで、休日出勤は構造的に削減できます。
2024年問題で時間外労働の上限規制が建設業にも適用された今、対策は「やるかやらないか」ではなく「いつ着手するか」の段階に入っています。工程管理の見直しと、施工管理アプリ「eYACHO」のようなITツールを組み合わせることで、現場で完結する業務フローを設計してください。本記事で紹介した大林組やNEXCO東日本の事例は、その有効性を示す一次的な根拠になります。
自社の現場で何から始めるべきかを具体的に検討する際は、まず1日の業務を棚卸しし、持ち帰り業務の上位3つを特定するところから始めることをおすすめします。
建設現場の業務効率化と休日出勤削減について、自社の状況に合った具体的な対策をご検討されたい方は、施工管理アプリ「eYACHO for Business」の製品カタログ・導入事例集をご活用ください。30日間の無料トライアルもご利用いただけます。詳しくは公式サイト(https://product.metamoji.com/gemba/eyacho/)をご覧ください。
出典一覧
※2 国土交通省 大臣官房技術調査課「建設マネジメント技術 2024年9月号 遠隔臨場の工事検査への適用について」 https://kenmane.kensetsu-plaza.com/bookpdf/319/fa_02.pdf
※3 建通新聞「進む現場の週休2日対応 大手、公共工事でまず先行」(日本建設業連合会・全国建設業協会の調査結果に基づく) https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01K30RB75RB3PG5WY7QKYN9R43
※4 日本建設業連合会「週休二日実現行動計画 2024年度フォローアップ報告書」(2024年度・土木72.8%/建築50.2%) https://career.ptm.co.jp/blog/guide/1407/
※5 国土交通省「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」および「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(令和6年版)」 https://www.mlit.go.jp/tec/content/001594449.pdf
※6 株式会社MM総研「建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)」(2026年3月12日発表) https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=710
