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ベテランの暗黙知を形式知に変換!
施工管理アプリeYACHOで現場ノウハウを全社共有する方法

ベテラン社員の頭の中にしかないノウハウを、組織の資産として残したい。多くの企業が向き合っている課題ですが、現実には「マニュアル化を試みたが定着しなかった」「ベテラン本人が言語化を嫌がる」といった壁にぶつかります。

本記事では、ベテランの暗黙知を形式知に変換してデジタル保存する考え方を、SECIモデルという基本フレームワークから整理した上で、現場で実際に機能している進め方を解説します。建設業の大林組や東日本高速道路の事例を交えながら、「紙の野帳の感覚」を活かして形式知化を進めるという、現場発の方法論をご紹介します。

eYACHOで現場ノウハウを全社共有

ベテランの暗黙知とは何か—現場で蓄積される「言葉にできない知」

暗黙知とは、経験や勘によって個人が身につけた、言葉や文書では表現しにくい知識のことです。哲学者マイケル・ポランニーが提唱し、「人は語ることができるより多くのことを知っている」という表現で知られます。

建設現場のベテラン社員を例に取ると、次のような知が暗黙知に該当します。

  • ・ 図面を見ただけで判断できる施工上のリスク
  • ・ 天候・気温・湿度から作業手順を微調整する勘
  • ・ 協力会社との段取りの進め方
  • ・ 危険を察知して作業を止めるタイミング

これに対し、形式知は文書・図表・データベースなど誰でもアクセス可能な形にまとめられた知識です。マニュアル、施工要領書、検査記録、業務手順書などが代表例にあたります。

両者の違いを整理すると次のようになります。

観点 暗黙知 形式知
保管場所 個人の頭の中・身体感覚 文書・データベース・帳票
共有方法 OJT・対話・現場での同行 配布・閲覧・検索
言語化の難易度 高い(本人も意識できないことが多い) 低い(既に言語化済み)
図面を見ての施工リスク判断、職人の手の感覚 施工要領書、チェックシート、JIS規格

両者の最大の違いは「個人の頭の中にあるか、組織で共有可能な形にあるか」という点です。暗黙知を形式知に変換する作業は「形式知化(言語化・可視化)」と呼ばれ、組織の知識資産を増やす上で不可欠なプロセスとなっています。

注意したいのは、すべての暗黙知を形式知にできるわけではない点です。職人の手の感覚や、その場の空気を読む判断などは、完全な言語化が難しい領域として残ります。それでも、可能な部分から段階的にデジタル保存していくことが、組織の知の蓄積につながります。

なぜ今、ベテランの暗黙知をデジタル保存すべきなのか

ベテランの暗黙知をデジタル保存することの重要性は、近年の労働環境の変化によって急速に高まっています。背景には、就業者の高齢化、時間外労働の規制強化、そして紙ベースの引き継ぎが抱える構造的な弱さがあります。

建設業就業者の3分の1超が55歳以上という現実

国土交通省の資料によれば、建設業就業者のうち55歳以上が占める割合は36.7%にのぼり、29歳以下は11.7%にとどまっています(※1)。全産業平均と比較しても高齢化が顕著で、次世代への技術承継は業界全体の喫緊の課題です。

同資料では、60歳以上の技能者が全体の約4分の1を占め、10年後にはその大半が引退すると見込まれています(※1)。このまま手を打たなければ、ベテランが現場で培った判断軸が組織に残らないまま失われる可能性があります。

建設業就業者の高齢化の進行

2024年問題で「持ち帰り残業」が許されなくなった

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間・年360時間を超える残業ができなくなりました(※2)。

これは「ベテランが日報や引き継ぎ書類を持ち帰り、自宅で書く」という従来型の暗黙知共有が成立しなくなったことを意味します。業務時間内で完結する仕組みへの転換が、法令上も必須となっています。

紙の野帳では暗黙知が個人にとどまり続ける

建設現場では長年「野帳(やちょう)」と呼ばれる手帳に、ベテランがその日の気付き・図面修正・段取りメモを書き残してきました。野帳は現場で最も使いやすい記録媒体ですが、本人の手元にとどまり続けるため、組織のナレッジとして広がりません。

紙ゆえに検索もできず、共有するには事務所に戻ってPCで清書する必要があります。ベテラン本人にとっても、改めて文書化する手間が大きな心理的負担となります。デジタル保存は、こうした「現場で書いたものがそのまま組織知になる」流れを作るために不可欠です。

暗黙知を形式知に変換する基本フレームワーク「SECIモデル」

暗黙知のデジタル保存を進める前に、知識変換の基本フレームワークを押さえておくと、施策の設計がぶれません。最も広く参照されるのが、一橋大学名誉教授・野中郁次郎氏が提唱したSECIモデルです(※3)。

SECIモデルは、知識が個人と組織の間を循環しながら新たな知を生み出すプロセスを、4つのフェーズで整理したものです。それぞれを建設現場の例で見ていきます。

  • ・ 共同化(Socialization) :ベテランと若手が同じ現場で動くことで、言葉にならない知が体験として伝わる段階。建設業ではOJT・現場同行・朝礼での所作の見学などが該当します。新人がベテランの段取りや作業順序を「身体で覚える」プロセスです。
  • ・ 表出化(Externalization) :暗黙知を言葉・図・写真・帳票に変換する段階。ベテランが「いつもの感覚で判断していたこと」を、若手への質問に答える形で言語化したり、図面に書き込んだりする作業がこれにあたります。ここが最も難しく、形式知化の本丸です。
  • ・ 連結化(Combination) :複数人が表出化した知を組み合わせ、体系化・整理する段階。マニュアル化・標準帳票化・データベース化が中心となります。複数の現場で蓄積した知見を統合し、社内ナレッジベースとしてまとめ上げる過程です。
  • ・ 内面化(Internalization) :組織で共有された形式知を、個人が実践を通じて自分の暗黙知として身につける段階。マニュアルを読んで終わりではなく、現場で実際に使ってみることで、新たな暗黙知が生まれ、再び共同化へつながります。

このサイクルが繰り返し回ることで、組織の知識創造力が高まっていく、というのがSECIモデルの本質です(※3)。一度きりで終わる施策ではなく、継続的に回す前提で設計することが重要です。

注意すべきは、4つのフェーズの中でも表出化(Externalization)が突出して難しい点です。ベテラン本人が「当たり前すぎて言葉にできない」「文章にしようとすると本質が抜け落ちる」と感じる場面が多く、ここでつまずく組織が大半を占めます。暗黙知のデジタル保存は、この表出化のハードルをいかに下げるかが鍵になります。

建設現場におけるSECIモデル

デジタル野帳がベテランの暗黙知保存に適している4つの理由

ナレッジ管理ツールには、社内Wiki・ドキュメント管理・チャット型ナレッジ共有など多様な選択肢があります。その中で、建設現場のような身体的経験が中心の業務で機能しているのが「デジタル野帳」と呼ばれるカテゴリーです。本稿のための取材でMetaMoJi社が指摘した、デジタル野帳が暗黙知保存に適している4つの理由を紹介します。

  • 理由1:紙の野帳と同じ感覚で書けるため、ベテランの心理的負担が小さい

    形式知化が失敗する最大の要因は、ベテラン本人がツールを使ってくれないことです。キーボード入力中心のツールを渡すと、長年紙の野帳に手書きしてきたベテランほど抵抗感が強くなります。

    デジタル野帳は、タブレットとペンで紙の野帳と同じ感覚で書ける設計が出発点になっています。eYACHOの場合、株式会社MetaMoJiの前身であるジャストシステム創業者が長年磨いてきた手書き入力技術が背景にあり、Apple Pencil等での書き味は他の業務アプリと一線を画します(※本稿のための独自取材による)。

    ベテランは「いつもの野帳を電池で動かしているような感覚」で使えるため、形式知化への抵抗感が大幅に下がります。

  • 理由2:業界特化の手書き辞書で「言語化の手間」を最小化できる

    暗黙知の表出化で見過ごされがちなのが、専門用語を入力する手間そのものです。「型枠」「配筋」「セパレーター」など、現場で日常的に使う言葉を一つひとつタイピングするのは、ベテランにとって苦痛です。

    eYACHOには建設・施工管理・設備・住宅・不動産の専門用語約4万語を収録した「建設mazec」(手書き入力システム)が搭載されており、 手書き文字を建設業に特化した変換精度で素早くテキスト化できます(※本稿のための独自取材による)。汎用の手書き認識では誤変換が頻発する建設用語が、現場の言葉のまま記録されていく点は、業界特化型ツールの強みです。

  • 理由3:Share機能で表出化が共同作業になる

    SECIモデルの表出化は、ともすれば「ベテラン本人が一人で言語化する」作業として捉えられがちです。しかし、当人が無意識化している暗黙知は、本人だけでは引き出しにくいものです。

    eYACHOのShare機能では、同じノートや図面に複数人が同時にペンで書き込めます。若手が「この納まりはどう判断したのですか」と問いかけ、ベテランがその場で図面に書き込みながら説明し、若手が補足メモを並行して残す。表出化のプロセス自体が共同作業として進む構造になっています(※本稿のための独自取材による)。

    ベテランが言葉にしきれなかった部分を、若手の質問が引き出す。この対話の中で生まれる気付きこそ、後から振り返って読んだときに最も価値の高い形式知となります。

  • 理由4:スマートテンプレートで「判断軸そのもの」をテンプレート化できる

    暗黙知のデジタル保存で見過ごされがちなのが、「個別の作業手順」ではなく「判断軸そのもの」をどう残すかという視点です。

    eYACHOには、入力した値が複数の帳票間で自動転記される「スマートテンプレート」機能があります。これは単なる転記の自動化ではなく、ベテランが「この条件のときはこの項目をチェックする」「この値が出たら次にこれを確認する」といった判断の連鎖そのものをテンプレートに組み込める仕組みです(※本稿のための独自取材による)。

    ベテランの暗黙知のうち、特に価値が高いのは「何を見て、どう判断したか」という思考過程です。スマートテンプレートでこれを再現すれば、若手は帳票に従って入力するだけで、ベテランと同じ判断ステップを踏むことができます。形式知化の真価は、こうした判断軸のテンプレート化にあります。

現場で機能している暗黙知デジタル保存の実践例

理論や機能だけでは、暗黙知保存が現場で機能するかは判断できません。実際にデジタル野帳を導入し、ベテランの暗黙知を組織知に変えている事例を紹介します。

東日本高速道路:遠隔臨場で移動時間を削減

東日本高速道路株式会社では、eYACHOに搭載されたビデオ通話機能「GEMBA Talk」を活用し、立会業務の移動時間を年間500時間から240時間へと削減した事例があります(※同社導入事例より)。

GEMBA Talkは、同じ図面・帳票を見ながら通話できる点が特徴です。発注者と受注者がリアルタイムに同じ図面に書き込みながら確認できるため、ベテランの監督員が現地に出向かなくても、的確な指示が出せます。指示のやり取りはノートに残るため、過去の判断記録が組織の暗黙知デジタル保存に直接つながります。

国土交通省の遠隔臨場に関する実施要領にも準拠した運用が可能で、ベテラン技術者のノウハウを移動時間に消費せず、組織内で広く活用できる体制を構築しています。

安全AIソリューション:過去の暗黙知が次世代に継承される仕組み

eYACHOには「安全AIソリューション」と呼ばれる、KY活動の支援機能が搭載されています。労働安全衛生法をはじめとした法令・ガイドラインに加え、過去の建設業労災事例から導かれた知見をもとに、AIが作業内容に応じた潜在リスクと対策を提示します(※本稿のための独自取材による)。

ベテランが「経験的に危ない」と感じていたリスクが、AIによって構造化された形で若手にも提示されるため、年齢を問わず一定水準のKY活動が実施できます。これは「過去の暗黙知をデータベース化したリスクアセスメント支援」と言える応用形であり、暗黙知デジタル保存の発展形として注目される取り組みです。

阪神高速技術:GEMBA Talkで若手育成と暗黙知の即時継承

阪神高速技術株式会社では、GEMBA Talkを活用して若手技術者の育成と暗黙知の即時継承を実現しています(※同社導入事例より)。

現場の若手が判断に迷ったとき、事務所のベテランとGEMBA Talkでつなぎ、同じ図面・帳票を見ながら指示を仰ぐ運用が定着しています。これにより、従来であればベテランが現場に駆けつけて口頭で伝えていた暗黙知が、その場で形式知としてノートに残るようになりました。

若手の育成にとって最も重要な「分からないときにベテランの判断を借りられる環境」が、リモートで成立する点が大きな転換です。暗黙知が現場で発生したその場で、形式知としてデジタル保存される好循環が生まれています。

暗黙知デジタル保存を全社展開で成功させるための要点

ここまで紹介した仕組みを社内で機能させるには、ツール導入だけでは不十分です。形式知化を全社展開で定着させるために、押さえておきたい5つのポイントを整理します。

  • 1. スモールスタートで始める :いきなり全社展開せず、1〜2現場でテンプレート・運用ルールを試行する。eYACHOの場合、最小5ライセンスから契約可能で、30日無料トライアルも用意されています。
  • 2. 既存のExcel・紙の帳票をそのまま活かす :長年使い慣れた帳票をテンプレート化すると、現場の抵抗感が小さくなる。ゼロから帳票を作り直さないのが鉄則です。
  • 3. 推進担当者を現場と本社の双方に置く :本社主導だけでは現場の声が届かず、現場主導だけでは横展開が進まない。両方の窓口を設けるのが定着の要因となります。
  • 4. 協力会社まで巻き込む計画を立てる :現場で動くのは元請けだけではありません。eYACHOは協力会社向けの限定ユーザー版(年額13,200円/人・税込、ベーシック版/スタンダード版/プレミアム版導入企業が購入可)があり、コストを抑えて展開できます(※本稿のための独自取材による )。
  • 5. 削減時間を「測る」 :朝礼準備時間、現場と事務所の往復回数、書類作成時間を月次で計測し、形式知化の効果を可視化する。経営層への報告材料にもなり、全社展開の説得材料となります。

これらは特別な施策ではありませんが、暗黙知のデジタル保存が「ツール導入」で終わらず、組織の習慣にまで根づくかどうかの分水嶺となります。

よくある失敗と回避策

形式知化に取り組んだ多くの組織が共通してつまずく失敗パターンがあります。事前に把握しておくと、回避しやすくなります。

  • ・ ベテランが言語化に協力してくれない :本人にとって「当たり前のこと」を文章にする作業は負担が大きく、価値も感じにくいものです。回避策は、テキスト入力ではなく手書き・音声・写真・図面への書き込みなど、ベテランが普段から行っている記録方法をそのままデジタル化することです。
  • ・ マニュアル化したが現場で使われない :作って終わりになる失敗です。回避策は、現場で日常的に開く帳票・チェックリストの中に、ベテランの判断基準を組み込むこと。独立したマニュアルではなく、業務に組み込まれた形式知のほうが定着します。
  • ・ 協力会社が使えず情報が分断される :元請けだけがデジタル化しても、暗黙知の流通は道半ばで止まります。協力会社向けの低コスト版があるツールを選び、契約形態も含めて配布計画を作ることが重要です。
  • ・ 効果が見えず社内稟議の継続が難しくなる :導入後3〜6カ月の段階で「具体的に何時間短縮されたか」を示せないと、追加投資が止まる事例が頻発します。導入前から計測指標(時間・回数・件数)を定め、ベースラインを取っておくことが鍵です。

まとめ

ベテランの暗黙知を形式知に変換し、デジタル保存することは、建設業の2024年問題や深刻な高齢化を背景に、もはや先送りできない経営課題となっています。

本記事では、SECIモデルという基本フレームワークを踏まえつつ、紙の野帳の感覚を残したデジタル野帳が、ベテランの心理的負担を抑えながら形式知化を進める有力な手段となることを解説しました。ゼネコンでの利用シェアNo.1(19%)を獲得しているeYACHO(※4)の東日本高速道路の実践例が示すように、暗黙知デジタル保存は単なるDXツールの導入ではなく、組織の判断基準そのものを資産化する取り組みです。

形式知化の本丸は「表出化」のハードルをいかに下げるかにあります。手書きで残せる・業界用語で素早く入力できる・複数人で同時に書き込める仕組みを選ぶことが、定着への近道です。ベテランが抵抗なく参加できる暗黙知デジタル保存の仕組みを、まずは1現場から試してみてはいかがでしょうか。


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出典一覧

※1 国土交通省 中部地方整備局「改正建設業法等について①」(建設業就業者の高齢化:55歳以上36.7%、29歳以下11.7%、60歳以上の技能者が約4分の1) https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/pdf/03_setsumeishiryo_kaiseikentikugyohou/shiryo01.pdf
※2 厚生労働省 千葉労働局「建設事業及び自動車運転業務の上限規制の適用について」(建設業の時間外労働上限:原則月45時間・年360時間、2024年4月適用) https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/jougenkisei_2024.html
※3 GLOBIS学び放題×知見録「SECIモデルとは?暗黙知を組織の力に変える知識創造の仕組み」(野中郁次郎教授提唱、共同化・表出化・連結化・内面化の4プロセス) https://globis.jp/article/dic_55lu8__iqv/
※4 株式会社MM総研「建設業の施工管理支援アプリの利用動向調査(2025年12月)」(ゼネコンでのeYACHO利用シェア19%で1位) https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=710
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【監修】eYACHO編集部

施工管理アプリ「eYACHO」は、タブレット1つで現場の記録・共有・管理を可能にし、施工管理から安全管理まで幅広い業務をサポートします。
本コラムでは、建設業界の課題解決やDX推進に役立つ情報や最新動向をお伝えします。

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