【この記事でわかること】
- ・ 2025年12月12日に完全施行された建設業法改正の3つの主要ルール
- ・ 原価割れ契約の禁止が受注者にも拡大された背景と具体的な影響
- ・ 見積書・入札内訳書に関する新たな記載要件
- ・ 中小ゼネコンが直面する下請契約・書類管理上の課題
- ・ ICT活用による規制合理化の恩恵と、デジタルツールで対応を進める方法
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【この記事でわかること】
2025年12月、長年にわたる議論を経て、建設業法の大きな改正が完全施行されました。この改正は建設業で働く人の処遇改善や適正な労務費の確保を目的としており、特に中小ゼネコンにとっては下請契約の見直しや書類管理の適正化など、実務に直結する変更が多く含まれています。「いつから何が変わったのか」「自社はどう対応すべきか」を正確に把握することが、今後の経営リスク回避に欠かせません。この記事では、国土交通省の一次情報をもとに、建設業法改正の内容と中小ゼネコンへの具体的な影響を整理します。
今回の建設業法改正は、長年にわたる建設業の構造的な問題を解決するための重要な法整備です。建設業は日本のインフラを支える基幹産業でありながら、担い手不足・高齢化・長時間労働という深刻な課題を抱えており、このまま放置すれば将来的に業界全体の持続可能性が脅かされる状況にありました。国土交通省はこれを「急務」と判断し、2024年に「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正建設業法・入契法)を成立させ、段階的な施行を経て2025年12月12日に完全施行しました。
国土交通省のデータによると、建設業就業者は長期的な減少傾向にあり、2024年時点で477万人まで落ち込んでいます。就業者全体に占める55歳以上の割合は36.7%に上る一方、29歳以下は11.7%にとどまり、世代交代が進んでいません。また、建設業の年収は全産業平均と比べて低い水準にあることが国土交通省の調査で示されており、これが若手の入職敬遠につながっています。こうした状況に加え、近年の急激な資材価格の高騰が重なり、現場技能者の賃金の原資となる労務費にしわ寄せが生じるリスクが高まっていました。
参考:国土交通省「持続可能な建設業の実現のため、建設業法等改正法が完全施行されます」 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00317.html今回の建設業法改正は、大きく3つの柱で構成されています。
これらは2024年9月、同年12月、そして2025年12月12日と段階的に施行されており、2025年12月の完全施行でいよいよ全てのルールが効力を持つことになりました。
2025年12月12日の完全施行において特に注目すべきは、受注者側にも適用範囲が広がった3つの禁止規定です。従来の建設業法では、発注者側の不当行為への制限が中心でしたが、今回の改正で受注者にも同様の義務が課されることになりました。これにより、元請・下請を問わず建設業者全体が契約の適正化に取り組む必要があります。施行日は2025年12月12日(令和7年12月12日)であり、既にこのルールが適用されている状態です。自社の契約実務が改正内容に適合しているかを早急に確認してください。
改正建設業法では、建設業者が材料費・労務費・必要経費の内訳を記載した見積書を作成するよう努めなければならないと定めています。この努力義務は、元請と下請の間だけでなく、発注者と元請の間でも対象となります。
さらに、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告できることとなり、この基準に照らして著しく低い労務費等で見積りを依頼した発注者には国土交通大臣が勧告・公表を、著しく低い労務費等で見積りを提出した受注者には指導・監督が行われる仕組みとなりました。
実務上は、以下の点への対応が求められます。
改正前の建設業法では、発注者がその取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結することを禁止していました。今回の改正では、この禁止規定が受注者にも拡大適用されました。
つまり、受注者である建設業者が自ら正当な理由なく原価を下回る金額で契約を締結することも、禁止の対象となります。受注件数を確保するために無理な価格競争を行い、採算割れの状態で請け負うことは、改正後は法律違反となる可能性があります。正当な理由がある場合(自社で安価な資材を調達できる場合など)を除き、通常必要と認められる原価を下回らない金額での契約締結が求められます。
長時間労働を是正するためには、適正な工期の設定が不可欠です。従来の建設業法では、注文者(発注者)が著しく短い工期を設定することを禁止していましたが、今回の改正では、受注者側も著しく短い工期を受け入れることが禁止されました。
この改正により、受注者は長時間労働を前提とした非現実的な工期を自ら引き受けることができなくなります。また、中央建設業審議会では、適正な工期設定を促すための「工期に関する基準」が既に作成・勧告されており、2024年3月に見直し(改定)も行われています。これらの基準も踏まえ、無理のある短工期を前提とした契約を避けることが重要です。受注者が資材入手困難などの「おそれ情報」を注文者に通知した場合、工期変更協議を申し入れることができ、注文者はその協議に誠実に対応する努力義務を負います(注文者が公共発注者の場合は義務)。
参考:国土交通省「建設・不動産業:工期に関する基準」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000190.html 参考:東京都都市整備局「建設業法の一部改正について(令和7年12月12日施行)」 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku_kaihatsu/kenchiku_shidou/gyosya_shido/kensetsu/houkaisei_r0701212今回の建設業法改正では、見積書と入札内訳書の記載事項についても新たなルールが設けられました。これまでは見積書の記載内容に関する法的な規定が不明確であり、労務費の内訳が省略されることで、下請業者への適正な費用配分が担保されにくい構造がありました。改正後は、見積書に記載すべき費目(材料費・労務費・不可欠な経費等)が法令上明確化されました。特に見積書については、建設業者に対し、内訳を記載した見積書を作成するよう「努力義務」が課されています。これは中小ゼネコンを含む全ての建設業者に適用されるルールです。
国土交通省のプレスリリースによると、改正建設業法では建設工事の見積書に記載すべき事項が明記されました。見積書には材料費・労務費・適正な施工を確保するために不可欠な経費の内訳を含めることが求められます。また、入札金額の内訳書についても記載すべき事項が明確化されています。
これにより、元請業者は下請業者に対して費目ごとに明確な見積りを提示する必要があり、下請業者側も内訳を明示した見積書を作成する実務が求められます。書式の見直しや社内の見積り作成ルールの整備が必要になります。
今回の改正では、見積書において示された金額を著しく下回る金額での契約締結を行った発注者に対し、国土交通大臣等が勧告・公表できる権限が新設されました。この制度は、労務費や材料費の適正確保を実効的に担保するためのものです。
なお、国土交通省が閣議決定した政令(建設業法施行令の一部を改正する政令)において、勧告の対象となる請負契約に係る建設工事の費用の下限は500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)とされています。これは比較的小規模な工事発注のみを勧告対象外とするものであり、それ以外の工事は全て勧告の対象となります。
参考:国土交通省「持続可能な建設業の実現のため、建設業法等改正法が完全施行されます」 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00317.html今回の建設業法改正は、大手ゼネコンよりも中小ゼネコンにとってより大きな実務上の影響をもたらす可能性があります。大手は法務・コンプライアンス部門が整備されていることが多いのに対し、中小では現場監督や経営者が契約管理や書類作成を兼務しているケースが少なくありません。改正後のルールへの対応が遅れると、勧告・公表リスクや許可取り消しリスクを招きかねません。変化の全体像を把握した上で、優先度の高い対応から着手することが重要です。
中小ゼネコンが元請として多くの下請業者と取引している場合、改正後は下請への発注価格の見直しが必要になります。著しく低い労務費を前提とした下請契約は法的リスクをはらんでおり、「これまで通り」の単価設定が許されなくなります。
特に以下のケースは要注意です。
下請業者との取引実態を見直し、内訳明示の見積り・契約書に切り替えることが求められます。
見積書・契約書の記載内容が法律上明確化されたことで、書類管理の質と量が変わります。従来の書式が新しい要件を満たしていない場合、書式の全面的な見直しが必要です。また、資材高騰の「おそれ情報」を通知した際の記録や、変更協議の記録を保存しておくことも実務上求められます。
書類作成・管理の適正化は、万一の調査や紛争時の自社保護にもつながります。紙ベースの書類管理では、こうした多岐にわたる記録を適切に保持することが難しくなるため、デジタル化による管理体制の整備が現実的な対応策となります。
改正建設業法に違反した場合、国土交通省は勧告・公表を行う権限を持ちます。中小ゼネコンにとって、企業名の公表は取引先や金融機関からの信頼低下に直結するリスクがあります。段階的な対応でも問題はありませんが、少なくとも「何が禁止されているか」「何が義務化されたか」を経営者・現場責任者が共有し、意識を揃えることが第一歩です。
今回の建設業法改正では、義務の強化だけでなく、ICTを積極的に活用する建設業者に向けた規制の合理化も盛り込まれています。デジタルツールの導入により施工体制の見える化が進めば、従来は義務であった書類提出の手間が軽減され、技術者の配置に関する規制も合理化される可能性があります。法改正への「対応」を、デジタル化推進のきっかけとして前向きに捉えることが、中小ゼネコンの競争力向上にもつながります。
改正建設業法では、ICTにより現場確認が可能な場合、公共発注者への施工体制台帳の提出義務が合理化されました。これは、デジタルシステムを活用して施工体制を可視化・管理することで、紙の台帳提出を省略できる可能性があることを意味します。
施工体制台帳の作成・提出はこれまで多くの現場で時間と手間のかかる作業でしたが、デジタルツールによる電子化・共有によってその負担が軽減されます。
参考:国土交通省「持続可能な建設業の実現のため、建設業法等改正法の一部を施行します(2024年12月6日)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00266.htmlまた、ICT活用によって兼任する現場間の移動が容易と認められる場合、監理技術者(主任技術者)等の専任規制が合理化され、複数現場の兼任が可能となります。従来は1つの現場ごとに専任の監理技術者を置くことが原則でしたが、デジタルツールによるリモートでの施工管理・状況把握が技術的に確認できる場合は、効率的な人員配置が認められるようになります。
これは中小ゼネコンにとって特に重要な恩恵です。技術者の人手不足が課題となっている中小規模の企業では、ICTを活用した効率的な現場管理体制を整えることで、複数の案件を同時に進めやすくなります。
建設業法改正は2025年12月12日に完全施行されており、既に適用期間に入っています。「知らなかった」では済まない段階に入っているため、対応の優先順位を定めて速やかに動き出すことが求められます。まずは自社の現状の契約・見積り実務・書類管理体制を改正内容と照らし合わせ、どこにギャップがあるかを確認することから始めましょう。以下に、中小ゼネコンが優先的に取り組むべき対応のポイントをまとめます。
| 対応項目 | 確認ポイント | 優先度 |
|---|---|---|
| 見積書の書式見直し | 材料費・労務費・必要経費の内訳が明記されているか | 高 |
| 下請契約の適正化 | 「労務費の基準」に照らした適正な金額か | 高 |
| 工期設定の見直し | 実態に見合った工期が設定されているか | 高 |
| おそれ情報の通知体制 | 資材高騰リスクの通知・保存手順を整備しているか | 中 |
| 施工体制台帳の電子化 | ICT活用による合理化を検討しているか | 中 |
| 社員への周知 | 改正内容を経営者・現場責任者が共有しているか | 高 |
今回の建設業法改正への対応において、特に書類管理・現場情報の可視化・施工体制の確認といった点では、デジタルツールの活用が大きな助けになります。紙の帳票に依存した管理体制では、見積書内訳の記録、おそれ情報の通知履歴、施工体制台帳の整備などを漏れなく対応することが難しくなるためです。
当社MetaMojiが提供する施工管理アプリ「eYACHO(イーヤチョー)」は、建設現場のデジタル野帳として、現場での書類作成・情報共有・図面管理をペーパーレスで実現します。現場から事務所に戻ることなく帳票作成・提出ができ、リアルタイム共有にも対応しています。ゼネコンとJVの構成会社・専門工事会社などの協力会社とのデータ共有にも対応しており、改正後に求められる透明性の高い施工体制の可視化に寄与します。
また、現場の記録・点検・報告業務を効率化する「GEMBA Note」も、現場DXの一環としてご活用いただけます。
建設業法改正への対応と現場DXを同時に進めることで、コンプライアンス強化と生産性向上の両立が実現します。まずは資料請求や無料セミナーを通じて、eYACHOの活用イメージを確認してみてください。
資料ダウンロードはこちら: https://product.metamoji.com/gemba/eyacho/document/2025年12月12日に完全施行された建設業法改正は、「働く人を守る」「適正な価格で契約する」「デジタルを活用して生産性を高める」という3つの方向性に沿った大きな変化です。この改正は、罰則や規制の強化という側面がある一方で、ICT活用による合理化という形で前向きな変化ももたらしています。建設業に関わる全ての企業がこの変化を正確に理解し、実務レベルでの対応を進めることが、健全な業界の未来を守ることにつながります。
中小ゼネコンにとっては、変化への対応が求められる場面でもありますが、見積書・契約書の透明化や適正な工期設定への取り組みは、長期的な取引先との信頼関係構築にもつながります。コンプライアンス意識の高い企業として業界内での評価を高めるためにも、早期の対応着手が重要です。
改正内容に関する詳細は、国土交通省の公式ページで随時確認することをおすすめします。
参考:国土交通省「建設業法及び入契法改正について」 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00317.html