建設業の生産性向上を現場から進めるには
｜今から始める現実的DXと業務改善への道

働き方改革の本格化や人手不足の深刻化を背景に、建設業はかつてないほど「生産性向上」の必要性に直面しています。長時間労働が当たり前だった現場は、法規制の強化によって根本的な働き方の見直しを迫られています。生産性が向上しなければ、企業の利益は圧迫され、現場を支える人材も離れていくリスクが高まります。今こそ、全社的な意識改革と具体的なアクションが求められています。

建設業界は就業者の高齢化が進み、若い人材の確保が難しい状況が続いています。帝国データバンクの調査によれば、2024年の人手不足を主因とする倒産件数は342件に達し、現場の維持すら困難になりつつあるのが現実です。仕事はあっても施工できる人がいない、技術者が集まらず受注辞退せざるを得ない、そんな「黒字倒産」のリスクが高まっています。今いる人材で最大の成果を出すためにも、生産性向上は避けて通れません。

2024年4月から適用された時間外労働の上限規制により、建設現場でも「長時間残業で現場を回す」従来の働き方ができなくなりました。月45時間、年360時間の上限を超えた場合には罰則もあるため、これまでのように根性やサービス残業で業務をこなす時代は終わりました。売上や利益を維持しながら残業を減らすためには、業務フローそのものを見直し、生産性を高める以外に選択肢はありません。

「生産性を上げろ」と言われても、現場のどこにムダやロスがあるのか見えていなければ改善の打ち手も曖昧になってしまいます。まずは現状を見える化し、課題のポイントを特定することがスタートです。

一人あたり、あるいは一時間あたりの売上や粗利を算出するだけでも、ざっくりと現場ごとの生産性を比較できます。部門別や現場別に数字を出すことで、「どの現場」「どの工程」がボトルネックになっているのかが分かりやすくなります。難しい式は必要ありません。経営層や現場責任者が直感的に理解できる数字を使い、現場の課題を把握しましょう。

現場代理人や施工管理者が1週間から1か月の間にどの作業にどれだけ時間を使っているかを記録してみましょう。たとえば段取りや打合せ、現場立会い、安全管理、日報や写真整理、書類作成、移動や待ち時間などに分類します。実際に集計すると、事務作業や移動に多くの時間を取られていることが可視化されます。この「見える化」から改善の糸口を見つけていきます。

現場での作業効率を高めるには、日々の段取りや工程管理を見直し、「ムリ・ムダ・ムラ」を削減することが重要です。これによって残業の削減や工期短縮を同時に目指すことができます。

週間工程会議の内容を「報告会」から「今後2週間の段取り確認」にシフトさせることで、作業計画の精度が高まります。また、主要な工種については標準手順やチェックリストを作成し、担当者が変わっても品質やスピードが落ちない仕組みを作ることが大切です。こうした取り組みで、手戻りやミスの発生を抑えられます。

よくあるのは「職人が現場にいるのに材料が届かず作業が進まない」「他工種との干渉で作業待ちになる」といったケースです。資材の事前手配や搬入計画、協力会社との情報共有を強化することで、こうした待ち時間を減らせます。現場マネジメントの見直し次第で、今よりも生産性を高める余地はまだまだあります。

現場作業そのものよりも、書類や事務作業が生産性の足を引っ張っているケースが多く見られます。ここでは、受注から竣工までに発生する帳票類や報告業務を、ペーパーレス化やテンプレート化、自動集計などで効率化する方法を紹介します。

施工計画書や要領書、日報、出面、写真台帳、チェックリストなどを一度棚卸しし、どこに一番負担がかかっているかを見極めます。特に現場の負担が大きい日報や工事写真、報告書から優先的に電子化を進めましょう。すべてを一度に変える必要はありません。まずはできるところから少しずつ進めることが現実的な第一歩です。

現場で入力した実績がそのまま原価管理や労務管理のデータになるような仕組みを作ると、何度も同じ内容を転記する手間が省けます。写真と図面、チェックリストを紐づけて、そのまま報告書や台帳に出力できるようにすれば、大幅な業務効率化につながります。同じ情報を繰り返し入力しない仕組みづくりが生産性向上のカギです。

生産性向上にはITや業務改善だけでなく、現場で働く人材のスキル平準化も重要です。ベテランに仕事が偏る「属人化」を防ぎ、誰が担当しても一定の成果を出せる現場づくりを目指しましょう。

ベテランの段取りやチェックポイントを動画や写真付きの手順書としてまとめておくと、若手や新任担当者でもすぐに現場の要点を把握できます。施工手順や重要な判断ポイントを標準化し、「誰がやっても一定品質が出せる」状態を目指すことがポイントです。

OJTや社内勉強会、外部セミナーなど教育機会を継続的に用意することも大切です。また、生産性向上に貢献した改善提案やDX活用を評価制度に反映させることで、現場のモチベーション向上にもつながります。

「DX」と聞くと大掛かりな投資や高度なIT知識が必要と思いがちですが、実は中小企業こそ小さな一歩から始めるのが現実的です。身近なITツールを使った現場の効率化はすぐにでも実践できます。

まずは1現場や1部署で工程管理アプリや現場情報共有アプリ、日報アプリなどを試してみることをおすすめします。使い勝手やサポート体制をチェックし、「実際に残業が減ったか」などを簡単に検証するスタンスが大切です。少しずつ現場での活用範囲を広げていきましょう。

バラバラのITツールを増やしすぎると、逆に現場の負担が増えてしまうリスクもあります。将来的には、工程・原価・写真・日報・図面・コミュニケーションがつながる統合的な状態を目指すことが理想です。最初からすべてを完璧にそろえる必要はありませんが、中長期で目指すべき方向性を意識してツール選びを行いましょう。

現場DXは難しそうに感じるかもしれませんが、デジタル野帳を活用すれば、現場作業と事務処理の両方を効率化できます。ここでは、eYACHOの主要な特長と、どのように現場に役立つかを具体的に紹介します。

eYACHOの主な特徴
• ・ タブレット１台で「書く・撮る・伝える」をすべて現場で完結
• ・ 紙の野帳のような手書き感覚で、図面や写真、メモを記録できる
• ・ 建設・設備用語訳４万語対応の手書き入力アプリ「建設mazec」と連携
• ・ 写真や動画・音声もその場で記録・共有が可能
• ・ 現場配置図作成や、複数工種の段取り調整がしやすい
• ・ 図面上のピンと写真・点検項目をひも付けて、指摘や是正管理が簡単

eYACHO導入による変化のイメージ

建設業の生産性向上は大企業だけでなく、中小建設会社こそ優先的に取り組むべき経営課題です。まずは現状を見える化し、現場の改善策に取り組み、人材育成や働き方改革と合わせて小さなDXを進めることが、持続的な成長への道筋となります。経営層が方向性を示しつつ、現場の声を聞きながら改善サイクルを回す姿勢が、生産性向上と人材定着の両立につながります。

eYACHOは、「現場の生産性向上やDXは難しそう」と感じる中小企業でも、まず現場に近いところから気軽に始められるツールです。現場作業も事務処理も効率化できるので、「うちの会社でもできるかもしれない」と感じたら、まずは1現場で導入して、その効果を実感してみてください。