導入事例

学校法人駿河台学園様

駿台、知識問題トレーニングアプリにmazec SDKを採用
「手書き解答」で知識の定着を強化、mazecが拓くデジタル教材の可能性

駿台予備学校は、100年を超える歴史を持ち、特に難関大学への豊富な合格実績を誇る大手予備校です。志望大学やレベルに合わせたコースを展開する中で、コーチングとICT活用で徹底して基礎学力をつける「プレミアムサポートコース」を開講。同コース専用の知識問題トレーニングアプリの一部で、mazecを用いた「手書きでの解答」を採用しています。そのねらい・効果について、同校における業務のDX化・ICT化を推進するEdTech事業部 次長 熱田 貴久氏にお話を伺います。

固有名詞がダントツに多い日本史で、
mazecの手書き解答で正しくアウトプットする力をつける

本校は、難関大学を目指す生徒が多く在籍しているのが特徴です。以前は先生の講義を聞く集団授業が主流で、先生の講義にこそ価値があると考えてきました。いい講義を提供すれば、そこから先の、自分で手を動かしてアウトプットすることは自分でできるよね、と生徒に一任していたところがありました。

しかしそれは、生徒によって差があるものです。我々の本来の目的は生徒の学力を上げることですが、学習習慣が身についていない生徒や、基礎固めができていない生徒を第一志望合格に導くには、アウトプットを授業時間の中に組み込んで学習量を確保し、モチベーションを維持するために人が介入しフォローしていく必要があると考えました。それを形にしたのが、コーチングとICTを活用するプレミアムサポートコースです。

このコースの、高卒生向けに提供する知識問題トレーニングアプリ「知識トレ」の日本史では、手書き文字認識エンジンmazecをアプリに組み込むためのライブラリー「mazec SDK」を用いた「手書き解答」を実現しています。日本史は圧倒的に固有名詞が多く、選択肢方式では、消去法でなんとなく答えが出てしまうので、自分の頭に記憶(インプット)したものを正しく書けるように(アウトプット)する力が重要です。

EdTech事業部 次長 熱田 貴久氏

EdTech事業部 次長 熱田 貴久氏

記述試験で頼りになるのは頭の中にあるものだけ

2次試験にも役立つ「手書き解答」

――「知識トレ」は、授業と連動した駿台独自開発のテスト演習アプリである。断片的な暗記ではなく、文章の中で関連づけながら知識を定着させていく問題構成になっており、覚えるだけでなく、問題が解ける感覚をつかむことができる。

受験、特に国立の2次試験は記述式となるため、与えられた選択肢の中から正答を選ぶのではなく、自分の頭の中にあるものだけで解決しなくてはなりません。しっかりとした知識として自身の頭の中に定着させ、そこにあるものを正しくアウトプットする力が必要なのです。

知識の定着には、繰り返すことが有効です。そしてその繰り返しに最適なのがデジタルです。紙だと、物理的にコピーしたり、消したりが必要ですが、デジタルなら簡単です。アプリで手書き問題を何度も何度も繰り返すことで、頭の中にインプット、頭の中からアウトプットを繰り返すうちに、知識として定着するのです。

アプリに搭載する認識エンジンに何を使うかは、講師も一緒に複数試しました。スピード感のないものは最もストレスに感じるので、すぐに候補から外しました。mazecの認識は非の打ち所がなく、使い始めて数年が経った今でも安定して使えています。現在は1文字ずつ確実に書いていくmazecの初心者モードを使っていますが、将来的にmazecが長文に対応したら、ぜひ論述問題に使いたいです。他に使える認識エンジンも見当たりません。それくらいmazecの認識には満足しています。

知識問題トレーニングアプリ「知識トレ」のメニュー画面

知識問題トレーニングアプリ「知識トレ」のメニュー画面

「知識トレ」の日本史問題一覧画面

「知識トレ」の日本史問題一覧画面

mazecだからできた自動採点
生徒の理解に合わせ、即座に授業に反映

手書き入力で解答できても、採点に講師のリソースを割くのでは本末転倒なので、採点まで含めたものとして開発しました。手書きで入力され、mazecで認識されたデータは裏でテキスト化されるため、解答と付き合わせることができます。そのため瞬時にマルバツの判定(自動採点)ができるので、生徒はすぐにやり直すことができます。選択肢がない状況で、手書きで解答できなければ、まだ知識は定着していない。解答できれば、知識は定着している。手書き解答方式は、知識が定着しているかが把握できる方式といえます。

そして講師側のツールには、この教室の中で何人が正解で何人が不正解だったかが表示されるようにし、すぐにそれを授業に生かすことができるようになりました。以前は、先生の過去の経験から「ここは間違うだろうから解説しよう」と判断していましたが、実際の結果は意外にクラスによって差異があり、先生方にとっても驚きでした。「クラスごとのリアルな生データ」を瞬時に把握し、データに合わせた指導が可能になったのです。「⚪︎人が正解している」と発表すれば、「みんなができているのに、自分はできていないのか」と、自分の実力を把握でき、競争心もモチベーションにつながります。これはデジタル化による大きなメリットです。高い精度で認識・変換ができるmazecを選んだからこそ、自動採点も包含した手書き解答方式のデジタル教材を実現することができました。

―― デジタル教材によって、学習効果に変化は現れているのだろうか

手書き解答(mazec)だけの学習効果向上を測るのは難しいですが、目的に応じた様々なアプリ、講師側ツールなどを用いた駿台のICT活用による効果としては、導入した年、偏差値にして5は上昇したと認識しています。

―― 知識トレを含む学習アプリが入ったタブレット(iPad+ペン)は貸与方式だ

中身を管理したiPadにペンもセットにして貸与しています。個人のタブレットや、様々なペンで運用すると、パフォーマンスが安定せず、思考を妨げ学習意欲をそいでしまう恐れがあります。また、アプリに加えて、卒業生の場合1週間の時間割が30コマ=教材30冊にも及ぶテキストもデジタル化し、重いテキストを持ち運ぶ必要がありません。毎日多数配っていたプリントの管理も必要なく、タブレットの中にすべてが入っているので、いつでも学習できるというメリットもあります。

ただ、何もかもデジタルにすればいいかというとそれは少し違います。2歩も3歩も先の新しいものは受け入れられ難く、1.5歩先くらいがちょうどいい。あくまでも生徒の学力を上げることが目的で、デジタルはそのための道具に過ぎません。生徒の日頃の学校での環境なども参考にして、自然にデジタルにできるものを取り入れ、しっかりと使わせて初めて効果が出ると考えています。

手書きで書いた文字が、その場ですぐにテキスト文字に認識、変換されます。

手書きで書いた文字が、その場ですぐにテキスト文字に認識、変換されます。

教育業界のパイオニアとして
全国の高校生の「第一志望」をかなえるために

大学受験に関して、地方と大都市圏では、スピード感が違います。生徒のポテンシャルは変わらないのに、合格と不合格に分かれるのは、単純にスタートが遅かっただけだと思われる例が多い。受験が情報戦に近いものになっているのに、都市部と地方では予備校や塾のノウハウも大きく差がついている。これが受験格差です。

日本最古の予備校である駿台は、学校との連携は早くからありましたが、学習塾との交流はありませんでした。駿台の次の100年のビジョンとして、全国の塾と手を取り合い、駿台のノウハウを全国に広め、全国の高校生にしっかりと提供し、それぞれの第一志望の合格を掴み、将来、国家を支える人物になって欲しいと願っています。地方の塾の課題である「英語数学はできるが理科を教えられる先生がいない」といった人材の問題も、駿台ではオンライン質問が可能な「manabo」というサービスもあります。しかし、いい授業だけではだめなんです。受験は長期戦なので、モチベーションを維持するのが難しい。現場の塾の先生など「人」の力が大きく作用します。生徒のモチベーションをいい状態で維持できるかは、関わる「人」次第とも言えます。そのため、駿台の授業と、コーチング(指導の標準化)を提供する「駿台Diverse(ダイバース)」の全国展開も始まったところです。地方と都市圏での受験格差を減らし、どこにいても等しく第一志望にチャレンジできる時代は、ITCの活用があってこそ実現できることだと考えています。

―― 近年、入試制度の変更に伴い現役志向が高まり、私学では推薦入学が全体の6割にも達し、受験生の安全志向が高まっていると言われている。その安全志向は「志望校を今の学力で受かるところに落ち着かせる」ことになっていないだろうか。子どもたちには伸びしろがある。「本当の第一志望へのチャレンジを安全圏に持っていく」という安全志向であって欲しい。生徒に伴走し学力を向上させ、受験に備えるサポート体制も全国的に整いつつある教育業界のICT活用に注目したい。

MetaMoJiは、mazecをはじめとする技術で、駿台予備学校をはじめとする教育業界を支えてまいります。

・iPad は Apple inc.の登録商標です。

「全国の受験格差を減らすのは、ICTの活用があってこそ」(熱田氏)

「全国の受験格差を減らすのは、ICTの活用があってこそ」(熱田氏)

お客様プロファイル:
  • 会社名:学校法人駿河台学園
  • 住所:東京都千代田区神田駿河台2-9-8
  • 駿台予備学校を中核として、幼稚園、学校、専門学校などを運営している学校法人。総合教育機関として、常に質の高い「教育サービス」を提供している。
  • https://www2.sundai.ac.jp/

<本取材は2025年5月に行われました。画面キャプチャ、機能、肩書は取材時の情報にもとづきます。>

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